nun_tya_kuセレクションアニデミー賞 2021年アニメ振り返り

2021年もたくさんのアニメが放送されました。そして、たくさんのアニメを見ることができました。
自分は深夜アニメを見るようになって今年(2021年)でだいたい10年目ですが、年間の視聴本数としては今年(2021年)がキャリアハイとなりました。

2021年アニメ振り返りということで、本記事では「アニデミー賞」各部門を勝手に設定し、独断と偏見で各部門の受賞作品を選定、惜しくも受賞を逃したいくつかの作品とともに、その紹介と振り返りをしていきたいと思います。
本家アカデミー賞授賞式のことはほとんど知らないので、とりあえずやりたいように進行していきたいと思います。
審査員長は………………俺だ!!!!!

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授賞式会場に駆けつけたみなさん

ノミネート作品(2021年放送)


まずはノミネート作品として、2021年に放送され、筆者が全話視聴した作品を各クールごとに挙げていきます。
なお、2020年からの継続作品、2022年への継続作品も含みます。2クール作品は1本としてカウントしますが、分割2クール作品はそれぞれを1本としてカウントします。(話数が継続していてもクールが連続していなければ別カウント) 再放送作品および個人的に視聴した過去作はノミネートとしては除きますが、視聴記録として最後にタイトルを挙げておきたいと思います。



・冬クール:35作品

30分枠:30作
『ミュークルドリーミー』(2020春~2021冬)ひぐらしのなく頃に業』(2020秋~2021冬)『キングスレイド 意志を継ぐものたち』(2020秋~2021冬)のんのんびより のんすとっぷ』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』『ゆるキャン△ SEASON2』『弱キャラ友崎くん』『裏世界ピクニック』『装甲娘戦機』『俺だけ入れる隠しダンジョン』『天地創造デザイン部』『SHOW BY ROCK!! STARS!!』『無職転生異世界いったら本気出す~』『ホリミヤ』『WIXOSS DIVA (A) LIVE』『プレイタの傷』『SK∞ エスケーエイト』『ゲキドル』『怪病医ラムネ』『ウマ娘 プリティーダービー SEASON2』『回復術士のやり直し』『IDORY PRIDE』『ワンダーエッグ・プライオリティ』『オルタンシア・サーガ』『スケートリーディング☆スターズ』『EX-ARM エクスアーム』『怪物事変』『Levius レビウス』『蜘蛛ですが、何か?』(2021冬~2021春)『バック・アロウ』(2021冬~2021春)
ショートアニメ:5作
『八十亀ちゃんかんさつにっき 3』『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』『アズールレーン びそくぜんしんっ!』『おとなの防具屋さんⅡ』『アイドールズ!』



・春クール:35作品

30分枠:34作
『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』『ゾンビランドサガ リベンジ』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『ましろのおと』『聖女の魔力は万能です』『転生したらスライムだった件 転スラ日記』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『恋と呼ぶには気持ち悪い』『美少年探偵団』『憂国のモリアーティ(2クール目)』『スーパーカブ』『ドラゴン、家を買う。』『やくならマグカップも』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』『戦闘員、派遣します!』『灼熱カバディ』『オッドタクシー』『SSSS.DYNAZENON』『ゴジラ S.P』『イジらないで、長瀞さん』『さよなら私のクラマー』『Fairy蘭丸 ~あなたの心お助けします~』『シャドーハウス』『86 -エイティシックス-』『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』『MARS RED』『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』『Vivy -Fluorite Eye's Song-』『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』『バクテン!!』『東京リベンジャーズ』(2021春~2021夏)『BLUE REFLECTION RAY / 澪』(2021春~2021夏)『ミュークルドリーミーみっくす』(2021春~)
ショートアニメ:1作
『黒ギャルになったから親友としてみた。』



・夏クール:35作品

30分枠:32作
ゲッターロボアーク』『転生したらスライムだった件 第2期 第2部』『カノジョも彼女』『ぼくたちのリメイク』『探偵はもう、死んでいる。』『死神坊ちゃんと黒メイド』『月が導く異世界道中』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』『魔法科高校の優等生』『ひぐらしのなく頃に卒』『小林さんちのメイドラゴンS』『うらみちお兄さん』『RE-MAIN』『ヴァニタスの手記』『チート薬師のスローライフ異世界に作ろうドラッグストア~』『迷宮ブラックカンパニー』『ピーチボーイリバーサイド』『Sonny Boy -サニーボーイ-』『ラブライブ!スーパースター!!』『精霊幻想記』『現実主義勇者の王国再建記』『出会って5秒でバトル』『女神寮の寮母くん。』『かげきしょうじょ!!』『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』『天官賜福』『平穏世代の韋駄天達』『ぶらどらぶ』『白い砂のアクアトープ』(2021夏~2021秋)『SCARLET NEXUS(2021夏~2021秋)『ジャヒー様はくじけない!』(2021夏~2021秋)
ショートアニメ:3作
『極主夫道』『俺、つしま』『指先から本気の熱情2 -恋人は消防士-』



・秋クール:41作品

30分枠:34作
『やくならマグカップも 二番窯』『さんかく窓の外側は夜』『大正オトメ御伽話』『先輩がうざい後輩の話』『無職転生異世界行ったら本気だす~(2クール目)』『異世界食堂2』『古見さんは、コミュ症です。』『見える子ちゃん』『月とライカと吸血姫』『吸血鬼すぐ死ぬ』『結城友奈は勇者である 大満開の章』『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』『MUTEKING THE Dancing HERO』『境界戦機』『ヴィジュアルプリズン』『takt op.Destiny』『SELECTION PROJECT』『ブルーピリオド』『サクガン』『シキザクラ』『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』『メガトン級ムサシ』『進化の実 ~知らないうちに勝ち組人生~』『テスラノート』『逆転世界ノ電池少女』『Deep Insanity THE LOST CHILD』『マブラヴ オルタネイティヴ』『ビルディバイド -#000000-』『海賊王女』『闘神機ジーズフレーム』『最果てのパラディン『王様ランキング』『86 -エイティシックス-(第2クール)』※ (※ 最終回は2022年に持ち越し)
ショートアニメ:7作
『しょうたいむ! ~歌のお姉さんだってしたい~』『魔王イブロギアに身を捧げよ』『でーじミーツガール』『かぎなど』『180秒で君の耳を幸せにできるか?』『キミとフィットボクシング』『舞妓さんちのまかないさん(2021秋~)



・その他過去作:5作品

再放送枠初視聴作品:2作
『抱かれたい男1位に脅されています。』『色づく世界の明日から』
個人的過去作視聴作品:3作
ツインエンジェルBREAK』『極黒のブリュンヒルデ』『ノラと皇女と野良猫ハート



参考→animetick.net




計146作品、うちショートアニメは16作品でした。『やくならマグカップも』はEDが実写後ということもあり、30分枠としました。『極主夫道』はショートアニメ扱いとしています。自分は一気見が苦手なので、リアルタイムで見ることがほぼ習慣づいたがゆえの本数という印象です。いくつか録画をためてしまった作品もありましたが、ほとんどは次クールに持ち越さずに見切れたのはよかったかなと。見ようと思ったアニメはだいたい見られたかなと思いますが、深夜枠以外は手薄ですね。一点、『カードファイト!! ヴァンガード overDress』は2クール目の1話(「めぐみの雨」)を見て気になったのですが、結局見れずじまいでした。150本の大台に乗ったつもりで乗れていなかったので、来年はそれを目指していくか、それとも新作の本数にこだわるよりも過去作を意欲的に見る、あるいは気になった作品を繰り返し見ていくのもやっていきたいなとは思っています。




アニデミー賞各部門紹介

今回授与される、アニデミー賞勝手に設定した各部門をご紹介します。


・作品賞
今年の最も優れた作品に贈られる賞。総合的な評価をもとに、最優秀賞1作、優秀賞3作を選定。


・主演女優賞
今年最も優れていた主役級女性キャラ、そしてその声優に贈られる賞。キャラとしての魅力、声優の演技面の両方から選定。


・主演男優賞
今年最も優れていた主役級男性キャラ、そしてその声優に贈られる賞。同上。


助演女優賞
今年最も優れていた女性サブキャラ、そしてその声優に贈られる賞。同上。


助演男優賞
今年最も優れていた男性サブキャラ、そしてその声優に贈られる賞。同上。


・OP賞
今年最も優れていたアニメOPに贈られる賞。曲、映像、歌詞、本編とのリンクなどを考慮して選定。


・ED賞
今年最も優れていたアニメEDに贈られる賞。同上。


脚本賞
今年のアニメ作品で最も脚本が優れていた作品に贈られる賞。シナリオはもちろん、セリフによる加点も含めて選定。


・アニメーション賞
今年最も優れたアニメーション、すなわち「作画」を見せてくれた作品に贈られる賞。絵の美麗さ、動きなどから選定。3DCGも含めた広義の「作画」を対象とする。


・MMC賞
Most Moe Character賞。今年最も萌えだったキャラクターに贈られる賞。


・実況賞
今年最も実況していて楽しかった作品に贈られる賞。


・CM賞
今年のアニメ作品放映中に流れたCMの中で、最も印象に残ったCMに贈られる賞。


・ベストアワー賞
今年のアニメリアルタイム視聴の中で毎週最も深く印象に残った1時間、その2作品に贈られる賞。何曜日の何時~何時という単位で候補とする。時間が連続する放送枠である必要があるが、チャンネルがそれぞれ違っていても構わない。関東地上波準拠であることはご了承ください。


・ショートアニメ賞
今年のショートアニメ作品の中で最も優れた作品に贈られる賞。


・特別賞
その他、筆者が特別に表彰したいと思った作品に贈る賞。





以上、全15部門。実況賞、CM賞、ベストアワー賞は配信視聴だと対象にはならない賞となっています。
それでは各部門においての受賞作品と惜しくも受賞を逃してしまった作品たちを挙げていきながら、2021年のアニメを振り返っていきたいと思います。



受賞作品発表

主演女優賞

イリナ・ルミネスク(CV:林原めぐみ) 『月とライカと吸血姫』(秋クール)


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『月とライカと吸血姫』より、人間への憎しみと宇宙への憧れを背に宙へ飛ぶ吸血鬼、イリニャンことイリナ・ルミネスクを選出。
吸血鬼として差別を受けてきたこともあり最初は心を開くことはありませんでしたが、レフやシモニャンとの交流の中で少しずつ心が解けていき、回を追うごとに魅力が増していくようでした。人間とほとんど同じだけど、違うところも確かにある。そんな中で訓練に必死に耐え、「人間より先に宇宙に行く」という目標を叶える姿が本当に魅力的なキャラクターでした。
演じる林原めぐみさんは言わずと知れた大声優。貴重な深夜アニメでの出演になります。その演技は正直圧巻でした。特にレフとの距離感を乗せたセリフは抜群で、宇宙を目指す主役としてはもちろん、後半のレフとの関係におけるヒロインとしても非常に魅力あふれるキャラになっていました。林原めぐみさんのツンデレムーブが聞けたのは2021年のアニメシーンでも特筆事項でしょう。
キリッとしたキャラデザながらも、時折アニメアニメした表情を見せてくれたのもイリナの大いなる魅力です。バーで酔っ払ったイリナの破壊力はすごかった……。


惜しくも受賞ならなかった候補として、『ワンエグ』から強い在り方とコロコロ変わる表情がとても魅力的な大戸アイ(CV:相川奏多)、『かげきしょうじょ!!』から天真爛漫さと狂気の表裏一体、千本木さんのシンクロも強かった渡辺さらさ(CV:千本木彩花)、『ひぐらし業・卒』から最強で最狂、北条沙都子(CV:かないみか)などなど。



主演男優賞

レキ(CV:畠中祐) 『SK∞ エスケーエイト』(冬クール)

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超絶スケボーアニメ『SK∞ エスケーエイト』より人間的な魅力あふれるレキくんに主演男優賞を授与。
主人公として、時に明るく、時に挫折を経験しながらも、最後までスケボーが好きだという気持ちを貫いてくれたのがなにより嬉しかったです。畠中さんの演技はとにかく生っぽいのが魅力だと思っているのですが、それが十二分に活きたキャラだったと思います。特に中盤から終盤にかけての闇落ちレキの演技には震えました。
最強でなくても、彼は確かにこの作品の主人公でした。主人公に相応しいと思えるキャラクター、そしてそこに圧倒的な説得力を持たせられた畠中さんの演技、お見事でした。


他挙げたいキャラとして、『ビルディバイド』よりパン好きなのがかわいい蔵部照人(CV:上村祐翔)、『月とライカ』より普段の柔らかい演技に対して独房の声にならない叫びが強烈だったレフ・レプス(CV:内山昂輝)、『カノジョも彼女』より、二股以外は全部倫理がちゃんとしてるイカレ真面目野郎ながらどうにも嫌いになれない向井直也(CV:榎木淳弥)など。




助演女優賞

アーニャ・シモニャン(CV:木野日菜) 『月とライカと吸血姫』 (秋クール)

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主演女優賞に続き、月とライカより、モエニャンことアーニャ・シモニャン。
シリアスな展開、そして閉塞感のある舞台の中で、作品の清涼剤としてまさに「いるだけで嬉しい」キャラだったと思います。もちろんただかわいいというだけでなく、イリナのすぐ近くで共にある心強さ、終盤の苦しい展開の中での感情的な木野さんの演技も抜群に良く、まさにこの作品になくてはならない存在でした。ラジオ『アーニャ・シモニャン・ラジオニャン!』で監督が木野さんをベタ褒めしていたのも納得です。アニメ的な声でありつつ、作品の雰囲気にしっかりとハマった地に足のついた演技は本当に見事。イリナとも通じるところであり、月とライカという作品の持つ魅力でもありますが、ちょくちょくまさにアニメ的な表情をしてくれるのも嬉しいですね。
キャラクターとしては最終回もそうですが、やはりイリナと年越しを過ごした8話が素晴らしかったです。「私が吸血鬼だと知ったらどう思うのかな」「それより宇宙を飛んだと知った方が驚くんじゃないですか?」のやりとりに良さが全部詰まっている……。
木野さんのこういうアニメ声の中に生っぽさを同居させる演技が非常に良いと気付いたので、これから聴ける機会が増えれば嬉しいですね。


正直甲乙つけ難かったのが『ブルリフ澪』より駒川詩(CV:田辺留依)。最終的には仲間が増えていった本作の中で、2クールの間一貫して敵側にいたことによりグングン格が上がっていくのが良かったです。「マゾっ子ウタちゃん」のハンドルネームも破壊力抜群。田辺さんが楽しそうに演技されていた印象だったのも魅力的なキャラでした。
他には『装甲娘戦機』より7話「スズノの秘密」で存分に魅力を発揮したスズノ(CV.宮下早紀)、『やくならマグカップも』より主人公姫乃の幼馴染成瀬直子(CV.若井友希)、『ビルディバイド』より「ししょー!」がかわいい、そして2クール目では……?の棟梨ひより(CV.古賀葵)、『かげきしょうじょ!!』より歌唱力に説得力があった山田彩子(CV.佐々木李子)など。


助演男優賞


豊川刻四郎(CV:石川界人) 『やくならマグカップも』『やくならマグカップも 二番窯』(春・秋クール)


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カフェときしろうのマスターとして、姫乃の父として、そして土岐川姫菜の夫として優しく物語を見守っていた「お父さん」を助演男優賞に選出。
陶器のもつ特徴、そして魅力として、時を経ても残ること、形あるものである以上いつか壊れてしまうこと、使い続けることで味が出ることが描かれていたと思いますが、姫乃をはじめとした登場キャラクターの昔を知り、今を生き、そして未来を過ごすことができるという配置が「刻四郎」という名前とともに活きていたと思います。お母さん、姫菜と過ごした日々、それと重なる姫乃と陶芸の日々。特に1期のお茶漬け茶碗から最終話の陶器の座布団に至る部分は屈指でした。
彼自身妻を亡くした身でもあり、そして姫乃の父親でもありました。2期では姫乃にいらぬプレッシャーをかけてしまったのではないかと悩みますが、姫乃を教え導くようなありかたではなく、そうした人間臭さをずっとまとっていたところも魅力であり、それは「喫茶ときしろう」という「場」の居心地の良さにもつながっていたと思うんですよね。彼自身も姫乃のおばあちゃんにとっては(義理の)息子であるというのも良かった。
石川さんも父親役を見事に演じていました。刻四郎のある意味で友達のような父親の在り方にバッチリハマった優しい声でしたね。


他、『装甲娘戦機』より、年間ベストAIネイト(CV:水島裕)(性別はないが便宜上男優賞としました)、『テスラノート』より、盛り上げ上手のフライドチキン(パーティーの主役)、ミッキー・ミラー(CV:諏訪部順一)、『ひぐらしのなく頃に業・卒』より、随一の萌えオヤジ北条鉄平(CV:宝亀克寿)、『かげきしょうじょ!!』より、山田彩子の才能に惚れ込む小野寺先生(CV:飛田展男)などなど。イイオッサンがいるとアニメがうれしくなりますね。





OP賞

『ファイオー・ファイト!』 SMILE PRINCESS (『プラオレ! 〜PRIDE OF ORANGE〜』(秋クール) より)

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youtu.be




オリンピックイヤーということもあり、スポーツアニメも目立った2021年でしたが、冬季五輪競技のアイスホッケーアニメ、『プラオレ』OPを選出。
このOPは初見で完全に映像と歌に心を掴まれました。かわいいキャラデザとギャップのある強い言葉が散りばめられた歌詞、キレのあるアイスホッケー作画、Aメロのパックをパスするキャラクターたち、そして「ホッケー!」と「オッケー!」で踏まれた韻。日光要素の「サル」もおしゃれ。中でも好きなのはパックをパスするAメロで、ここで感じた「繋ぐ」要素が本編でも非常に重要視されており、特に序盤は視聴の導線としても大きな働きをしていたと思います。アニメーション的にはくるっと回って画面こちら側へパックをパスする優のところが特に好き。
Bメロ入りの「ずっとこのままあると思うな 時間は残酷なもの」の強さも印象的です。画面の楽しそうにはしゃぐドリモンのみんなとのコントラストが強烈で、作品全体を締めてくれるような一節です。
作詞は只野菜摘氏、作曲編曲は田中秀和氏。メロディも力強さとせつなさとカッコよさがあり、一時期はサビを聴くだけで涙が出ることもありました。


候補として最後まで悩んだのが『IDORY PRIDE』(『IDORY PRIDE』より)。このOPでのライブ作画は2021年でも屈指で、曲も抜群に良い。「眠れない夜と切ない朝を繋ぎ止めるのは夢なんだから」の歌詞すごくないですか?アウトロの「アイドリープライド...」は毎回テレビの前でタイミングを合わせて口ずさんでいました。受賞作の方が初見でグッと掴まれたかなという分の差で、僅差の争いでした。
他にも松根マサトOPで「一足飛びゅーん」の歌詞も楽しい『D-(A)LIVE!!』(『WIXOSS DIVA (A) LIVE』より)、同じくカードゲームアニメから、桜良ちゃんの笑顔、鳥居からピースで顔を出すひよりちゃん、そして頭を抱えるテルトがめちゃくちゃ良い『BANG!!!』(『ビルディバイド』より)、陶芸、そして本編とのリンクが見事な『扉を開けたら』(『やくならマグカップも』より)、とにかくBメロの「あるがまま なすがまま 流されて……」の部分が染みる『Naughty Love』(『女神寮の寮母くん。』より)などなど。個人的に松根マサト氏の作るOPが好きなので、今年は上記のウィクロスディーバの他にも電池少女、ジャヒー様と見れて良かったです。


ED賞

『マイニチカシマシファーマシー』 ノエラ(CV.松田利冴) & ミナ(CV.熊田茜音) with 桐尾礼治(CV.福島潤) (『チート薬師のスローライフ異世界に作ろうドラッグストア~』(夏クール) より)

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2021年のスローライフ異世界転生ものの一角、チート薬師のED。
アニメのEDとして欲しい要素が完璧に入っている、まさに完成されたEDだったということで受賞。このアニメ自体がかなり「型」のアニメだったと思いますが、わちゃわちゃした本編の後、「閉店の時間です」の一枚絵と次回のお客様を挟んでこのほぐしてくれるような曲調のEDが流れる時間が一週間で一番好きでした。
中でも好きなのは「バッサバッサとさばきましょ〜」のところ。ミナとノエラがでっかい荷台に大量のポーションを積んで売りさばくという本編では全く出てこなかった行商要素が笑う。ドラッグストアじゃないんかい。
セリフがちょくちょく挟まるのもうれしくて、最後の「本日もキリオドラッグにご来店いただきまして、ありがとうございました!」「るー!」で満足。「るー!」をテレビの前で一緒に叫ぶとなお満足。
作詞作曲編曲はマキャヴェリズムOPや銃皇無尽のファフニールEDなどなどでも有名な園田健太郎氏。イカした曲のイメージがありましたが、こういうタイプでも抜群の巧さがあってさすが。


他挙げたいものとしては、曲が圧倒的に好きで、またドール(アリス)のギミックも仕込まれていた『制服DOLL』(『ゲキドル』より)、ダンサブルでノリノリな『散文的LIFE』(『テスラノート』より)、毎回本編の終わりに時間ですよ〜と言わんばかりにイントロが流れて締めにかかるのが笑いを誘った『Elder flower』(『精霊幻想記』より)、揺れるヤシの木、スケボー失敗集の映像面が印象的な『インフィニティ』(『SK∞ エスケーエイト』より)、本編の旅路に重なる歌詞と鹿乃さんの歌声が美しい『コンパスソング』(『装甲娘戦機』より)など。素晴らしいEDは素晴らしい視聴後感を与えてくれます。


脚本賞

『やくならマグカップも』(シリーズ構成・脚本 荒川稔久) 春クール

yakumo-project.com


陶芸アニメ、そして多治見アニメ。陶芸という一見地味な題材ながらも、趣味の物語としても女の子と家族の物語としても見事な着地を見せた『やくも』を脚本賞に。レギュレーション上『やくならマグカップも』への授与ですが、実質的には1期2期両方への脚本賞とさせてください。
実質的に15分アニメだったにもかかわらず、それを感じさせない満足感を生み出していました。ギュッと詰めていながら美しく各回がまとまっているのがやはり上手い。風呂敷は広げすぎず、しかし登場するすべての要素への目配せは怠らない、そんな丁寧な脚本はこのアニメの優れた要素であると言っていいでしょう。
キメのシーンで印象的ながらも素朴なセリフを巧みに使っていたのもすごかったと思います。一期最終話、お父さんの「どうしても、座ってみたくなっちゃって」なんかは、陶器と生活に関わる姫乃の物語、そのスタートラインに立つところまでの締めとしてまさに相応しいセリフでした。
荒川さんの得意分野というか手グセというか、昭和の特撮ネタがところどころに入っていたのも個人的には好きなところです。成瀬直子がレトロサブカル趣味であること、おばあちゃんはオンゲー趣味であること、そんな自由な在り方も陶芸に通じているのかもしれません。


他に挙げたいのは、やはりまずは記憶喪失というトリッキーな要素をがっつりと絡めながら終盤の見事な視聴感が素晴らしかった『RE-MAIN』(シリーズ構成・脚本 西田征史)、そして世界観もキャラ周りもしっかり書きながらトンチキも抜群だった『ビルディバイド』(シリーズ構成 冨田頼子 脚本 冨田頼子、亜田井、枦山大、高木聖子)、登場人物がどこまでも複雑に絡み続ける『オッドタクシー』(脚本 此元和津也)、バリバリのSFをやりながら、説明するのではなく気持ちよく見せることが作品の面白さにもつながったゴジラS.P』(シリーズ構成・脚本 円城塔)など。
本家アカデミー賞では原作付き作品には脚本賞ではなく脚色賞という賞が贈られるそうです。『やくも』は原作が一応あるのですが、どれくらい原作を踏まえているのかは寡聞にして知らず……。ですが素晴らしい脚本だったことには変わりません。完全オリジナルアニメという意味では次点のRE-MAINもやはり素晴らしかったですね。


アニメーション賞


ワンダーエッグ・プライオリティ』(春クール)


wonder-egg-priority.com


若林信氏のTVシリーズ初監督作品となった『ワンダーエッグ・プライオリティ』。野島伸司氏を迎えた脚本も話題を呼びましたが、アニメーション賞で選出としました。
やはり、普通のアニメでは見れても1話か最終話くらいでしかお目にかかれないような気合いの乗りに乗ったアクション作画がまず目を惹きます。正直圧巻。ビビッドな色使いは思春期の女の子たち、その仄暗い心の中というテーマにも合っているように思います。止めの作画も美しく、このクオリティで走り切るのは大抵のことではないでしょう。
ただもちろんそれだけではなく、個人的にすごいなと思ったのは日常のふとした動きのアニメーション。アイちゃんがルンルン気分で歩いてるときの腕振りのアニメーションが一目でるんるん気分で歩いてるとわかるアニメーションだったのが強く印象に残っています。
さらに言うとアイちゃんがカーテンにくるまったカットなどで見られたネコ目など、美麗な作画、バリバリのアニメーションをやりながらアニメ的な作画表現もこともなげに取り入れていたところです。アニメが好きなのでアニメ的表現をやってくれるとそれだけで嬉しくなってしまう。
若林信監督といえばナナニジの『あの日の彼女たち』を手掛けた方。ワンエグはかなりトガった作品でしたが、このようなバリバリのアニメーション作品をまた見せてほしいと思います。


惜しくも受賞は逃したものの、もちろん他にも優れたアニメーション作品はいくつもありました。アニメ的な崩しのアニメーションが最高だった『スライム倒して300年』(特に10話のフラットルテはキマっていました)、帰ってきた京アニ『メイドラゴンS』、とにかくリッチな無職転生、個性的な演出と相まって印象的な『ぶらどらぶ』など。
美麗な作画、リッチな作画というものにはどうしても構えてしまうところがあるのですが、ちゃんと芝居をしている作画、またアニメ的表現で楽しませてくれるような作画は好きだなと思います。もちろんリソースに左右されてしまうものではありますし、全部が全部優れた作画であるというのは求めていないのですが、表現方法としてのアニメーションを来年も楽しみにしたいと思います。


MMC賞

奈良田愛(CV:花守ゆみり) 『かげきしょうじょ!!』 夏クール

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今回全部門の中で最も最後まで悩んだのがこのMMC賞でした。本当にたくさんの萌えキャラがこの一年を彩ってくれました。この中から一人を選ぶなんてできない、みんなにMMC賞をあげたい、でもMostと言うからにはたった一人しか受賞はできません。悩みに悩みぬいた末がこの結論でした。
奈良っち、いや萌えっち。貴重な笑顔が劇中で「奈良の開国」と呼ばれたように、ふとした瞬間の一挙手一投足に萌えが宿る、すさまじいキャラクターでした。さらさと友達になりたい萌えっち、さらさを名前で呼びたい萌えっち、風呂に沈む萌えっち、漢字が書けない萌えっち……。衝撃的な幼少期のトラウマも描かれましたが、そういう背景があってこそ萌えにも奥行きが出るというもの。キモオタさんも必死でキモオタをやっているのです。
かげきしょうじょという作品自体はなかなかに硬派な部分もあるというか、萌えを前面に押しているわけではないはずですが、それでも最終回、「萌え」の大切さが先生によって説かれたことはもはや答えであるわけです。これだけ萌えられていた奈良田愛は間違いなく魅力的な役者にもなれるのだということ。その萌えがもはや作品の掌の上だったという気持ちよさも含めて、今年のMMC賞を奈良田愛に捧げます。


正直他の候補を挙げればキリがないのですが、まずは『チート薬師』から、全員が萌えではあったのですが特に挙げるとすれば……ノエラかな……。ミナちゃんも本音ストレートという衝撃の回を経てなお加速する萌えを展開していました。『セブンナイツレボリューション』からはメイクコロッケヒロインファリアさん。ヒロインとしても非常に萌えを提供してくれました。『精霊幻想記』のセリア先生で萌えたことも数知れず。『月とライカ』のイリナシモニャンもそれぞれ主演女優賞、助演女優賞を獲りましたが、MMC賞とのダブル受賞となってもおかしくないポテンシャルがありました。『電池少女』のボクっ娘赤城りんちゃんも忘れられません。燃えと萌えのヒロインでした。ボクっ娘といえば、『女神寮』のオレっ娘すてあちゃんも非常に質量の大きな萌えを繰り出してくれました。本当にキリがない。
「萌え」はアニメにおいても非常に重要な要素のひとつであるとあらためて確信した一年でもありました。来年も萌えには敏感にアニメを見ていきたいと思いますし、MMC賞をこのアニデミー賞のひとつの目玉として育てていきたいなという思いがあります。


実況賞


『現実主義勇者の王国再建記』(夏クール)

genkoku-anime.com


アニメ実況で一番楽しい瞬間ってなんでしょうか。もちろん優れた作品をみんなで見るというのも素晴らしいのですが、実況行為でしか発散できない面白さというのがあるんじゃないかと、10年アニメ実況をしてきた自分は思ったりします。そういう得体の知れない面白さが間違いなくこの『現実主義勇者の王国再建記』にはあったと思います。
一番印象に残っているのは一話使ってメシを食ってた4話でしょうか。いろんな食材にいろんな調理方法、美味い美味いと食べるダークエルフの笑顔に、口からイナゴの脚がぴょこんと出てるトモエちゃんは衝撃の画でした。ED入りもなんとも絶妙すぎるタイミングで、初見時は興奮のあまりぶっ倒れていたようです。


ヒロインのリーシアが萌えだったのもポイントが高く、ヒロインの萌えシーンで「萌え!!!!!」とツイートすることでしか満たされない気持ちというのがあるのですよね。
EDもあまりに異常でした。本当にこう……形容し難い凄みがあります。進化の実EDも相当なものですが、ただただそれっぽい格言が次々浮かび上がる90秒はそうそう見れるものではありません。食糧自給率。臥薪嘗胆でこの後のジャヒー様とも繋がっていました。
放送時間もドヨル2530〜と一番盛り上がるコアタイムでした。テレ朝のRE-MAINと被っていたのだけは残念でしたが。
極め付けはまさかまさかの2期決定。というか元々分割2クールだったのでしょうが、これだけ騒ぎまくったエンタメアニメが2期をやるという報で実況民がテンションMAXになったのは言うまでもありません。2期なんかなさそうだけどやってくれたら嬉しいアニメに2期が決まる瞬間をオタクと共有できることほど嬉しいことはそうそうありませんからね。2022年初っ端からの第2クールも本当に楽しみです。


現国には一歩及びませんでしたが、今年の実況アニメといえばひぐらし卒』は外せません。普段アニメ実況をしないオタクも揃っての視聴は楽しかったですね。他にもゲツヨルの深い時間にもかかわらずたくさんの萌を届けてくれた『精霊幻想記』、作品自体の面白さとトンチキの両輪で実況アニメとしても素晴らしかった『装甲娘戦機』、とにかくたい焼きがデカかったWIXOSS DIVA (A) LIVE』、LP回復だけで無限に笑顔にしてくれた『俺だけ入れる隠しダンジョン』などなど。
アニメ実況はあくまでアニメの楽しみ方の一つでしかないというのは承知の上で、それでもこのスタイルはまだまだ続いていくと思うので、来年もオタクのみなさんとアニメ実況をやっていきたいねという気持ちです。よろしくお願いします。



CM賞

「壮大な冒険に期待しなさい!」(『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』スマホゲームCM)

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下馬評通り(?)セナレボから「壮大な冒険に期待しなさい!」が受賞となりました。
受賞理由……というほどのこともないのですが、とにもかくにもフレーズの勝利ですね。「壮大な冒険」だけだとありふれていますが、「期待しなさい!」という命令口調で背筋がピンと伸びてしまう感じ。気を抜くとハルヒの声で再生されてしまう。文字がちょっと小さめな画面もちょっと面白い。
何より本編が実際壮大な面白さになっていったことで、このCMの盛り上がりもグングン伸びていったのが一番の評価ポイントだったと言えるかもしれません。当然ながらCMも作品と共に歩むものなのです。
本放送時にはすぐCM枠を「二ノ国」に取られてしまい見ることはできなくなったのですが、月曜日のひげひろの次の時間に同クールで再放送枠があり、そこでは変わらず流れていたというのもポイント高いところです。最初は名CM目当てで見ていた再放送枠もだんだん本編が盛り上がるにつれてCM関係なく再放送自体が楽しみになっていくという……。毎日深夜テレビに張り付いてるリアタイ視聴のオタクならではの思い出があるのが良いですね。


他には2021年のアニメCMシーンを語るには外せない「ロイヤルリムジン」(『エクスアーム』内)、なぜか後継CMとして完全に定着した「デンタルリムジン」こと「デンタルテン」(『やくならマグカップも』、同二番窯内)、ノエラがかわいい「チート薬師円盤CM」(『チート薬師』内)、いくつかバージョン違いがある中でも最も強烈な印象を残した「ほ無遙」こと「ほろ酔いで 無防備な 遙子の姿も(アイプラアプリCM)」(『IDORY PRIDE』内)など。ほ無遙はアプリを始める一番の後押しにもなったので感慨深いです。
受賞には至らなかったものの、やはりロイヤルリムジンの存在感は圧倒的だったといっていいでしょう。今後も「○○リムジン」が擦られていくのだろうか……。個人的には謎アフレコ系円盤CMで強烈なのが見たいですね。



ベストアワー賞


『かげきしょうじょ!!』&『現実主義勇者の王国再建記』(夏クール 土曜深夜25時〜26時 @TOKYOMX)

実況賞ですでに現国が出てしまいましたが、「かげき再建記アワー」こと、この2作をベストアワー賞に選びました。
『かげきしょうじょ!!』は言わずと知れた今年の名作アニメ。舞台となった紅華歌劇の元ネタである宝塚は自分の生まれ育った地ということもあり、個人的に思うところも多いアニメでした。その名作アニメと上述の現国が合わさって、今年でも随一の視聴感を味わわせてくれたのが「かげき再建記アワー」。なんとな〜くのタイトルの雰囲気が似ているということもあり、伝説となった2018夏クールの「音楽覇王アワー」(『音楽少女』&『百錬の覇王と聖約の戦乙女』)を彷彿とさせるものがありました。
真っ当に面白いアニメの後にまたさらに別ベクトルの面白いアニメが待っているというワクワク感。もし2作の順番が逆なら受賞は別のアワーだったかもしれません。
3話放送時、かげきしょうじょでデブはいらないと指摘されるシーンの後、現国ではポンチョがソウマにベタ褒めされるというウルトラCシナジーが発生したのもすごかった。アワーの絆を感じた瞬間です(?)


他にも挙げたい今年のアワーとしては、名作×名作の「やくも吸死アワー」(秋クール月曜夜2230〜2330 @TOKYOMX)、楽しみアニメ×楽しみアニメの長瀞大運動会アワー」(春クール土曜深夜2500〜2600 @TOKYOMX→テレビ朝日)、骨太の名作の後に倫理崩壊ラブコメが全てを破壊して楽しく眠りにつかせてくれる「ブルリフもカノジョアワー」(金曜深夜2555〜2655 @TBS)など。
心に残る1時間を探し求めるのもアニメ実況の醍醐味です。


ショートアニメ賞

『アイドールズ!』(冬クール)


wsy-idolls.com



ショートアニメ賞は僧侶枠の牙城にギャグのキレで食い込んできた『アイドールズ!』を選出。
とにかくギャグのセンスが独特かつ一歩抜きん出ていた印象でした。いわゆる楽屋ネタですが、文字演出を取り入れたり、かなり独特のキャラだったりが面白い。謎の置物が実質ツッコミ担当ですが、それによってメインの4人が自由にボケられていたのも良かったです。
好きなのは金髪長身のるか。謎にノンアルビールをあおってるのがグッド。メイン4人は新人声優ですが、そのうちに出てきて欲しいところ。
冬クールはアイドールズ、ゲキドル、アイドリープライドというトガったアイドルもの3作品が一堂に会しており、それぞれに魅力ある作品でした。ショートアニメながら、同ジャンルの強豪相手に十分以上に戦えていたこのアニメにショートアニメ賞を授与します。


他にはやはり僧侶枠から、トランスBLモノという攻めたジャンルでしっかり決めた『黒ギャルになったから親友としてみた。』、美しい画面作りとしっかりした京都弁が魅力の舞妓さんちのまかないさん、監督脚本の森田と純平氏のセンスが光る『キミとフィットボクシング』など。来年も素晴らしいショートアニメに出会えるのを楽しみにしています。


特別賞

『IDOLY PRIDE』(冬クール)

anime.idolypride.jp



特別賞として『IDORY PRIDE』。アニメ単体では評価が難しいところもあるものの、一年を通して再放送し続ける偉業の達成、心臓移植という今年のアニメシーンを席巻した設定、そして何より自分がアプリからこのコンテンツにハマり、初見時からは考えられないほど好意的に見られているということなどから特別賞の授与としました。
上述した通り初見時のアニメの感想はそれほど高く評価するものではありませんでした。天文学的確率の同点に代表されるように、ほぼ死に設定かつアイドルの観客に届けるという在り方とも相性の悪いAI採点システムや、最終回に担当アイドルをほっぽり出して幽霊に会いにいくマネージャー牧野。後者は個人的には和解できた部分ですが……。ただ、ライブの作画、CGは出色。「ただのアイドルアニメではない」のキャッチフレーズは同クールに『ゲキドル』という怪作があったこともあり上滑り感があったのが不憫といえば不憫です。
しかしなんだかんだでアプリを触るようになり、キャラに愛着が湧き、シナリオもアニメプラスマイナスアルファで咀嚼することで、そしてそれと同時にテレ東夕方枠というなんともな枠で毎週見ることで、自分でも驚くほどこのアニメを好きになることができました。やはりキャラクターは魅力的で、ただ12話の尺ではほとんど深くは描けなかったのも確か。キャラを分かった状態でアニメを見ると一気に立ち上がるものがありました。シナリオの方も麻奈というまさに"幽霊"に取り憑かれた牧野をはじめ、姉として、憧れとして、そしてライバルとして各キャラに立ちはだかった伝説のアイドルを乗り越える物語、「サヨナラから始まる物語」というコンセプトはしっかり描けていたと思います。
2022年にはライブも参加予定で、今一番楽しみなコンテンツです。麻奈役の神田沙也加さんの逝去にはただただひとりのファンとして祈りを捧げることしかできませんが、神田さんの麻奈の演技、そして歌がこのアニメを唯一無二のものにしていたことは忘れられません。


作品賞

最優秀賞『月とライカと吸血姫』(秋クール)

tsuki-laika-nosferatu.com



優秀賞『装甲娘戦機』(冬クール)
『やくならマグカップも』
(春クール)
『ゲキドル』
(冬クール)


soukou-musume-senki.com
yakumo-project.com
gekidol.com



2021年の最優秀作品賞は、種族を超えた宇宙への憧れ、そして愛を、時に壮大に時にミニマムに描いた傑作、『月とライカと吸血姫』に授与したいと思います。
自分がこのアニメを見ていてハマった要素として、思い返してみるとそれは没入感にあったのではないかと感じます。そしてそれは、主に音響周りによるところが大きかった。ツィルニトラ共和国のそれっぽい劇伴、冷え冷えとした画面の中で交わされる会話。主演、助演女優賞を獲ったように、特に声優の演技は抜群で、物語に惹き込まれるには十分すぎるものでした。
シナリオラインも見やすく、まとまりも良かった。地味といえば地味かもしれませんが、人類史上初の宇宙飛行という偉業へ向かう日々は常に緊張感があり、それゆえにたまに挟まる日常の緩やかなシーンの嬉しさも一入。まさに緩急がしっかりとついていて、中弛みも感じることなく飽きさせない面白さがあったと思います。
アニメーション的な部分でいうと、やはりヒロインイリナとアーニャがときどき見せてくれるアニメ的作画、画面が何より嬉しかった。これも緩急のひとつですね。アニメがアニメである意味を感じられる喜びがありました。
日曜の深夜2535〜という深い時間でしたが、ほぼ毎週リアタイをして、そして毎回本当に深く沁み入っていました。自分が深夜アニメで見ていてうれしく思う作品ってのはこういう作品なんだとあらためて気付かされましたね。
嘘と真実というテーマも印象的です。アニメというのは話はもちろん、そもそも絵の表現ですので、嘘か真実がでいえば嘘なわけです。それでもその嘘を見て感動して涙を流す自分、その涙は嘘偽りのない真実である、そんなことを思っていました。嘘や真実は絶対的なものでないこと、それは常にフィクションに触れている自分にとっても突き刺さるものでした。
最後に。音泉配信のアニラジ、『アーニャ・シモニャン・ラジオニャン!』もとてもいいラジオでした。シモニャン役木野日菜さんの声がまずめちゃくちゃ良いのですが、毎回キャストやスタッフをゲストに呼んでの作品についての話が面白かったです。特に監督がアニメスタッフの一人一人の名前を呼んで感謝を伝える回は名作でした。全てが噛み合った素晴らしいアニメだと思います。


続いて優秀賞三作品について。
まずは『装甲娘戦機』 。最初こそその独特のノリ、良く言えばトンチキ、悪く言えばチグハグなノリに喜びつつも掴みきれずにいたのですが、「命がけの修学旅行」というキャッチフレーズに触れてからはかなりきれいに咀嚼できた気がします。異なる世界から集った女の子たちが説明もなく命を張って戦わなければならない理不尽と、そうであるからこそかけがけのなさが生まれる旅路。AIネイトの立ち位置も良かったですね。
共に過ごすチームとして、食事シーンが象徴的に挟まれていたのもこのアニメの特筆すべき点でしょう。みんなでカップ麺を食べるシーンがこんなにもうれしく感じられるアニメなんですよね。
個別回で印象に残っているのは、「たまたま」集まったにすぎない彼女らの、その関係性の描き方が秀逸な7話「スズノの秘密」(これも食事がキーになっていました)、そして総集編ながらここまで描かれていなかった「大人」の視点を示しつつ、それでも、そうであるがゆえの彼女たちの在り方の肯定につなげてみせた10話「この世界のために?」です。最終回のスパッとした終わりも、余韻を残しつつ非常に美しい締め方だったと思います。

次に『やくならマグカップも』。女の子×マイナー趣味というアニメはたくさんありますが、多治見という陶芸の街を存分に活かし、そして実写も含めて描写することで、彼女たちの物語の輪郭がバッチリ決まっていたところにまずひとつこのアニメの強みがありました。実際聖地巡礼も行ったのですが、「陶器の街」ということに注目してみるとまた見えてくるものもあって楽しかったです。居酒屋では「多治見では知り合いから売り物にならない陶器をもらったりするから、皿をわざわざ買うことってあんまりないかもしれない」みたいな話も聞けて良かったですね。
さてアニメですが、脚本賞のところでも触れたように、15分という枠ながら毎回濃密な視聴感を届けてくれました。実写の枠がセットとなっていましたが、本編とのリンクという面ももちろんさることながら、実写の時間でゆっくりアニメを咀嚼できたことも振り返ってみれば良かったですね。姫乃の物語として筋を通しながらも各キャラクターへの目配せもバッチリ、またアニメーションも抜群で、本当に活き活きとしたアニメだったなと思います。

作品賞の優秀賞もう一作品は『ゲキドル』。ここ数年でもトップクラスに「次が気になる」作品で、自分は配信しか見る手段がなかったのですが、毎週配信即視聴していました。普段配信での視聴は後回しになりがちだったので、擬似的にリアルタイム視聴のように再生するのはどこか新鮮な感覚でワクワクしていたのを覚えています。
ゲキドルというタイトルでしたが、アイドル要素はそこそこに演劇要素が最後まで作品を貫いていたのがとても印象的でした。終盤の重厚なSF要素が演劇に回収されていく様はなかなか味わえない気持ちよさがあり、これ本当にまとまるのか?というところをなんやかんやで締めた力量は天晴れをあげたいです。最終話サブタイ「終わりよければすべてよし」もめちゃくちゃ良かったですね。終わりよければすべてよし、確かにその通りだな〜と思いますし、実際その通り「終わりよければ」になっていたのがもう文句なしです。
せりあ、あいり、いずみたちの湿った関係性も、かわいいキャラデザとのギャップも相まってこのアニメの魅力でした。放送当時の自分の感想いわく「喪失と仮託の物語」らしいですが、まあ当たらずとも遠からじといったところでしょうか……。
もう一つ、楽曲も非常に好きで何度も繰り返し聴いていました。特に『キズナ』、『制服DOLL』、『トーキョーロンリーガール』はお気に入り。後期OP『時の翼 Chrono Geizer』のタイトルのナニモン感もめちゃくちゃ好きです。終盤までいくと確かに物語に合ってる気がする!となるのも面白さがありました。





おわりに

以上、2021年アニデミー賞各部門表彰作品でした。2021年中に書き上げるつもりでいつの間にか2022年の三が日も終わってしまいましたね。
これまで話数単位の振り返りは毎年やっていましたが(2019,2020年は記事未完成ですが……)、アニメ全体の振り返り記事は書けていませんでした。各部門を設定することで、いろいろな角度からあらためて今年(2021年)の作品を思い返す良い機会になりました。それなりにたくさんの作品について言及することができ満足しています。それでもまだまだもっと書きたいことはあったなと思いますが……。

アニメ、やっぱり面白いなと思います。一年を通じて平均1日あたり2,3時間は見ていたと思いますが、飽きを感じることはやはりないですね。というか足りない。多分今年もたくさんアニメを見ることになるでしょう。毎年、過去作視聴と気になった作品の再視聴もやっていこうと思うのですが、なかなか新作を追うだけで手一杯になってしまうのが残念なところです。このあたりは良いバランスを追求したいと思っています。

アニデミー賞、受賞作を考えるのはもちろんですが、各部門自体を考えるのも楽しくて、自分はアニメを見るときに何を特に評価ポイントにしているのかの振り返りにもなった気がします。ボリュームは大きくなってしまいましたが、いろんなオタクのアニデミー賞が見れたら楽しいなと思いますね。そんなわけで2022年も良きアニメライフを過ごしましょう。



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『映画大好きポンポさん』感想 —あなたは画面に何を見る―

アニメ大好きヌンサクさんになっちゃった。


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『映画大好きポンポさん』を観た。原作まったくの未読。内容も、ポンポさんが好きな映画を作ってわちゃわちゃするドタバタものかと思っていたら、あんまりそういう話ではなかった。

抜群に、べらぼうに、そしてめちゃくちゃに良い映画だった。メッセージ性とエンタメ性、大衆性と個人性の同居が非常に高いレベルにあったと思う。映画を作る話ではあるが、画面のつくりは非常にアニメ的で、個人的にはアニメのオタクに非常におすすめしたい作品。







以下ネタバレありです。



長い映画は見られない


単純だが、この映画の最高だった点はなんといっても上映時間だろう。上映時間90分。もう一生91分以上の映画見ません。

この映画のキモは「切り取ること」だ。長い撮影フィルムからシーンを切り取って映画にすること、これは編集。そして目に映る世界から画面を「切り取る」こと、こっちは撮影。いずれも映像作品にとっては重要な要素である。

その上で、「切り取る」ことは「切り捨てる」ことにつながる。編集では大量の「使わなかった」シーンが生まれ、撮影では描きたいもののために画面に入らない世界が存在する。スイスにロケハンに行ったシーンで、失意のダルベールを描くために雄大なアルプスが彼の目に入らなかったように。

「切り捨てる」ことは何も映画の中の話だけではない。ジーンくんは映画が大好きで、それ以外のものを切り捨てていった。友達を、将来を、社会を。もちろん、それは結果的なものだったのかもしれないが。作中作で追加撮影されたシーンでは、ダルベールは家族を切り捨てた。いや、切り捨てられたのかもしれない。いずれにしてもそれもまた、望まれたことではなかっただろうが。

そして、映画、ひいては映像作品というものは、観客の時間、身体、大袈裟に言えば人生の一部を切り取って鑑賞されることで初めて作品となる。作品それ自体の中で切り取ることを躊躇えば、結果として観客の人生をそれだけ多く切り取ることになってしまう。そのバランスをこの作品は90分という時間にとった。


単純な仕掛けだが、この「90分」という上映時間がこの作品と現実との橋渡しとなり、なんとも言えない視聴体験を生み出した。この作品が「夢を応援する」という側面も持つ以上、この上映時間による現実と作品との「重なり」によって、伝えたいメッセージはグンと真に迫ってくる……ような気がするのだ。





アニメ大好き俺くん


その90分という尺に収めるため、非常にテンポの良い、そしてわかりやすい作品になっていたのもこの映画の大きな魅力だ。そのテンポの良さに寄与していたのがアニメ的演出である。特に頻繁に見られたのが場面転換演出。シーンのつながりにメリハリがついて見やすい。

そしてアニメ的、というのであれば、ポンポさんというキャラクターのアニメーション的魅力も抜群だ。細い体躯に大きな目、動きもコミカルで、声もかわいいけれど聡明さもある。これはキャラクター的見た目でキャラ説明を省くことにもつながっていると思う。デフォルメした見た目でキャラをつかませることができるのは、アニメの持つ大きな魅力の一つだ。他にもジーンくんの目のクマなんかもそう。『MARINE』の監督の小さな背格好にグルグルメガネというのも面白い。

アニメ的魅力という部分で、「萌え」が詰まったシーンについてもここで言及したい。ポンポさんがレインコートを着て、フードの中に髪の毛が全部入ってコミカルに動くシーン、編集作業で自分のシーンがどんどん切られていって涙目になるナタリーのシーン、そして、赤ブチメガネをかけた受付嬢がポンポさんの真似をしながらジーンくんに伝言を伝えるシーン。特に3つ目のシーンは、受付嬢がポンポさんから伝言を預かっておりますと言った段階で、ここでポンポさんの話し方とか動きを真似したらマジで萌えだな……と思ったので、果たして次の瞬間にそれが行われたのが最高にうれしくて、もし家で一人で見てたら高々とガッツポーズを掲げて絶叫していたと思う。ここは普段深夜アニメを見てうれしくなってしまうオタクには是非とも見てほしいシーンでもある。


ところで、劇中のスイスでの撮影シーンでは、ヤギ小屋の崩壊や大雨というアクシデントを逆手にとって、予定にはなかった良いシーンを撮るというくだりがあった。ここ自体は映画撮影の(特に実写映画の)面白いところとして描かれていたと思う。しかしこの作品はアニメである。突然だが、アニメの持つ優れた点とはなんだろうか。自分は、画面をすべてコントロール下に置けるというところにあると思っている。つまり、こういう不意のアクシデントを活かすというシーンを、そのまま「不意のアクシデントを活かすシーン」として最初から作ることができるのだ。アイデアさえあれば、絵で表現できるものであれば、それらはすべて画面に入れることができる。あるいは画面に入れたくないもの、入れる必要がないものがあれば、それを消すことだって自由にできる。その自在性、無限性こそは、私がアニメに惹かれ続ける最大の理由と言っていい。そういった意味で、この映画はアニメであることを十分に活かしていたし(以下で自覚的という部分には言及するが)、アニメであることに非常に自覚的に作られていたと思う。そこが、アニメが大好きな自分にとってもしかするとこの作品で一番うれしかった部分かもしれない。



そう、私はアニメが大好きだ。それこそ作中のジーンくん……とまではいかないが、基本的に時間があればアニメを見ているし、ほぼ毎日深夜アニメはリアルタイムで見ている。今のように深夜アニメを見るようになったのが大学に入ってからなので、それ以前のアニメには明るくないのが自分としては負い目に感じているところだが、それでも「今」のアニメを見ることに関しては、そんじょそこらのオタクには負けないと思っている。そういう意味で、やはりジーンくんに自分を見るというところもあった。いや、というよりも、ジーンくんに感じていたのは自分ではなくて憧れの姿か。アランがジーンくんと喫茶店で話した後、ジーンくんを眩しく見るシーンがあったが、あのシーンのアランが一番自分とシンクロしていたのかもしれない。

好きなもののために、やりたいことのために、いろんなものを切り捨てる。そのメッセージは強烈に響いた。自分はできれば何も捨てたくないと思ってしまうし、捨てられない。ゴミだって捨てられないのだ。それでも事実、アニメをひたすらに見続けたことで、いつの間にか切り捨てていたものもあっただろう。だがそうやっていろんなものを切り捨てた先でしかつかめないものがある。それは恐ろしくも優しい、優しくも恐ろしいメッセージのように思える。生活も、社会も、人生すらも切り詰めてアニメを見ていった先で、いつか何かを掴みたい。そんな風に思いを新たにした。





自己言及的であること、自覚的であること


個人的にこの映画の好きなところが、随所に見られる自己言及的なシーンや展開だ。例えば、上で挙げた90分という尺もそう。劇中で長い映画はダメと言って、それをオチにつなげて最後にタイムコードまで出す。それにつながるが、ジーン監督の編集シーンもそう。おそらくこの映画自体も、90分という尺に収めるために相当に苦労して編集作業が行われたはずだ。

そもそも、映画を撮る映画の時点でかなりメタ的である。マンガを描くマンガ、アニメを作るアニメ、それらに共通して言えるのは、劇中のセリフや展開がそのままそっくりその作品自体に返ってくるということだ。つまり、劇中でキャラクターはこう言ってるけど、実際この作品はそうなっていないじゃないか、みたいな。もしくは、その劇中でのキャラクターのセリフに則って作られているけどなんか微妙だよねとなれば、そのキャラクター自体の魅力が薄まってしまうなんてことも。

この映画は題材も相まって、そういった部分にとても自覚的であったと思う。作中作である『MEISTER』の脚本を初めて読んだときのジーンくんの感想が「物語としては定番だけどキャラクターの魅力に惹き込まれる」だったが、果たしてこの映画自体もそうだったといえる。冴えない男が夢をかなえ、そして観る人の背中を押す物語。だがポンポさんをはじめとしたキャラクターがどれも魅力的で、ストーリーがぐいぐい引っ張られていく。他にも、ポンポさんは劇中で「映画は結局ヒロインを魅力的に描ければそれでいい」と言っていたが、この映画もポンポさんというキャラクターが十二分に魅力的で(前の文章と被るが)、それだけでもずっと見ていたいような作品だ。


個人的に最もこれだ!と思ったシーンがある。それはジーン監督が「この映画には決定的に足りないところがある」と言ったシーン。中盤まで見ていて思っていたのは、ジーンくんの社会不適合な目が良いとポンポさんは言っていたけど、たしかにビジュアル的にそういった部分はよく伝わるにしても、過去のエピソードなどで描くことがもうちょっと欲しいなということだった。そう思っていたところにジーン監督は言うわけである。「この映画には選ぶために切り捨てたシーンが足りない」と! まさにこの映画自身のことでもあるじゃんと、そうだよそれが欲しかったんだよと、これぞ我が意を得たりである。ここもまた自己言及的と言っていいと思う。結局、劇中でジーンくんの過去のエピソードについて十分に描かれたかと言えばそうでもないのだが、このシーンがあることが何よりも雄弁であるので、尺やテンポを考えてもこのシーンの果たした意義は限りなく大きいと思う。この視聴者⇔作品⇔登場人物⇔作中作が幾重にもにも重なってグルグルと参照を続ける感覚が、視聴体験として素晴らしかった。








以上で挙げた他にも、加隈さん演じるミスティアの魅力とか、マーティンの世界最高の俳優としての凄みとか、ジーンとナタリーがプールサイドで話すシーンで花火が打ちあがって今期花火アニメの絆を感じたとか、冒頭いきなりのビデオインタビューシーンでジビエートじゃん!ってなったとか、(後半はウケる範囲狭そうだが……) 90分の間に見どころがいくつもあって飽きない、とても楽しく、そして良い映画だった。

ところで、この映画のキャラクターには好きな映画という設定欄がある。自分は……と考えてみるも、自分は本当に映画を見ないので、そこに挙げられる映画を選ぶことができない。一応思いつくところだとポッピンQ、劇場版はいふり、そしてこの映画大好きポンポさんというところか。実写は邦画洋画問わずほとんど記憶にないが、これをきっかけにキャラクターの好きな映画、あるいはパンフレットに記載がある、スタッフキャストが好きな映画として挙げている映画くらいは見てみるのもいいだろう。アニメならアクションヒロインチアフルーツファンタジスタドールアクティヴレイド帰宅部活動記録、放課後のプレアデスなど、好きな作品はいくらでもあるのだが…………。




ともかくも、見て良かったと心から思える映画だ。そして、多くの人に見てもらいたいと思える映画でもある。作品を通して自分を見つけることがこの映画では説かれていたが、それは自分がアニメを見ているときに思っていることとも通じる。少しでも多くの人がこの映画を見て、その中に自分を見つけられることができれば、それはきっと豊かなことなのだと思う。

2020年度POG振り返りと2021年度POGドラフト

10選記事も途中なのに久々に更新したと思ったら競馬の話です。

 

 

 

POG。ペーパーオーナーゲーム。要はデビュー前の競走馬を各々指名し、その馬が稼ぐ賞金数で勝負をするというものである。基本はダービーまでの一年が期間となる。今日はその日本ダービーがあり、昨年度のPOG期間が締め、そして今年度のPOGが開幕ということで、振り返りと今期の指名馬について備忘録がてら書いていこうと思う。

 

初めにPOGについて少し書くと、自分自身今回で3回目となるのだが、競馬の楽しみのひとつとして間違いなく始めてよかったと思っている。仮想的に馬主を体験できるというものだが、正直競馬を始めて最初の方はあまりよくわかっていなかった2歳戦、クラシックについてより気持ちを入れて見ることができるのが大きい。それに、指名馬を検討する際に血統や種牡馬の勉強をすることで、競馬を見る目が自然に広がっていくのもよかった。懸念点を挙げるとするなら、馬券を買うときにノイズになるというところがあるが。(自分の指名馬を買いたい気持ち、指名馬だからあえて買わず、馬券が外れても指名馬が勝ってうれしいという道を残すパターンも……) 最初はよくわからなくても、とりあえずやってみていい。

 

 

 

 

 

 

2020年度POG振り返り

 

去年指名した馬たちを挙げながら振り返る。指名馬10頭。指名かぶりは毎回抽選。同一種牡馬3頭まで。牡馬→牝馬→牡馬→……の順で指名するが、3巡目は新種牡馬(牡牝縛りなし)でなければならないという縛りありのルールでやった。10巡目は牡牝フリー。

 

1位 レッドベルオーブ(父ディープインパクト×母レッドファンタジア)

5戦2勝 主な戦績:デイリー杯2歳S 優勝朝日杯FS 3着

 

父ディープ、母父 Unbridled's Song の配合がアツいという指南をもとに一位指名。新馬戦こそ敗れたものの、その後未勝利からGⅡデイリー杯を連勝で一位指名としても十分に走ってくれた。皐月賞後の骨折は残念。できればマイル路線に専念して、NHKマイルで沸かせてくれるのを見たかった。

 

 

2位 マオノジーナス(父エピファネイア×母デアリングバード)

5戦0勝

 

ご存じ無敗の三冠牝馬デアリングタクトの全妹。指名時も競合してくじで当てた期待馬だったが、…………全く勝てなかった。新馬戦の3着が最高で、その後は5着→6着→5着→4着。脚はいいものを持ってそうだったのだが。安易にスターホースの下を狙っても走りませんよという教訓を胸に刻んだ。余談だが競合で外した相手はここでサトノレイナスを指名してご存じの通り大活躍となったので、POGにおいてはくじ運の強さが結果につながるわけではないというのも身に染みてわかった。

 

 

3位 レガトゥス(父モーリス×母アドマイヤセプター)※新種牡馬縛り

6戦1勝 主な戦績:黒松賞 3着、クロッカスS 2着

 

走らなかったわけではないけど……枠。未勝利をマイルで勝った後、気性面を考慮されたのか短距離路線に。しかし結局1勝クラスも勝ちきれず。ラストの末脚は爆発的なものを秘めていただけに、短距離で忙しい流れが合っていたとは思えずもどかしかった。素直に千六~千八で使っていれば……というのは素人目のいちゃもんなのだろうか。

 

 

4位 スーパーホープ(父キズナ×母ケンホープ

6戦1勝 主な戦績:デイリー杯2歳S 3着

 

未勝利脱出までに4戦かかったが、デイリー杯3着はうれしい誤算だった。が、正直その後の朝日杯は余計だったような……。ここでケガをしてしまい実質ここでPOGとしては終了。もう少しじっくり見たかった。しかしレッドベルオーブもそうだが、デイリー杯→朝日杯のローテを経験した馬がこうもケガに泣いてしまうとね。デイリー杯の時計がやたらはやかったのも一因あるのかなと思ってしまう。

 

 

5位 パタゴニア(父キズナ×母ライフフォーセール)

4戦1勝

 

キズナ産駒2頭目。君子蘭賞、あやめ賞とも2番人気だったがあえなく馬券外。逃げ切る脚が足りてなかったかな……。

 

 

6位 シャフリヤール(父ディープインパクト×母ドバイマジェスティ

4戦3勝 主な戦績:日本ダービー優勝毎日杯優勝共同通信杯3着

 

文句なし今年のMVP。まさかPOG2年目でダービー馬を指名できるとは。結果的に毎日杯から皐月賞を飛ばしたローテが良かったのかもしれない。ダービーでは乗り替わりだったとはいえ、元々福永が乗ってべた褒めしていた馬でもある。今日のダービーを見て、初めての指名馬ダービー優勝の鞍上ということで福永のこと好きになってしまったかもしれない。最後の直線ではテレビ見ながら「福永ぁーーーーっ!!!!!!」って叫んでしまいましたね。

 

 

 

7位 ドナウエレン(父モーリス×母ドナウブルー

4戦2勝 主な戦績:しゃくなげ賞 1着

 

牝馬が全体的に低調にあって、唯一2勝を挙げたのがこのドナウエレン。未勝利勝ちのあと骨折があったにも関わらず、復帰戦のしゃくなげ賞を楽々勝利するポテンシャルの高さを見せた。短距離路線で開花しそうなので今後が楽しみ。来週の蒲郡特別に登録しているようだが、欲を言えば葵S走ってほしかった。十分勝ち負けになったと思うし。

去年はモーリス産駒が期待が高かったわりに走らず、POGのグループ内でもモーリス産駒に裏切られていたが、個人的にはレガトゥス、ドナウエレンと期待通りとまではいかずとも十分に走ってくれたと感じているので、それほど悪い印象ではない。2年目以降に注目したい。

 

 

8位 ダノンランディ(父ロードカナロア×母インディアナギャル)

2戦0勝

 

全く走らなかった枠。新馬戦18頭立て15着、ダートに移った未勝利戦ではなぜか2番人気に推されるも16頭立て15着で残念ながら登録抹消。コメントのしようがない。そもそもなぜ指名したのかなとも思うけど、ダノンプレミアムの半弟ってとこかな……。

 

 

9位 フェットデメール(父エピファネイア×母ディアデラマドレ

3戦0勝

 

ひそかに期待していたけどこちらも全く走らなかった。父エピファ、母父キンカメの配合がよさそうという中でちょっと穴っぽいところを狙ってみたのだが。母ディアデラマドレ牝馬重賞戦線で活躍し、全姉のクラヴェルもそこそこ走っているので、なんとか開花してほしかったな。

 

 

10位 ヨーホーレイク(父ディープインパクト×母クロウキャニオン)

6戦2勝 主な戦績:紫菊賞 1着、ホープフルS 3着、きさらぎ賞 2着

 

今思えばなぜ10位まで残っていたのか謎枠。期待はしていたが結局善戦マンで終わってしまった。実は今日のダービーでも本命にしていて、追い込みが決まればチャンスはあると思っていたのだが……。最後直線伸びてはいたけど、進路取りにだいぶ手間取った感じだったのがもったいなかった。まあ能力的に勝ち負けはさすがに微妙とは思うけど。それにしてもこの母クロウキャニオンはたしかこれまでヨーホーレイクを入れて産駒12頭全馬が勝ちあがっているはず。突き抜けた成績の仔はいないけど(とはいえ弥生賞勝ちとかいるが)、ここまで安定して勝ち上がれるのはすごい。

 

 

 

という10頭の指名馬。なんといってもシャフリヤールがダービー制覇してくれたので、それだけで完璧だったと言っていいだろう。やはり馬券を当てるよりも大きなうれしさがある。無関係で勝手に指名して楽しんでる側でこれだけうれしいのだから、実際の馬主さんや調教師、騎手などこの馬に関わった人たちの喜びたるやいかばかりかと思う。そういう部分に思いを馳せられるのは、やはりPOGの醍醐味なのかもしれない。

反省点を挙げるとするなら、ディープ産駒以外がパッとしなかったこと、そして牝馬がイマイチ走らなかったことだろうか。特にディープは今年デビューがほぼラストみたいなものなので、ディープ産駒以外で走る馬を指名するのが課題である。一昨年指名馬でも一番走ったのはディープ産駒のサトノフラッグだったし。

 

 

 

 

 

 

 2021年度POGドラフト指名馬

指名馬10頭。同一種牡馬2頭までとなった。牡馬→牝馬→牡馬→……と指名していくのは去年と同じだが、3巡目と4巡目を新種牡馬縛り、そして5巡目と6巡目を「去年の2歳GⅠおよび今年のクラシックGⅠ(NHKマイル含)で掲示板に載った馬の種牡馬禁止(新種牡馬も禁止)」という縛りでやった。具体的にはディープ、キズナ、エピファ、キンカメ、カナロア、ゴルシ、Frankel、ドゥラメンテ、バゴなどが禁止。意図としてはマイナー種牡馬にも目を向けようということだが、結局ハーツクライが人気を集める形になった。ドラフト戦略的には面白かったと思う。

一昨年はいわゆるPOGの赤本を参考にしたら散々で、去年は血統重視のPOG本を参考にしたら一気に成績が上がった。今年は赤本を購入しつつ、血統を重視しながら指名馬を選んだ。といってもまだ血統については全然よくわかってないのだが。というわけで今年の10頭。

 

 

 

牡馬1位 ディーンズリスター(父ディープインパクト×母ラヴズオンリーミー)

主なきょうだい:リアルスティール、ラヴズオンリーユー

 

1位はミーハー指名でディープ。母コンドコマンドが重複するだろうなというのはわかっていたのでここはあえてズラした。あと母コンドコマンドはいかにも走りそうすぎて逆に敬遠してしまったというところもある。父ディープ、母父 Storm Cat は言わずと知れた黄金配合。牡馬ということもあり、兄リアルスティールの果たせなかったクラシック制覇をぜひお願いしたい。

 

 

 

牝馬1位 グランスラムアスク(父ディープ×母ジェニサ)

主なきょうだい:カイザーバローズ

 

2巡目でいきなりディープの弾を使い切ってしまった。どこかでは指名したいと思っていたが思い切って牝馬1位の指名になった。これも父ディープに母父ストキャ。名前もいいね。ディーンズリスターともども矢作厩舎で楽しみは大きい。ちなみにここでできれば次に指名したかった母レディスキッパーが取られた。(しかも重複指名) こればかりは仕方ないので、一本釣りで正解だったと言えるくらいの活躍を期待したい。

 

 

 

種牡馬枠(牡) ローエキスキーズの2019(父シルバーステート×母ローエキスキーズ)

主なきょうだい:カフジヴィオレッタ

 

ディープの後継シルバーステートの仔から。この子も矢作厩舎。矢作先生のコメントがやたらと良く、POG的な注目度はそれほど高くないのかもしれないが、個人的にはかなり期待している。新種牡馬枠がなかったとしてもどこかでは指名していたと思う。ぜひ王道路線で活躍してほしい。

 

 

種牡馬枠(牝) ブルーグラス(父ドレフォン×母シーオブラブ)

主なきょうだい:ワンダフルタウン

 

こちらはドレフォン。ドレフォンは3代父に Storm Cat を持ち、母シーオブラブはディープ産駒。というわけで父ディープ母父ストキャを逆にして一代進ませたような配合になる。コントレイルが父ディープ母母母父ストキャなのでこれの逆さまみたいな感じか。というわけで楽しみな一頭。この父ドレフォン母父ディープは成功の予感があると血統POG攻略本に書いてありました。

 

 

非上位種牡馬枠(牡) レガラール(父モーリス×母ディアデラマドレ) 

主なきょうだい:クラヴェル

 

完全にロマン枠。去年結果を残せなかったディアデラマドレの仔を諦められずに指名。特にディアデラマドレにこだわる理由はないはずなんだけど(現役時代を知っていたわけでもないし)、なんとなく去年のフェットデメールはこれだ!と思っちゃったんですよね。今年はエピファネイアじゃなくてモーリス。不安要素は脚元。すでにソエを発症してしまったらしい……。あとは去年のフェットデメールと同じ武井厩舎という点。去年の反省を活かしてくれれば良いが……。ちなみにそれなりに走っているクラヴェルは安田翔厩舎。

 

 

非上位種牡馬枠(牝) アートハウス(父スクリーンヒーロー×母パールコード

初仔

 

非上位と言いながら、今年のクラシックで結果が出なかったのをいいことにハーツ産駒が指名されていく中、個人的にはちょうどいいところを指名できたとかなり満足。牧場コメントがやたらとよく、「坂路を余裕で1ハロン13秒で上がれるほどのスピードと持久力」があるらしい。ここの枠で活躍馬が出るとしてやったりなので、是非とも期待していきたい。

 

 

牡馬2位 ダンテスビュー(父キングカメハメハ×母クロウキャニオン)

主なきょうだい:キラウエア、カミノタサハラ、ヨーホーレイク

 

ここで3人競合。抽選の末指名することができた。今年もヨーホーレイクでお世話になったクロウキャニオンの仔。ずっとディープをつけていたのだが、今回が初仔以来となるキンカメをつけた仔となる。安定した勝ち上がりだけではなく、ここで一発大きいところをとってほしい。

 

 

牝馬2位 アドマイヤラヴィ(父ロードカナロア×母アドマイヤミヤビ)

初仔

 

ロードカナロア産駒からもここで一頭。カナロアはハーツクライと相性が良いこともあり指名。父カナロア母父ハーツだとトロワゼトワル、ケイデンスコールなど。お母さんアドマイヤミヤビもオークス2着の実績を持ち、クラシック路線で活躍を期待したい。

 

 

牡馬3位 レッドモンレーヴ(父ロードカナロア×母ラストグルーヴ

主なきょうだい:ランフォザローゼス、レッドルレーヴ、カランドゥーラ

 

もう一頭カナロア。こちらは母父ディープ。エアグルーヴの孫にあたる。今までカナロア産駒は相性が悪く指名してもサッパリ走らなかったのだが、産駒全体としては成功していると言っていいのでなんか悔しい。今年はアドマイヤミヤビ、レッドモンレーヴがこの苦手意識を払拭してくれるか。

 

 

牝馬3位 マニカルニカ(父エピファネイア×母シャクンタラー)

初仔

 

サンデーサイレンス4×3をはじめとしてクロスがたくさんで夢がある。血が濃い分体の方はなんとか丈夫に育ってほしいが、爆発力はあるはず。来週いきなりデビュー戦らしいので、その力を見てみたい。はやめに勝ち上がればクラシックに向けても余裕が持てるということもあるし、下位指名ながら指名馬の中での勝ち上がり一番乗りを果たしてほしい。エピファ産駒は去年マオノジーナスとフェットデメールで全然だったが、エフフォーリアのように大当たりも全然出てきているので、密かに楽しみにしていきたい一頭。(来週デビューなのに密かもなにもないが……)

 

 

 

 

 

以上。今年はPOGだけじゃなく馬券の方も冴えていきたいね。

 

 

 

2020年TVアニメ話数単位ベストテン第10位~第6位

明けましておめでとうございます。

 

いつもの。レギュレーションは以下の通り。


①「今年の10本」に選びたい話数を20本選び、これをノミネート作品とする。

②20本の試聴順をなんらかのランダム方式で決定する。(私は毎年あみだくじを利用している)

③試聴順に沿って20本をできるだけ一気に視聴。

④改めて見直した感想、そして初見時の記憶などをもとにノミネート20作品の中から上位10本を選ぶ。そして上位10本については順位をつける。

 

↓2018年の10選記事 (2019年は未完成)

nun-tya-ku.hatenablog.com
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第10位『ネコぱら』第7話「ネコたちのお留守番」(冬)
脚本:土田霞 絵コンテ:森野熊三 演出:阿部雅司 作画監督坂本千代子・小野陽子・尾崎正幸・斉藤亮・佐藤人美

 

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「みなさん、ネコはご存じですよね? 敏感に動くかわいいお耳、感情豊かに揺れるしっぽ。そして、二本足で歩くとっても素敵な生き物。そんなネコがお好きなら、こちらのパティスリーに、ぜひいらしてみてください! とびきりキュートなネコたちが、あなたをお待ちしています!」

『いらっしゃいませ! ラ・ソレイユへようこそ!』

……ネコぱらの魅力はおおよそこの口上に詰まっている。かわいいネコたち(二足歩行)がわちゃわちゃしているのを愛でるという、そんなアニメが面白くたっていい。

7話はお留守番回。マスターも時雨もいない中、台風の夜をネコたちだけで過ごす。まあ、それだけの話だ。途中からネコたちが物語を披露する流れになるのだが、ここのテンポ感がこの回の一番の魅力。泉の女神の話とかランプの魔人の話とか白雪姫とか、とにかくよくある話の登場人物をネコたちにしているだけなのだが、微妙な小ネタが良い感じにしょーもなくてついつい笑ってしまう。なんで白雪姫の話でダチョウ倶楽部のネタが入るんだよ。ネコたちがそれぞれの物語の中でいろんな衣装になってるのもかわいい。

最後の時雨のオチもベタで良い。誰でもわかるベタな物語を使ってテンポよくボケをかまし続けながら、途中のフリを大オチで回収、まるで熟練の漫才を見ているかのよう。アニメというものは何か壮大な物語だったり、とても繊細な心の動きを描いたり、あるいは美麗な作画で魅せたりする、それもたしかに魅力かもしれない。だが、こんな風な言ってしまえばしょーもないネタだけでも、ちゃんと面白いアニメは出来上がる。それが個人的にはうれしかった。こんな話もまた、アニメならではの魅力と言えないだろうか。

 

 

 


第9位『放課後ていぼう日誌』第7話「穴釣り」(夏)

脚本:永井真吾 絵コンテ:舛成孝二 演出:ふじいたかふみ 作画監督:久保茉莉子・上野卓志・平塚知哉・中島大智 総作画監督:熊谷勝弘

 

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美しい堤防の景色と丁寧な釣り描写、そして釣りだけでなく「好きなこと」「やりたいこと」に対する眼差しがとにかく優れていた放課後ていぼう日誌。7話は初心者向けという穴釣りをテーマに、キャラクターの新たな一面の描き方、そしてその優しい対称性が非常に良い回だった。

いきなり穴釣りじゃないシーンの話をして申し訳ないが、この回のキモはBパート。陽渚が夏海の家に行き、一緒に勉強をすることになる。陽渚と夏海は子供のころ一緒に過ごしていたが、中学までは離れ離れだったのを高校で再会したのだった。だから、二人の間にはブランクがあり、それゆえ当然だが、お互いに知らないことがあるのだ。陽渚は夏海が成績が良く、家ではメガネということを知らなかった。夏海は陽渚の手芸繋がりの友達のことを知らなかった。部屋に入るときの、陽渚が足を踏み出してカーペットに乗るカットも良い。お互いを知ることとリンクする、一歩踏み出す描写。

勉強に飽きた夏海は陽渚の作った魚を模した縫い物に手を出す。手芸と釣りの出会いだ。夏海は自分も縫い物をやってみたいと言うが、自分は初心者だから簡単なものをと。それ簡単だよと言う陽渚とどう見ても凝ってるだろと言う夏海。これが釣りに対する陽渚と夏海の逆転になっている。そしてここにAパートの初心者向けという穴釣りがフリになっているわけだ。

また、Aパートでは大野先輩が昔海に落ちた、そしてカナヅチという意外なエピソードも明かされる。知っている人の知らないエピソードも含めてその人なのだ。いろんな新しい面を知って、さらにその人と仲良くなれる。それもまた、Bパートにつながるところである。穴釣りのシーンでは、壁際に意外と魚がいるという描写もあったが、これも身近なところにこそ求めているものがあるということの隠喩だったりするのだろうか。ちょっと読みすぎかな。

他にこの回の魅力としては、いつも通りの陽渚の顔芸(ガラカブを針から外すときのひえ~っ!みたいな顔が良すぎる)はもちろん、冒頭で穴釣りの魅力を早口で語る大野先輩、そして部屋着でメガネの夏海ちゃん、萌え……………………。放課後ていぼう日誌改め放課後萌え萌え日誌、2020年が誇る名作です。

 

 


第8位『社長、バトルの時間です!』第10話「企業戦士」(春)
脚本:猪原健太 絵コンテ:安齋剛文 演出:清水明 作画監督:邱明哲・山本径子・安斉佳恵・桝井一平・鈴木伸一那須野文 総作画監督:渡邊敬介

 

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二人の優しい対称性を描いたという点では、9位の放課後ていぼう日誌7話と通ずるものもあるこのシャチバト10話。前者が陽渚たちが変わっていくことを描いた話だとすれば、こちらはミナトとユトリアが「変わらない」ことを描いた話になっていると言えよう。

社長であるミナトと秘書であるユトリア。その立場の違いの前に、二人は幼馴染である。会社を出てキラクリ集めに向かう二人。そこではユトリアは秘書モードを解いて幼馴染としてミナトに接する。口調もくだけたものに。「やっぱこっちのユトリアの方がいいかも」 ずっと丁寧語だった分、幼馴染モードのユトリアは実際とてもかわいい。

魔獣を倒しながら、二人の昔話。昔はユトリアが社長、ミナトが社員として冒険者ごっこをしていた。そして二人の髪型は、今と逆になっている(!)。この二人の髪型が昔と今で逆になっていることについては特に言及がなされないのだが、個人的にはすごく気に入っている描写で、お互いがお互いになろうとした結果が今の髪型であり、そして今の二人なのだろうなと妄想が膨らむ。

その後ユトリアは熱を出してしまい、ミナトが看病することに。いつもは社長を支える役の秘書=ユトリアを社長=ミナトが看病するという立場の逆転。この二人の立場の逆転だったり対称性というものがこの回では何度も出てくる。前述の昔と今で立場と髪型が違うのもそう。ユトリアのために卵スープを作るミナトと、翌朝ミナトのためにオムレツを作るユトリアもそう。ちなみに朝社員のみんなにツッコまれたときの慌てるリアクションは、二人とも同様の作画で同様のSEだったりする。卵スープを飲んでいるときの丁寧語とくだけた口調の混じったユトリアは、秘書モードでもあり幼馴染モードでもあるのか。その揺らぎがかわいい。

で、そういう立場の逆転とか対称性とかをさんざん描いた上で、この回のハイライトは二人で並んでベッドで語るシーンにある。ここでは二人とも髪を結わえていたものを解き、同じような髪型になる。ユトリアのセリフがすべてだ。「あたしたちって変わらないね。根っこのところは幼馴染のままなんだね」 そして未来の話へ。父親を見つけることができても、今のままでいたい、と。「あらためてよろしくお願いしますね、社長」「うん、こちらこそよろしく」 完璧。

昔と今でいろいろ違っているけれど、それでも二人は変わらない。二人の幼馴染という関係性は、これからも変わらないのだ。この不変性を行為の伴わない(なぜなら二人ともちゃんとした服を着たまま寝ており、起きたときもミナトの服もベッドもなんら乱れていないので)同衾で描いたのは、ものすごい説得力があると思う。

シャチバトのアニメ自体は労働ネタの描写やそもそものストーリーの微妙さなど、そこまで評価の高いものではなかったが、OPED、そして作画の安定感、コンテのキレは高いレベルにあった。その中にあってこの10話はミナトとユトリアのエピソードとして見事。非常に印象的な回となった。

 

 

 

第7位『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』第6話「復讐の猟犬」(秋)
脚本:浦畑達彦 絵コンテ:久保雄介 演出:菅原尚 総作画監督:サトウミチオ・小野田将人 作画監督:牛島希・石山正修・重本和佳子 エフェクト作画監督:岩崎安利・小川隣 メカ作画監督:宝谷幸稔

 

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実は私はストライクウィッチーズシリーズにはこれまでほとんど触れたことがなかった。2019年の発進しますっ!で初めて触れたくらいだ。だが夏クールに2期の再放送で初めてストライクウィッチーズのアニメを見て、こんなに面白いのかとびっくりした。そこで感じたストライクウィッチーズの面白さは、上手にウソをつくこと、そして勢いによる展開の盛り上げ方の上手さである。

RtB6話は、ベルリン奪還のため奇跡的に無傷だったキール軍港の偵察にいったハルトマンとバルクホルンが戦闘機型ネウロイに襲われるところから始まる。501部隊でも随一の実力を誇るハルトマンが撃墜され、バルクホルンは宮藤と服部に連れられ泣く泣く撤退。ハルトマンは一人救助を待ち、501部隊はハルトマン救助を企てるが……。

まず、戦闘機型ネウロイの強さの描写が際立つ。ハルトマンとバルクホルンという実力的にも上位のウィッチをもってしても勝てない速さ。シャーリーの速さをもってしても勝つことはできない。そして変則的な挙動。この動きはガーリー・エアフォースのザイを彷彿とさせる。

バルクホルンはハルトマンを墜とされた悔しさと怒りを胸にがむしゃらにトレーニングをし、一人サウナで汗を流す。これが単にがむしゃらなわけではなく、飛行時の軽さを求めたものであると後でわかるわけだが、……冷静に考えてそんなに意味があるのか?しかも後のシーンでわかるが、パンt……いや失礼ズボンの中に銃を入れたり胸のところにチョコを入れたりして軽量化も何もないのである。だが、音楽や画、そして声の演技の力を使って「なるほど!」と思わせてくれるのがなによりもこのアニメの強みだ。シャーリーに肩を貸して不敵に笑みをたたえるバルクホルンの画の説得力よ。どれだけベタと言われようと、強敵へのリベンジを盛り上げてくれるこの流れには否が応でもテンションが上がるというもの。

決戦シーンは圧巻だ。宮藤も服部もまったく追うことができない速さで戦う二人。しかしそれを見ていたハルトマンはつぶやく。「トゥルーデの方が速い!」果たしてバルクホルンネウロイを撃破。……が、三人は森の中にハルトマンが倒木の下敷きになっているのを見つける。これはハルトマンがネウロイを騙すために設置したものだが(賢い!)、図らずも仲間にも勘違いをさせてしまった。このときのハルトマンの「あーっ!」がかわいい。ここのバルクホルンの悲痛な叫びとハルトマンのしまったー!みたいな顔の対比は、シリアスになりすぎない良い塩梅だ。

ここからはバルクホルンとハルトマンの物語。挿入歌も入って一番の盛り上がりだ。エーリカなしではベルリンを取り返しても意味がないというトゥルーデの熱い告白。チョコの包み紙でモールス信号を送るハルトマンも冷静に考えたらムチャクチャなんだけど、ここも勢いの視聴感が勝つ。銃を捨て、拳でネウロイと渡り合うバルクホルンに服部が叫ぶ「メチャクチャです!」は視聴者の気持ちを代弁していて素晴らしい。二人の連携でネウロイを倒した後の会話も最高。「遅いよー。寝坊した?」「お前と一緒にするな」

無線は壊れていたとウソをつくハルトマン。このウソはバルクホルンに対してというよりも、宮藤と服部に対してという意味合いが強いと思う。冒頭のシーンでの「トゥルーデのことはならな~んでも知ってるよ~」が活きてるんだよな。二人の感情は、二人だけのものだから……。

 

 

 

第6位『継つぐもも』第3話「お騒がせしろう君」(春)
脚本:加藤還一 絵コンテ・演出:岩永大慈 作画監督:横田和彦・柳瀬譲二・森悦史

 

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ギャグ、バトル、そしてエロ。深夜アニメの楽しさを十二分に持ち合わせている『つぐもも』は、世界三大ももの一角をなすとも言われる。(残り二つは麻倉ももと青木百々)

そんなつぐももが3年ぶりのまさかの2期。実は1期のときも10選のノミネート20本の中には入っていたが、惜しくも10選入りならずだったりする。2期になって見事6位で10選入り。リベンジを果たした。……とまあそれはいいとして。

この回はつぐももには珍しく(?)、女同士の感情がぶつかり合いすれ違うエピソードとなっている。水島みつりは同じクラスで幼馴染、美人で勉強も運動もできる真中まなにコンプレックスを抱いていた。まなと短距離走で競うみつりは最近ぐんぐんとタイムを上げてきている。それがまなに勝ちたいあまりあまそぎに手を出した結果だとしろうは指摘するが、実際はまなからみつりに送られた靴があまそぎであり、それによって今まで「遅くさせられていた」のだった。

この回はみつり→まなのほの暗い感情の描写から始まる。親友であり、憧れの人であるまなに勝ちたい。陸上でも、そして恋でも。女と見れば誰にでも声を掛ける軽薄なしろうとの付き合いにまなは苦言を呈するが、みつりは私に負けたのを認めたくないんでしょ!と叫ぶ。しろうは間違ってみつりにラブレターを送ったが、みつりもまたしろうだから付き合ったのではなく、まなに勝ちたかったからOKしたに過ぎなかったのだ。ならばみつりのタイムが早くなったのも、あまそぎの力を借りたのではないか、そんな風な予想が立つ。果たしてみつりはあまそぎを所持していた。

しかし予想は裏切られる。みつり→まなの感情以上に、まな→みつりの感情は大きく、そして歪んでいた。みつりがまなに憧れる以前に、まながみつりに憧れていたのだ。みつりとの友情を続けるため、そしてみつりから愛情を獲得するため、まなはみつりの目標となる存在であり続けることを求めた。あまそぎの力を使ってでも。自らを高めるのではなく、相手を自分より小さな存在のままに閉じ込めるという方法も、歪んでしまった愛の形だ。ここのミスリードがやはり視聴感として気持ちいい。

高架下でのかずやとまなのバトル。まなを止めたのはみつりのそう、キスだった。このキスはつまり、愛の証明に他ならない。ひどいことをされても、裏切られても、みつりはまなを嫌わない。なぜなら、まながみつりに憧れて今があるように、みつりもまなに憧れて今があるのだから。これもまた対称性の話だ。私は対称性の話が好きすぎるのかもしれない……。

このシーン、初見時はまあ抱き着いてビンタくるか!? と思いながら見ていたのだが、一発でキスに行って押し倒しは予想の斜め上で、思わずガッツポーズをしてしまった。さらにこの贅沢なパンチラ。ハイライトとなるシーンに全部突っ込んでいく姿勢は好きだ。ここでみつりは「そういう趣味」はないとはっきり言っている。……が、そのツンデレムーブは萌えが過ぎますよ。

あまそぎを消したことでまなにはすそ返しが発生し、脚が動かなくなってしまう。そしてみつりはあまそぎが消えたことで、今まで抑えられていた分一気に体が成長する(もちろん胸も)。そして巨乳派のしろうは再びみつりに告白するが、当然断られるというオチ。だってもうみつりには、まなに勝たなければいけない理由がないのだから。

まなが最後車椅子になったことで、あるいはみつりの成長が回復したことで、自然みつりとまなの構図は逆転する。しかし二人の間には愛だけがあり、それがしろうの空気の読めない告白によって再確認されるという締めがやはり美しい。まあしろうの在り方が良いとはとても言えない(し劇中でも散々こき下ろされている)のだが、彼の良くも悪くも「変わらなさ」というものを対置することで、まなとみつりの感情の不安定さ、そして再びの友情はビビッドになる。思春期の女の子の感情を、つぐもも"らしい"演出でしっかりと味付けした継つぐもも3話。個人的にもお気に入りの好エピソードだ。

 

 

 

 

 

 

例年通り長くなりそうなので(書き上げるのにもう少し時間がかかりそうなので)、本記事では10位から6位まで。ここまででもなかなかのラインナップだと自負している。

 

 

1月中には5位から1位を書きます……。

 

 

2020年アニメOPED10選

2020年に放映されたTVアニメのOPEDから10選。

OP、EDの数の縛り、アーティスト、アニメタイトルかぶりの縛りも原則なし。

 

 

※アーティスト表記はアニメOPEDクレジット表記準拠。

 

 

 

Shiny Happy Days / 『ネコぱら』OP〈冬〉

歌:ショコラ(CV.八木侑紀) バニラ(CV.佐伯伊織) アズキ(CV.井澤詩織) メイプル(CV.伊藤未来) シナモン(CV.のぐちゆり) ココナツ(CV.水谷麻鈴)

作詞:吉田詩織 作曲:廣瀬祐輝 編曲:久下真音

きらっともっとしゃいにーはっぴーでいず(すぺしゃるでいず)  本日も晴天です(まんてんです)……

 

空のエメラルド / 『22/7』ED〈冬〉

歌:22/7

作詞:秋元康 作曲・編曲:古川貴浩

雲の切れ間に溢れる緑の輝きは 希望と呼ぶには儚い今日らしい……

 

Hurry Love / 『社長、バトルの時間です!』OP〈春〉

歌:和氣あず未

作詞・作曲:俊龍 編曲:Sizuk

スキルよりもスケールとロマンで差をつけろ……

  

aranami / 『波よ聞いてくれ』OP〈春〉

歌:tacica

作詞:猪狩翔一 作曲:猪狩翔一 編曲:tacica 野村陽一郎

今日より明日がどうとか 言ってる内に今日は去って……

 

プラスマイナスゼロの法則 / 『球詠』ED〈春〉

歌:新越谷高校女子野球部 (前田佳織里/天野聡美/野口瑠璃子/橋本鞠衣/永野愛理/北川里奈/富田美憂/宮本侑芽/本泉莉奈/白城なお)

作詞・作曲:麻枝准 編曲:MANYO

プラスマイナスゼロになる そういう仕組みなんです……

 

釣りの世界へ / 『放課後ていぼう日誌』ED〈春・夏〉

歌:海野高校ていぼう部 鶴木陽渚(CV:高尾奏音) 帆高夏海(CV:川井田夏海) 黒岩悠希(CV:篠原侑) 大野真(CV:明坂聡美)

作詞:山田裕介 作曲・編曲:ZAI-ON

まだまだこれから つれないあなたも ロマンロマン求めて 釣りの世界へ……

 

ハミダシモノ / 『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』ED〈夏〉

歌:楠木ともり

作詞:楠木ともり 作曲・編曲:重永亮介

ハミダシモノの声よ響け 震える手を引いてその先へと向かおう……

 

Higher's High / 『戦翼のシグルドリーヴァ』OP〈秋〉

歌:ナナヲアカリ

作詞・作曲・編曲:ナユタセイジ ポエトリー:ナナヲアカリ

高く!飛べる!……

 

あのね。 / 『くまクマ熊ベアー』ED〈秋〉

歌:ユナ(CV:河瀬茉希)

作詞:eNu・戸嶋友祐 作曲:戸嶋友祐 編曲:川田瑠夏

あのねあのね ちょっと聴いて わたしねえやっと気づいたんだ きっとここが守りたい 大事な場所になったんだ……

 

LET'S CLIMB↑ / 『いわかける! -Sport Climbing Girls-』ED〈秋〉

歌:花宮女子クライミング部 (上坂すみれ石川由依鈴木愛奈富田美憂)

作詞:安藤紗々 作曲/編曲:神田ジョン

ここからでしょ!……

 

 

おまけ

2020年アニメ主題歌打線

 

1. Higher's High (指)

2. LET'S CLIMB↑ (右)

3. 空のエメラルド (遊)

4. 釣りの世界へ (中)

5. Hurry Love (三)

6. aranami (左)

7. ハミダシモノ (一)

8. プラスマイナスゼロの法則(二)

9. あのね。 (捕)

P Shiny Happy Days

【未完成記事供養記事】2019年TVアニメ話数単位10選(順位付けあり)

※これは本来2019年の年末あるいは2020年の年始に出すはずだったアニメ話数単位10選記事ですが、微妙に完成させられずに2020年が終わりかけているので、もう完成させないままに書けているところまでで出してしまおうというものになります。
そのため歯抜けになっておりますが、下書き供養だと思っていただければと思います。

具体的に言うと、10位と1位は途中まで、5位は文章以前のメモ書き段階です。
あと本当は全順位に一枚場面画像をつけようと思いましたがそれも中途半端です。

こんなんだけど7位のがけっこう気に入っているのでどうしても出したかった。年末だし一つくらい下書きみたいなブログが挟まっててもいいでしょという気持ちでエイヤッと一年越しに出します。


以下以前に書いたものほぼそのまま↓↓↓


レギュレーションは以下の通り。


①「今年の10本」に選びたい話数を20本選び、これをノミネート作品とする。

②20本の試聴順をなんらかのランダム方式で決定する。(私は毎年あみだくじを利用している)

③試聴順に沿って20本をできるだけ一気に視聴。

④改めて見直した感想、そして初見時の記憶などをもとにノミネート20作品の中から上位10本を選ぶ。そして上位10本については順位をつける。



↓2018年の10選記事

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第10位『私、能力は平均値でって言ったよね!』第7話「たまには休暇って言ったよね!」(秋)
脚本:杉原研二 絵コンテ・演出:荒井省吾 作画監督:小川エリ・今里佳子・服部憲知・大塚八愛




個人的に異世界転生作品で最も刺さった「のうきん」だが、その特性は主人公マイルの世界に対するスタンスにある。前世の記憶を持った彼女が求めたのは無双でも復讐でもなく、「平凡な幸せ」だった。そのために彼女は転生時に「平均値」の能力を神様に求めたのであったが、12話を通して平凡な能力でなくても、平凡な生き方でなくても、「平凡な幸せ」は手に入れられるのだということを描いた。
この7話では久しぶりの休暇を過ごすマイル、そして赤き誓いの4人を通して、マイルがもはや「ぼっち」ではないことを描く。「時間潰しのプロ」「無意味なことこそ気楽にできる」との言に違わず、ジャンピング土下座の練習など無意味な暇つぶしに勤しむマイル。しかし思ったように時間は潰れてくれない。「ぼっちが下手になったのかも……」






第9位『超可動ガール1/6』第9話「死ぬまで愛して ウソまで愛して」(春)
脚本:恵村まお 絵コンテ:久原謙一 演出:藏本穂高 作画監督:藤田正幸



ああ。俺とノーナは夫婦だからな。


2017年の名作アニメ『フレームアームズ・ガール』を彷彿とさせる美少女メカフィギュア作品だが、こちらは主人公が生粋のオタクで、正道の「俺嫁」作品。
この9話では、主人公房伊田春人が歳をとり、真っ白に燃え尽きてしまうという夢を見たノーナが、春人と少しでも多く一緒にいようとウソをついてしまう。人間とメカ少女の恋愛の王道である、片一方が歳をとり老人になってももう片方は昔と変わらない見た目のやつがノーナの夢の中で展開されるが、ボケ老人になろうとしても最新のアニメを追っている春人の生き様に深く憧れる。また、ここの「春人さん、このゲームは昨日クリアしたでしょう」「どうも最近忘れっぽいからのう。おかげで名作が何度も楽しめて、お得じゃのう」のやり取りが100点。
意思を持ち動いてしゃべる美少女フィギュアという非現実的な存在であるノーナが自分についたウソに対して、「世界についたウソじゃない、自分が許すから許されるんだ」という春人のセリフはすなわち、世間で認められることを望むのではなく、二人の間にある世界こそが全てであるという意思表示でもある。「古き良き」オタクの妄想をどこまでも誠実に描いた本作が、男性性を排除したフレームアームズ・ガールより後にアニメ化されたことは、2019年における重要なトピックの一つであったと考えている。




第8位『W'z 《ウィズ》』第10話「DUDDY bUDDY riDe 《ダディ・バディ・ライド》」(冬)
脚本:八薙玉造 絵コンテ:金澤洪充・鈴木信吾 演出:山岸徹一 作画監督:足立翔平・植木理奈・内田孝行・谷圭司・藤坂真衣・古田誠


外連味ある画面作りとイカした劇伴はそのままに、ストーリーとキャラ描写が大幅にパワーアップした『ハンドシェイカー』の続編アニメ。10話は養子であることが明かされるのだが、バイクに乗って話をし、「クソッ、やっぱり今じゃなかった!」までの妙に面白みのある間がクセになる。主人公と養父の関係も、緑とセバの関係も、本当は他人、でも家族同然の関係という意味で相似形だ。
ヒロインとのバトルの中で、武器を捨てて手を繋ぐシーンが美しい。ハンドシェイカーなんだよな……



第7位『ガーリー・エアフォース』第12話「君と飛ぶ空」(冬)
脚本:永井信吾 絵コンテ:小野勝巳 演出:成田功 作画監督:ー



運命のおかげで慧と巡り合えたなら、運命が邪魔したらあなたを見つけられなかったことになる。それは受け入れがたい。


正統派美少女ミリタリー空戦ラノベアニメ。全編にわたって供給されるグリペンをはじめとしたヒロインたちのデフォルメ作画のかわいさと面白さは2019年でもトップクラスだった。
このアニメが何を描いていたかといえば、ザイとアニマという両方とも人間にとって未知の存在を「敵」と「味方」として分けることにどのような信頼性をおけばよいのかということ、そしてその未知の存在たるアニマと人間との相互理解のありようについてであり、SFものとしても見応えあるものになっていた。
さて、このテーマに対して最終話、第12話で出された答えは「全」と「個」であった。ザイは個体を識別することができず、全体として人類を滅ぼしにかかる。それに対しグリペンをはじめとしたアニマには「個」があった。グリペンの名前を言うシーン、そしてグリペンと慧との記憶を辿るシーンは象徴的だ。最終話でザイに飲み込まれてしまったライノは、米軍によって非常に強い制御がかけられていたことが明かされる。ライノの個性だと思われていたものはただそういう挙動になるようプログラムされただけのものであり、「個」の抑圧により「全」に飲み込まれてしまったという結末は上述のザイとアニマの解釈を補強するものとなる。
陰った病室での慧と八千代通の会話はロマンチシズムに溢れていて最高。結局何者かわからないアニマという存在に対して、八千代通は「人間を好きになってもらうしかない」というあやふやで頼りない解決策を示す。しかしそれは、これまでの11話で慧とグリペンが過ごしてきた時間の肯定でもあるのだ。
Aパートのホラーチックな画面作りからBパートグリペンとともに離陸するシーンから空戦シーンへの緩急、外連味あふれる空戦シーンからライノを撃墜して初めて画面に青空が広がる転換も美しい。空戦シーンでのOPテーマの挿入は最終回らしい盛り上がりを生み出しており素晴らしかった。また、ザイとアニマという非人間による空戦ならではのありえない挙動の数々は、その異質性の強調という面もあるし、なにより見ていて気持ちがいい。
個性こそが人間らしさなのだという結論には現代性も垣間見える。また、病院の屋上で手を繋ぐ慧とグリペンの上空に戦闘機がフェードインしてくるラストカットは「いいアニメだったぜ」という狂いなき感想を抱かせてくれる完璧な締めだった。



第6位『ぼくたちは勉強ができない』第12話「天才は時に[X]をともに分かち追懐する」(春)
脚本:雑破業 絵コンテ:難波七 演出:村上勉 作画監督:橋口翔太朗・佐藤弘明・南伸一郎・高橋宏郁・河村涼子・青木真理子・五十子忍

成幸。……好き。大好きだよ、成幸。


武元うるか、……………………………………………萌え!!!!!!!!!!!!!!!!!!
うるか回としては2期8話もかなり良かったが、かつて通っていた中学に忍び込み、夜のプールで二人の時を過ごすシーンがあまりにも萌えだったのでこの回を選出。
何を隠そうわたしは無限に叫んだり登場人物や展開にツッコミを入れながらラブコメアニメを見るのが大好きなのだが、Bパートのうるかに告白の練習をさせる成幸で絶叫が止まらなかった。成幸、アホすぎる。いや天才なんだけど……天才的にアホ。マジで許せねえよなんなんだ唯我成幸。でも成ちゃん好きだ……(情緒不安定)
中学のとき下の名前で呼ぶために練習を重ねたうるかに対し、成幸がうるかの求めに応じて恥ずかしげもなくうるかを下の名前で呼べてしまうところの非対称性も絶叫ポイントである。あーやっぱり唯我成幸許せねえ…………お前な、武元うるかがな、名前をな、それをな、…………馬鹿野郎!!!!!
かつて水泳をやめてしまおうとした中学生のうるかが続けるきっかけを成幸にもらったプールサイドで、うるかはそのときから温めていた恋心を(思わず)口にしてしまう。ラブコメのお約束でその告白は練習としてしか受け止められないのだが、それでも成幸にその告白をすごく良いと思わせたことは事実なんだよな。
また、何かしらの「天才」といえるような才能が自分にないと思っている成幸が放った純粋な「才能」への憧れからくる言葉が、一人の「天才」を救ったという関係は美しい。唯我成幸、持たない者だという自認があるがゆえの持てるものへのリスペクトが本当に出来た人間である。
何はともあれ。アニメ見ながら武元うるかで叫んでるときが2019年で一番楽しかったのでというかなり個人的な選出理由ではあるが、それもまたオタクの個性であるので、ぼく勉12話はわたしの中で2019年第6位である。ていうか中学1年生の武元うるかえっちすぎる。いやマジで黒競泳水着で胸元出てるのえっちすぎるだろ………………………………………………………



第5位『バミューダトライアングル 〜カラフル・パストラーレ〜』第6話「あなたの名前を教えて」(冬)
脚本:西村ジュンジ 絵コンテ:西村純二 演出:菅野幸子 作画監督:平田賢一・西田美弥子・藤田正幸

西村純二監督が脚本と絵コンテを務めた回。

大人たちはそれぞれのことをやっている それぞれに居場所があるということか
二人は大の仲良しなんだね
潮の変化は潮目が変わるということ?
大人たちが集まる フェルマがお店をやっている意味が出てくる
過去から未来へのビデオレター
海流の異変だから見えた
わたしは、ずっとここにいるの?
フェルマの表情
アルディさん 若い子が未来を語る場、未来へつなげていくこと
わたしは、一人じゃない
ラストのハーモニー演出→アクセサリー→マンタの「おれっちにだって若いときはあったんだぜ」




第4位『グランベルム』第11話「たとえさよならが届かなくても」(夏)
脚本:花田十輝 絵コンテ・演出:高島大輔 作画監督:北原大地



自分は新月の魔術によって造られた人形だと知った満月。しかしそれでも満月は、新月にグランベルムで勝って魔術を無くしてほしいと伝える。たとえそれによって自らの存在が消えてしまっても。
この回はグランベルムという物語における救いを提示した回である。たとえなくなったとしても、なくならない。見えなくてもそこにある星のように、存在が消えて、認識できなくなっても、そのすべてをなかったことにはできない。それは救いであり、祈りだ。
2019年で最も感情だった「ミス・ルサンチマン」とも悩んだが、星空がたたえる静かな寂しさと確かな救いの提示には何度見てもホロリと涙を流されてしまう。自分たちの世界にも、自分たちが見えていないだけでなくなってはいない「何か」がもしかしたらそこにあるのかもしれない。コンビニで肉まんを買った帰り道にそんなことをふと思わせてくれる、そんなこの11話を選出した。



第3位『ハイスコアガール』第14話「ROUND14」(秋※)
脚本:イシノアツオ 絵コンテ:山川吉樹 演出:まついひとゆき 作画監督:-
(※初出は3月発売のOVA。ただ秋クールの深夜アニメ放送枠にて特番扱いでもなく放映されていたので、レギュレーション上可とした)



しつこいのは私の方で、跳ね返すのは矢口くんの方なんだけどね!

日高小春と矢口春雄による勝負の回。矢口と付き合うという目的のために貪欲に勝利を求める日高と、ゲームを楽しむ心をどんなときも忘れないハルオの対比が、ゲーム上で繰り広げられる勝負における演出とも相まって非常に効いていた。
アバンでハルオの母は言う。「己の趣味にも真剣になれんやつは何をやってもダメよね」 趣味であるゲームで真剣勝負は繰り広げられる。第一試合、日高はハルオへの恋心という自らの持つ境遇を重ねた右京を使い勝利。しかし第二試合では日高はキャラ性能重視で奇襲をしかけるも、使い慣れていない(思い入れの薄い)キャラばかりをエディットしていたため敗北。勝負は最終戦にもつれ込む。
この時点で、勝利のカギは愛にあることが示唆されている。ニコタマちゃんはハルオにあって日高にないものの存在に気付いていた。ガイルさんの問いかけにハルオは笑ってみせる。それこそが答えだった。脳内にキャラクターが出てきて会話をするということ、それがゲームを愛している証拠でもあり、この回での敗北に本気で悔しい気持ちを覚えた日高は、ラストカットでヴァンパイアハンターのキャラを脳内に映している。すなわち、日高もまた、今回の敗北を通してゲームを心から愛する者となったということなのだ。
さて、最終戦では日高の勝利への執念とハルオの(大野という壁を越えるために)負けられない気持ちがぶつかる。ゲーム上での使用キャラの挙動とプレイヤーの現実での在り方がちょうど鏡映しになっていることを表した、上に引用した日高のセリフは2019年ベストセリフ賞有力候補だ。ひたすらハメ技を決めにかかる日高と、ほんの少しのスキを突いて接近戦にもっていきたいハルオだったが、最終的にはハルオの勝利。勝負の間は日高の視点から描写されており、セリフも日高がほとんどでハルオはあまり多くなかったが、勝負がついた瞬間ハルオは堰を切ったように憎まれ口を叩く。試合中の息詰まるような緊張感からの解放だ。日高は悔し涙を流す。ハルオと付き合えなかったということ、そしてなにより、勝負に負けた自分への不甲斐なさから。
しかし、なぜこうも日高小春という女は魅力的なのだろうか。俺はハルオにキレているが、でも仕方ねえんだよな…… 日高小春、なぜハルオを好きになってしまったんだ……
ところで、今回の選出により個人的に初の同一タイトルから2年連続での10選への選出となった。あくまで年ごとでの選出であり、放送年が違ってさえいれば過去選出とのタイトルかぶりは問題ない。ちなみに来年は邪神ちゃん2期があるため、こちらも同一タイトルから2度目の選出の可能性がある。




第2位『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』第4話「もう終わりだみぃ」(夏)
脚本:加茂靖子 絵コンテ:名取孝浩 演出:上田慎一郎 作画監督:手島典子・薮田裕希


2019年最大の出世作リステ。アニメの出来が抜群に良く、正直どの話数でも選出できそうなポテンシャルがある。7話、9話、11話あたりと悩んだが、KiRaReのメンバーが揃い、3年生二人の「Re:ステージ」を美しく描いた4話を選出。
瑞葉もみい先輩も3年生であり、中学生アイドルの祭典プリズムステージに出場するには残された時間は少ない。しかしそれでも遅すぎることなんてない。ここから始められるのだ。「もう終わりだみぃ」「もう遅いみぃ」というAパートでのみい先輩のセリフ。しかし夕暮れの部室で瑞葉は言う。「遅いことあらへん!」 自らもまたみい先輩と同じようにずっと一人だったと話す部長。「今度は、一緒に」というセリフにすべてがつまっているように、単なる再スタートというだけでなく、一人で夢を見ていたみんなが、今度は一緒に夢を見るのである。それによって見える未来もまた違ってくる。誰でも、いつでもスタートラインに立つことはできて、ただスタートを切る「だけ」なのだ。戻ってやり直すことではなくて、諦めずにやり遂げなければならないということでもなくて、今ここから、もう一度スタートを切ろうという極めて前向きかつどこまでも優しいメッセージ。この作品が伝えていることが、私はとても好きだ。
瑞葉、みい先輩の二人での特訓を経て、みんなの前でいざ特訓の成果を披露!といったところで振り出しに戻っている瑞葉というオチも、ここからがスタートだということを示すものであり見事だ。また、これはさらに言えば二人だけの特訓が二人だけのものになったとも見ることができる。二人は同学年であり、お互いにずっと一人だったという共通項が二人の間にあるならば、二人だけの秘密の時間があったことの肯定はちょっとしたご褒美のようなものだろう。
またこの回の挿入歌といえばFor you For みぃ!とキライキライCЯYだが、キライキライCЯYの反転した「Я」は素直になれない気持ちを表したものらしい。うーん完璧。他にも私服の瑞葉がかわいいとか公園で揺れるかえがかわいいとかかわいいポイントも無限にあるが、やはり「Re:」というこのアニメの神髄の描かれ方が素晴らしかった回であった。



第1位『八月のシンデレラナイン』第8話「夏に向かって」(春)
脚本(シナリオチーム):田中仁・伊藤睦美・吉成郁子・大内珠帆 絵コンテ:稲垣隆行 演出:柳沢隆 作画監督:正金寺直子・西川真人・上田恵理・WONWOO・石川慎亮





太陽に向かって咲く向日葵、夏に向かって駆け抜ける少女たち。毎年向日葵は咲くけれど、すべての向日葵にとってその夏は一度きりなのである。もちろん、すべての球女たちにとっても。
この回、引いてはこの八月のシンデレラナインというアニメの素晴らしさはなんといっても「物語、みたい」という初瀬のセリフに詰まっている。これまでの女子野球の歴史は、そしてこの夏の彼女たちの歩みは「まるで物語みたい」なのだ、しかし、その歴史はこの世界における事実であるし、もちろん彼女たちが今やっていることは彼女たちにとっては厳然たる「今」なのだ。
現実世界の、例えば甲子園での歴史にだって、人々は「物語」を当てはめる。古くは板東-村椿の投げ合いに、あるいは二十四の瞳、新湊旋風、近年では佐賀北、そして早実-駒苫の決勝再試合。それらはすべて「まるで物語」だ。しかしそれらはすべて実際にあったことなのだ。里ヶ浜高校女子野球部の夏はまるで物語のようであるし、実際それは創作物である。しかしそれでも、画面の中で息をする彼女たちにとってその夏は、例えば物語のようでも確かな現実の夏なのである。
物語みたいだけどフィクションではないのだ。









……………………というわけで以上が2019年話数単位ベスト10でした。


2020年は近年では最もアニメを見た一年だったので、これはちゃんと完成させたいという気持ちがある。いやほんとに。いずれにしてもまたノミネート作品決めてあみだくじで順番決めて見るの楽しみなので。この年末の楽しみだけは未来永劫続けたいのです。

爽やかこってり系クライミングアニメ『いわかける!』をぜひ見てほしい

皆さん、今日もアニメ見てますか? この記事では名作溢れる2020年秋クールの中で埋もれそうだけど埋もれてほしくない、私のイチオシアニメ、『いわかける!』をプッシュしたいと思います。

 

 

iwakakeru-anime.com

 

原作はサイコミ連載のマンガ。サイコミでアニメ化作品といえば、2020年冬クールの『群れなせ!シートン学園』があります。

題材はスポーツクライミング。おそらくスポーツクライミングをやったことがある人は少ないと思うので、ジャンルとしては女の子がマイナースポーツに取り組む部活モノと言っていいでしょう。部活モノとしては、架空スポーツであれば『神田川JET GIRLS』や『サークレット・プリンセス』、『蒼の彼方のフォーリズム』などがありますが、実在のマイナースポーツを取り扱ったものとなると、ビーチバレーの『はるかなレシーブ』あたりでしょうか。

 

 

さて、この『いわかける!』ですが、量、質ともに素晴らしく揃っている2020年秋アニメの中では正直地味な方だと思います。放送時間も、話題作の揃った土曜の中で比較的深い時間ということで、他のアニメと比べても見ている人は少ない印象です。

しかし、これが面白い。それも、是非今期アニメと一緒に見てほしい。多彩な今期アニメの中にあって、足りなかったピースとしてきれいにハマる、そんな魅力を持ったアニメだと思います。

 

 

このアニメの魅力、それはタイトルでつけたように、「爽やかこってり」なところにあると思います。スポーツアニメとしての爽やかさ、そして深夜アニメとしてのこってり感。そのマリアージュが我々に深夜アニメというものの面白さを教えてくれるはず。

 

 

 

 

 多彩なキャラがこってり

このアニメの一番の魅力として、私は真っ先にこってりキャラ付けのライバル選手たちを挙げます。見た目からしてわかりやすいキャラもいれば、しゃべり出すことで判明するヤバいキャラもいます。

主人公ちゃんの学校は選手は4人なのですが、この4人と比べても圧倒的に他校のキャラが濃いです。とにかく味付けが濃い。主人公ちゃんはある程度キャラ立ってますが、少なくとも画面での存在感においては他校の濃さが凌駕している。マイナースポーツゆえに、キャラクターからわかりやすく競技特性を掴ませるのは良い手だと思います。

 

 

まずはパッと見でわかりやすいライバルキャラたち。

 

・岩峰一愛 久里川高校

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見ての通りなぜかウサ耳カチューシャを着けています。なぜ着けているのか謎。あと見ての通り他キャラへの絡み方もネットリしてる。ちなみに劇中では最強クラスのキャラで、長いリーチを活かして壁を登っていきます。

 

 

・熊谷千草 久里川高校

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同じく久里川高校。こちらも見ての通りでとにかく上半身の筋肉で壁を登っていくスタイル。ダンベルアニメ出てませんでしたか?

 

 

・大場久怜亜 聖カタルノ女子

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元バレエダンサー。バレエ仕込みのバランス感覚を活かして登っていく。今どきそんな髪の毛内巻きにすることある??? 主人公と過去の因縁があるようで、チアフルーツのムラムラちゃんを彷彿とさせるものがある。

 

 

そして、次に見た目は普通だがしゃべるとマトモじゃない人たち。どちらかというとこっちの方が衝撃度は高いです。

 

・藤田真澄 聖カタルノ女子

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中央の水色髪の人

ぱっと見は普通なんですが、しゃべるとわかる。一言でいうとアホです。4話の登場シーンでは今期を代表する名言「君がそうならばそこをそうさせていただく」を放ちました。何言ってるかわからない? なら4話を見てください。見てもわかりません。語彙力喪失して指示語だけでしゃべっちゃうやつ、現実ならまあたまにあることですが、アニメでこれやるとこんな唯一無二のキャラが生まれてしまうんだな……。ちなみに岩峰さんと並ぶ今作屈指の実力者です。

 

 

・佐藤丸乃 久里川高校

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かわいいですね。ですがこのキャラ、語尾が「やんす」です。

……え。

 

やんす!?!?!?!?!?!?!?!?

 

「どやんす」じゃなく、「~~でやんす」!?!?!?!?!?

 

今日び下っ端キャラでも聞かないぞ……。

みなさんは語尾がやんすの美少女キャラ見たことありますか? 私は初めて見ました。あと、ちなみに一人称は「あっし」です。

 

あっし!?!?!?!?!?!?

 

ライミングスタイルは使いパシリでかき集めたデータを駆使したデータタイプ。そこでそうつなげてくるんだ……。

 

 

他にもCV田村ゆかりのアイドル的選手、ヤンキーの魂を持っているがクライミングは基本に忠実なキャラ、語尾が「~~だにゃ☆」で初心者狩りの精神攻撃が基本のキャラなどがいます。多彩ですね。そして他校のライバル選手ではないですが、みんな大好き銀髪美少女もいます。

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ちなみにファザコン



みんなもお気に入りのキャラを見つけてね!

 

 

 

演出もときにはこってり

 

こってり、というかゼロ年代みたいなレトロなギャグ演出が惜しげもなく披露されるところもこのアニメの魅力です。レトロさのわりに作画自体はちゃんと今風で、よれよれ感がないのもまた不思議な面白さがあります。

 

 

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こういうのが惜しげもなくお出しされます。

 

 

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画面から迸る「ぐぬぬ」の波動。

 

 

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「ε」の口がいとおしい。

 

 

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シューズ作りのために足の形をとっているシーンです。それ以上でも以下でもない。

 

 

 

ご覧になって分かる通り、線や塗りはわりとパキパキしています。のわりにアニメアニメした画面が当たり前のようにちょくちょく出てくるのが、このアニメの大きな魅力の一つだと思います。

 

 

意外?と堅実なスポーツ描写

 このようにアニメアニメした魅力が強いこのアニメですが、スポーツクライミングという競技とそれを通したストーリーの組み立ては意外と堅実です。

1話は導入として主人公がクライミングを初体験、2話でいきなり大会に出て自分の弱点を知る。3話が特訓回で4話でその成果が出る。そして現時点で最新話の5話では大会で各校の選手たちを紹介しながら、主人公の先輩に軸を通した回をやっています。

 

 

まず主人公の笠原好(このみ)ですが、クライミングは初心者なものの、元廃人級のパズルゲーマーであり、壁をパズルに見立てて登るためのルートを瞬時に見抜くことができるという特徴を持っています。

主人公にこうしたキャラを持ってくることで、クライミング=「ファイトォー!いっぱーつ!」みたいななんとなくのイメージをまず振り払っているのは上手い。事実スポーツクライミングは身体能力だけでなく、知力判断力がものを言うスポーツです。まあ、私はやったことありませんが……。

 

 

そして、主人公の先輩、ののちゃんこと杉浦野々華ちゃんを軸にした現在最新話の5話非常に良い回でした。ちゃんとスポーツアニメをやっている。

 

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ののちゃん先輩です。かわいいね。

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ドヤ顔がかわいい。

 

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壁を登ってもかわいい

 

さてこの5話のサブタイトルは「努力と天賦」。特訓の甲斐あって完登(ゴールまで登れること)を果たした好に対して野々華は……。

好が3,4話の特訓によって鍛えたのは体力であり筋力でした。それは特訓によって後天的にでもなんとかなるもの。しかし野々華にとって足りなかったものは、努力ではどうにもならないものでした。 それは身長。スポーツクライミングにとって、身長が高い方が必ずしも有利というわけではなく、小さい方が有利になることもあるようですが、少なくとも彼女にとっては、その身長こそが絶対に超えられない壁となってしまったわけです。

 

スポーツものにおいて「努力と才能」の話は鉄板中の鉄板。その「才能」の中でもわかりやすく、そしてどうにもならないことが決定的な「身長」を軸に据えることで、野々華の悔しさが十二分に描かれた見事な回でした。他校の高身長を活かしたキャラを登場させたり、好の「努力」によって得られた成長を描写したりしているのも上手い構成。努力でどうにかなるものと、努力ではどうにもならないものっていうのがあるんですよね。それでも努力するしかないんだな……。「負けてからが、本当の勝負。」なアニメは名作。試合後の野々華にキャプテンであり友人である四葉幸与(さよ)がかけた言葉も良かった。今さらですが四葉の幸せ与えるってすごい名前だな……。

 

 

そんなわけで、トンチキなキャラがたくさん出てくるだけのアニメではないことが、この5話でハッキリしました。そもそも題材からし「壁を登る」ことがモチーフとして無限に使えるので、アニメ的なストーリー描写には合っているのかもしれません。

 

 

ちなみに主人公の高校のキャラは全部で4人ですが、上記で名前の出なかった上原隼(じゅん)は腹筋がすごいです。1話では人当たりがキツく数々の視聴者にダメージを与えましたが、2話以降はわりとまともで本当に良かった……。

 

 

 

そんなわけで

正直に言うとこういうアニメは放送が終わってから話題になることは少ないし、わざわざ後から見るアニメでもないと思います。だからこそ放送中の今見てほしい!と思い、久しぶりにブログを書きました。一週間に一本こういうアニメがあると……うれしい!という感覚をぜひいろんな人に味わってほしいのです。いろいろ書きましたが、やはり深夜アニメの軽やかさがうれしいアニメです。ご飯を食べながら見るのにちょうどいいタイプのアニメと言ってもいい。

 

あと言うまでもないですが、腋や腹筋、脚や尻などは頻繁に画面に登場しますので、そういうのが好きな方にもおすすめしたい。自分は腹筋が好きです。

 

このアニメ、今時珍しいかなりちゃんとした次回予告があるのも魅力の一つなのですが、次回第6話では好ちゃんが覚醒してお兄様ばりのクソダサスーツに身を包む(イメージ)ようです。絶対楽しい回になること間違いなし!

放送は毎週土曜日26時からテレビ朝日系列全国24局ネット。違法電波MXではない!もちろんdアニメストアなど各種配信サービスでも見れます。

 

 

 

さあみんなでレッツクライム!

 

 

 

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