アイドルコネクトのシナリオを最後まで読みました。

今日は2023年4月20日。初めて自分がアイドルコネクトのシナリオに触れたのは2016年11月22日なので、あれから6年と4か月と29日が経った。アイドルコネクトのメインシナリオを最後まで読んだ。

 

やっと?と言われても返す言葉はない。

 

昨年の夏ごろ、ついにメインシナリオを最後までフルボイスで収録したアプリがリリースされた。自分は何よりも先に読んでしまいたいと思っていたのだ。各チームの第1章第1話から、各章ずつ順繰りに読んでいった。メモリア5章まではすでにリリースされていた部分で、何度も何度も読んでいたシナリオだったから、あの頃の気持ちを思い出すように、そしてあらためて噛みしめるように、読み進めていった。でも6章以降、実際にだんだんと読むペースは落ちていった。

 

 

 

 

自分は、怖かったのだと思う。何よりも自分自身があの頃と同じ熱量を同じコンテンツに注げる自信がないことを、薄々心のどこかで感づいていて、でもそんなことは認められなくて、形だけでもその場に止まることがそのときの自分にできる精一杯だったのかもしれない。そしてそんな気持ちを、自分は「最後まで読んでしまってお話が終わってしまうことがつらい」などという使い古されたフレーズで蓋をして考えないようにしてきた。たぶん、きっと、そうなのだろう。

 

 

でもそれは、恥じるようなことではないとも思っている。残念なことではあるかもしれないが、自然なことだ。それにあの頃の熱量はどう考えても異常で、あの時だったからと言うべきのものだったし、あの時に感じたたくさんのことが全部ホンモノで全部宝物であることは今でも、これからも絶対に変わらないものだ。

 

 

 

 

 

今回初めて読んだアイドルコネクトメインシナリオ後半の章も素晴らしいものだった。

アイコネ一番の魅力であるキャラクター描写は健在で、シナリオの中で彼女たちを取り巻く環境が変わってゆくなかで、彼女たちは一人の人間として、ものを考え、言葉を発していた。「壁にぶつかり、悩み、仲間とともに成長する」といったようなありふれた表現に回収されるものではなかったし、声優さんたちが彼女たちを演じる声はそれをより一層鋭いものにしていた。それでいてどこまでも無邪気に、「アイドル」というものが持つ力であるとか魅力であるとか呪いであるとか祝福であるとかいうようなものを信じていて、やはり『アイドルコネクト』という作品はアイドル賛歌なのだと思った。それはとてもうれしく、きっとその輝きは色褪せないだろう。

 

 

一番うれしかったのはメモリア9章のクライマックス、七瀬さんのセリフ。たとえ待たせてしまうことがあったとしても、プロデューサーが体を壊しても、その分よりももっと多くの笑顔を届けてやればいい、「アイドルにはさ……それができるんだから」

 

 

アイドルには、それができる。できるのだ。そういう職業なのだ。そのことを、かつてアイドルだった七瀬さんの口から聞けたこと、それがたまらなかった。アイドルを目指す女の子が言うのでもない、トップアイドルが言うのでもない、プロデューサーのような存在がそれを言うのでもない。「かつてアイドルであった人」がそう断言したのだ。

 

未来というのは不確定、今というのは不安定、だが過去は変わらない。そのときに感じた気持ちや見た景色、それらは何物の干渉も受けない。だから、かつてアイドルであった人がアイドルという存在を評して「たくさんの人を笑顔にできる」というのであれば、それは間違いなくそうなのだ。それこそが『アイドルコネクト』の言いたかったことなのだと思うし、だからこそアイコネという作品のセンターには春宮空子という女の子がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイドルコネクトで一番好きなキャラは誰か? ずっと結論は出せずにいた。みんなめちゃくちゃ魅力的なんだもの。でも多分今なら徳前七瀬さんと答えるだろう。それは自分があの時から少し年を取ったからだろうか。……なんて言ったら七瀬さんにドヤされるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、あの頃から変わってしまったことはたくさんあった。

 

アイコネのみんなは変わらなくても、現実は時が過ぎていた。冒頭に書いたように自分の熱量はあの頃ほどとは言えなかったし、生活もあの頃とは変わっている。TLも時が経てばそれなりに様変わりするというもの。もっと広く見れば、今やソシャゲでシナリオが良い(非常に良い)というのはあの頃ほど特筆すべきほどのことでもなくなったし、アイドルをめぐる作品もいろいろなものが世に出た。そして彼女たちを演じる声優さんたちのキャリアもそれぞれに進んでいった。

 

あの頃まだ駆け出しだった本渡さんは今や押しも押されもせぬ人気声優に、アイコネで初めて名前を知った芝崎さんや木村さんはそれぞれアイドルマスターシャイニーカラーズ、ウマ娘というビッグコンテンツ(ウマ娘がまさかここまで大きくなるとは当時全く思っていなかったが………………)のキャラクターを抱えている。だが、今でもみんな声優であり続けてくれている。それは当たり前のことではないし、自分にとってはそれはとてもうれしいことだ。

 

 

 

 

アイコネメインシナリオの後半の章でつらかったことがひとつ(とりあえずひとつ)ある。柚木ミユの関西弁がヘタになっていたことだ。

もちろん、柚木ミユは兵庫から東京へやってきて、そりゃあ時が経てばだんだん関西弁も薄まっていくのかもしれない。でもやっぱり、自分がアイコネで最初にビビっときたのは間違いなくあの柚木ミユのとろんとした関西弁だったから、たまーにイントネーションが「東京かぶれ」になっているミユの声を聴くのはつらかった。「苦手なもの:東日本」はいったいどうしたんだよ、なあ…………。方言監修をする人はさすがにいなかったんだろうけれど、そうか、あのイントネーションでも通ってしまうのか、と寂しく感じてしまった。どうしても、どうしたって、それは寂しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを最後まで読んだ後、『Star*Trine』と『青春ハイタッチ』を聴いた。

 

泣くかな、と思ったけれど、涙は出なかった。

 

2017年9月17日、秋葉原ゲーマーズイベントスペースで行われたリリースイベント。あの夜「セピア」は「カラフル」に変わった。

彼女たちの物語を一つの区切りまで見とどけて、果たして「カラフル」は「虹」に変わったのだろうか。

 

 

 

あの時のスタートラインは、間違いなく『アイドルコネクト』という物語のスタートラインだった。今日聴いたその歌詞は、自分自身のスタートラインを強く意識させられた。そうだ、自分はまだスタートラインに立ったままなんじゃないか。あの頃と変わらず優しい歌声は、ほんの少しだけ遠くから聴こえたような気がした。

 

 

 

『青春ハイタッチ』の歌詞には、「暗い暗い帰り道 交差点でふと見上げた夜空は キラキラ瞬きながら輝く 私が見てるよ」というフレーズがある。今日、帰り道この曲を聴きながら見上げた夜空に星は見えなかった。曇っていたのか、都会の空は明るすぎるのか。あのリリイベの翌日、快晴の青空を見ながら涙が止まらなかったことを思い出して、少し感傷的になった。

 

 

 

アイコネという作品はアイドルの力をこんなにも信じているのに、もう彼女たちがステージで歌って踊る姿を見ることはできないんだと思うと、どうしようもなく悔しくなった。私たちがその姿を見ることができたのは7曲。あのリリイベの、あの夜だけだった。彼女たち9人が同じステージで歌って踊っている姿は、このままでは永遠に誰も見ることができない。でもそんなことはよくあることで、一度終わったコンテンツがこんな風に復活してくれたこと自体が普通ならありえないことで、彼らは物語の完結をちゃんと我々まで届けてくれて、それに対して感謝を、そう、感謝をするのだ。

 

感謝をするけれど、でも耐え難いほどにめちゃくちゃ悔しい。本当に心の底から悔しい。

 

 

 

 

 

 

彼女たち9人が同じステージで歌って踊る景色を見ることができたら。彼女たちがステージから届ける歌を聴くことができたら。そのとき我々が見たものも、彼女たちが見たものも、きっと夜空の星なんか見えなくしてしまうくらい輝いているはずだ。この期に及んでまだ自分はそんなことを考えている。いや、考えずにはいられないのだ。自分にとって『アイドルコネクト』とはやはりそういうものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は変わり、今自分は22/7というアイドルグループにハマっている。「デジタル声優アイドル」を謳ってはいるが、自分の認識としては「声優アイドル」ではなく「アイドル」だ。一つ言えることは、自分はここまで強烈にアイドルを(作品やキャラクターとしてのアイドルではなく、アイドルという存在としてのアイドルを)好きになったことはなかったし、これまでの人生で感じたことのない魅力とか喜びみたいなものを彼女たちに見出している。

 

でもきっと今のこの気持ちのどこかには、アイコネという作品に出会ったことで自分の中に生まれた何かがあると思うのだ。アイコネが謳いあげたいろいろのことが自分の中に息づいていて、何の因果か今こうやって現実にアイドルを好きになったとき、それらは実感として再び湧き上がってくる。アイドルはたくさんの、本当にたくさんの笑顔を届けてくれるって、確かにこういうことだよなって。彼女たちは同じグループのメンバーで、もしかしたらライバルかもしれないけれど、きっと友達でもあって。「きれーごと」でも、それを信じていたっていいんじゃないかって。

 

 

そういう風に思ってもいいんじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか、アイドルコネクトが教えてくれたことを、そして自分が実際にファンとしてアイドルを好きになってわかったことを、そうしたいろんなことを混ぜこぜにして、自分なりのアイドル賛歌を誰かに伝えたい。そんなふうなことを、ぼんやりと考えている。

 

 

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