2020年TVアニメ話数単位ベストテン第10位~第6位

明けましておめでとうございます。

 

いつもの。レギュレーションは以下の通り。


①「今年の10本」に選びたい話数を20本選び、これをノミネート作品とする。

②20本の試聴順をなんらかのランダム方式で決定する。(私は毎年あみだくじを利用している)

③試聴順に沿って20本をできるだけ一気に視聴。

④改めて見直した感想、そして初見時の記憶などをもとにノミネート20作品の中から上位10本を選ぶ。そして上位10本については順位をつける。

 

↓2018年の10選記事 (2019年は未完成)

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第10位『ネコぱら』第7話「ネコたちのお留守番」(冬)
脚本:土田霞 絵コンテ:森野熊三 演出:阿部雅司 作画監督坂本千代子・小野陽子・尾崎正幸・斉藤亮・佐藤人美

 

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「みなさん、ネコはご存じですよね? 敏感に動くかわいいお耳、感情豊かに揺れるしっぽ。そして、二本足で歩くとっても素敵な生き物。そんなネコがお好きなら、こちらのパティスリーに、ぜひいらしてみてください! とびきりキュートなネコたちが、あなたをお待ちしています!」

『いらっしゃいませ! ラ・ソレイユへようこそ!』

……ネコぱらの魅力はおおよそこの口上に詰まっている。かわいいネコたち(二足歩行)がわちゃわちゃしているのを愛でるという、そんなアニメが面白くたっていい。

7話はお留守番回。マスターも時雨もいない中、台風の夜をネコたちだけで過ごす。まあ、それだけの話だ。途中からネコたちが物語を披露する流れになるのだが、ここのテンポ感がこの回の一番の魅力。泉の女神の話とかランプの魔人の話とか白雪姫とか、とにかくよくある話の登場人物をネコたちにしているだけなのだが、微妙な小ネタが良い感じにしょーもなくてついつい笑ってしまう。なんで白雪姫の話でダチョウ倶楽部のネタが入るんだよ。ネコたちがそれぞれの物語の中でいろんな衣装になってるのもかわいい。

最後の時雨のオチもベタで良い。誰でもわかるベタな物語を使ってテンポよくボケをかまし続けながら、途中のフリを大オチで回収、まるで熟練の漫才を見ているかのよう。アニメというものは何か壮大な物語だったり、とても繊細な心の動きを描いたり、あるいは美麗な作画で魅せたりする、それもたしかに魅力かもしれない。だが、こんな風な言ってしまえばしょーもないネタだけでも、ちゃんと面白いアニメは出来上がる。それが個人的にはうれしかった。こんな話もまた、アニメならではの魅力と言えないだろうか。

 

 

 


第9位『放課後ていぼう日誌』第7話「穴釣り」(夏)

脚本:永井真吾 絵コンテ:舛成孝二 演出:ふじいたかふみ 作画監督:久保茉莉子・上野卓志・平塚知哉・中島大智 総作画監督:熊谷勝弘

 

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美しい堤防の景色と丁寧な釣り描写、そして釣りだけでなく「好きなこと」「やりたいこと」に対する眼差しがとにかく優れていた放課後ていぼう日誌。7話は初心者向けという穴釣りをテーマに、キャラクターの新たな一面の描き方、そしてその優しい対称性が非常に良い回だった。

いきなり穴釣りじゃないシーンの話をして申し訳ないが、この回のキモはBパート。陽渚が夏海の家に行き、一緒に勉強をすることになる。陽渚と夏海は子供のころ一緒に過ごしていたが、中学までは離れ離れだったのを高校で再会したのだった。だから、二人の間にはブランクがあり、それゆえ当然だが、お互いに知らないことがあるのだ。陽渚は夏海が成績が良く、家ではメガネということを知らなかった。夏海は陽渚の手芸繋がりの友達のことを知らなかった。部屋に入るときの、陽渚が足を踏み出してカーペットに乗るカットも良い。お互いを知ることとリンクする、一歩踏み出す描写。

勉強に飽きた夏海は陽渚の作った魚を模した縫い物に手を出す。手芸と釣りの出会いだ。夏海は自分も縫い物をやってみたいと言うが、自分は初心者だから簡単なものをと。それ簡単だよと言う陽渚とどう見ても凝ってるだろと言う夏海。これが釣りに対する陽渚と夏海の逆転になっている。そしてここにAパートの初心者向けという穴釣りがフリになっているわけだ。

また、Aパートでは大野先輩が昔海に落ちた、そしてカナヅチという意外なエピソードも明かされる。知っている人の知らないエピソードも含めてその人なのだ。いろんな新しい面を知って、さらにその人と仲良くなれる。それもまた、Bパートにつながるところである。穴釣りのシーンでは、壁際に意外と魚がいるという描写もあったが、これも身近なところにこそ求めているものがあるということの隠喩だったりするのだろうか。ちょっと読みすぎかな。

他にこの回の魅力としては、いつも通りの陽渚の顔芸(ガラカブを針から外すときのひえ~っ!みたいな顔が良すぎる)はもちろん、冒頭で穴釣りの魅力を早口で語る大野先輩、そして部屋着でメガネの夏海ちゃん、萌え……………………。放課後ていぼう日誌改め放課後萌え萌え日誌、2020年が誇る名作です。

 

 


第8位『社長、バトルの時間です!』第10話「企業戦士」(春)
脚本:猪原健太 絵コンテ:安齋剛文 演出:清水明 作画監督:邱明哲・山本径子・安斉佳恵・桝井一平・鈴木伸一那須野文 総作画監督:渡邊敬介

 

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二人の優しい対称性を描いたという点では、9位の放課後ていぼう日誌7話と通ずるものもあるこのシャチバト10話。前者が陽渚たちが変わっていくことを描いた話だとすれば、こちらはミナトとユトリアが「変わらない」ことを描いた話になっていると言えよう。

社長であるミナトと秘書であるユトリア。その立場の違いの前に、二人は幼馴染である。会社を出てキラクリ集めに向かう二人。そこではユトリアは秘書モードを解いて幼馴染としてミナトに接する。口調もくだけたものに。「やっぱこっちのユトリアの方がいいかも」 ずっと丁寧語だった分、幼馴染モードのユトリアは実際とてもかわいい。

魔獣を倒しながら、二人の昔話。昔はユトリアが社長、ミナトが社員として冒険者ごっこをしていた。そして二人の髪型は、今と逆になっている(!)。この二人の髪型が昔と今で逆になっていることについては特に言及がなされないのだが、個人的にはすごく気に入っている描写で、お互いがお互いになろうとした結果が今の髪型であり、そして今の二人なのだろうなと妄想が膨らむ。

その後ユトリアは熱を出してしまい、ミナトが看病することに。いつもは社長を支える役の秘書=ユトリアを社長=ミナトが看病するという立場の逆転。この二人の立場の逆転だったり対称性というものがこの回では何度も出てくる。前述の昔と今で立場と髪型が違うのもそう。ユトリアのために卵スープを作るミナトと、翌朝ミナトのためにオムレツを作るユトリアもそう。ちなみに朝社員のみんなにツッコまれたときの慌てるリアクションは、二人とも同様の作画で同様のSEだったりする。卵スープを飲んでいるときの丁寧語とくだけた口調の混じったユトリアは、秘書モードでもあり幼馴染モードでもあるのか。その揺らぎがかわいい。

で、そういう立場の逆転とか対称性とかをさんざん描いた上で、この回のハイライトは二人で並んでベッドで語るシーンにある。ここでは二人とも髪を結わえていたものを解き、同じような髪型になる。ユトリアのセリフがすべてだ。「あたしたちって変わらないね。根っこのところは幼馴染のままなんだね」 そして未来の話へ。父親を見つけることができても、今のままでいたい、と。「あらためてよろしくお願いしますね、社長」「うん、こちらこそよろしく」 完璧。

昔と今でいろいろ違っているけれど、それでも二人は変わらない。二人の幼馴染という関係性は、これからも変わらないのだ。この不変性を行為の伴わない(なぜなら二人ともちゃんとした服を着たまま寝ており、起きたときもミナトの服もベッドもなんら乱れていないので)同衾で描いたのは、ものすごい説得力があると思う。

シャチバトのアニメ自体は労働ネタの描写やそもそものストーリーの微妙さなど、そこまで評価の高いものではなかったが、OPED、そして作画の安定感、コンテのキレは高いレベルにあった。その中にあってこの10話はミナトとユトリアのエピソードとして見事。非常に印象的な回となった。

 

 

 

第7位『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』第6話「復讐の猟犬」(秋)
脚本:浦畑達彦 絵コンテ:久保雄介 演出:菅原尚 総作画監督:サトウミチオ・小野田将人 作画監督:牛島希・石山正修・重本和佳子 エフェクト作画監督:岩崎安利・小川隣 メカ作画監督:宝谷幸稔

 

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実は私はストライクウィッチーズシリーズにはこれまでほとんど触れたことがなかった。2019年の発進しますっ!で初めて触れたくらいだ。だが夏クールに2期の再放送で初めてストライクウィッチーズのアニメを見て、こんなに面白いのかとびっくりした。そこで感じたストライクウィッチーズの面白さは、上手にウソをつくこと、そして勢いによる展開の盛り上げ方の上手さである。

RtB6話は、ベルリン奪還のため奇跡的に無傷だったキール軍港の偵察にいったハルトマンとバルクホルンが戦闘機型ネウロイに襲われるところから始まる。501部隊でも随一の実力を誇るハルトマンが撃墜され、バルクホルンは宮藤と服部に連れられ泣く泣く撤退。ハルトマンは一人救助を待ち、501部隊はハルトマン救助を企てるが……。

まず、戦闘機型ネウロイの強さの描写が際立つ。ハルトマンとバルクホルンという実力的にも上位のウィッチをもってしても勝てない速さ。シャーリーの速さをもってしても勝つことはできない。そして変則的な挙動。この動きはガーリー・エアフォースのザイを彷彿とさせる。

バルクホルンはハルトマンを墜とされた悔しさと怒りを胸にがむしゃらにトレーニングをし、一人サウナで汗を流す。これが単にがむしゃらなわけではなく、飛行時の軽さを求めたものであると後でわかるわけだが、……冷静に考えてそんなに意味があるのか?しかも後のシーンでわかるが、パンt……いや失礼ズボンの中に銃を入れたり胸のところにチョコを入れたりして軽量化も何もないのである。だが、音楽や画、そして声の演技の力を使って「なるほど!」と思わせてくれるのがなによりもこのアニメの強みだ。シャーリーに肩を貸して不敵に笑みをたたえるバルクホルンの画の説得力よ。どれだけベタと言われようと、強敵へのリベンジを盛り上げてくれるこの流れには否が応でもテンションが上がるというもの。

決戦シーンは圧巻だ。宮藤も服部もまったく追うことができない速さで戦う二人。しかしそれを見ていたハルトマンはつぶやく。「トゥルーデの方が速い!」果たしてバルクホルンネウロイを撃破。……が、三人は森の中にハルトマンが倒木の下敷きになっているのを見つける。これはハルトマンがネウロイを騙すために設置したものだが(賢い!)、図らずも仲間にも勘違いをさせてしまった。このときのハルトマンの「あーっ!」がかわいい。ここのバルクホルンの悲痛な叫びとハルトマンのしまったー!みたいな顔の対比は、シリアスになりすぎない良い塩梅だ。

ここからはバルクホルンとハルトマンの物語。挿入歌も入って一番の盛り上がりだ。エーリカなしではベルリンを取り返しても意味がないというトゥルーデの熱い告白。チョコの包み紙でモールス信号を送るハルトマンも冷静に考えたらムチャクチャなんだけど、ここも勢いの視聴感が勝つ。銃を捨て、拳でネウロイと渡り合うバルクホルンに服部が叫ぶ「メチャクチャです!」は視聴者の気持ちを代弁していて素晴らしい。二人の連携でネウロイを倒した後の会話も最高。「遅いよー。寝坊した?」「お前と一緒にするな」

無線は壊れていたとウソをつくハルトマン。このウソはバルクホルンに対してというよりも、宮藤と服部に対してという意味合いが強いと思う。冒頭のシーンでの「トゥルーデのことはならな~んでも知ってるよ~」が活きてるんだよな。二人の感情は、二人だけのものだから……。

 

 

 

第6位『継つぐもも』第3話「お騒がせしろう君」(春)
脚本:加藤還一 絵コンテ・演出:岩永大慈 作画監督:横田和彦・柳瀬譲二・森悦史

 

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ギャグ、バトル、そしてエロ。深夜アニメの楽しさを十二分に持ち合わせている『つぐもも』は、世界三大ももの一角をなすとも言われる。(残り二つは麻倉ももと青木百々)

そんなつぐももが3年ぶりのまさかの2期。実は1期のときも10選のノミネート20本の中には入っていたが、惜しくも10選入りならずだったりする。2期になって見事6位で10選入り。リベンジを果たした。……とまあそれはいいとして。

この回はつぐももには珍しく(?)、女同士の感情がぶつかり合いすれ違うエピソードとなっている。水島みつりは同じクラスで幼馴染、美人で勉強も運動もできる真中まなにコンプレックスを抱いていた。まなと短距離走で競うみつりは最近ぐんぐんとタイムを上げてきている。それがまなに勝ちたいあまりあまそぎに手を出した結果だとしろうは指摘するが、実際はまなからみつりに送られた靴があまそぎであり、それによって今まで「遅くさせられていた」のだった。

この回はみつり→まなのほの暗い感情の描写から始まる。親友であり、憧れの人であるまなに勝ちたい。陸上でも、そして恋でも。女と見れば誰にでも声を掛ける軽薄なしろうとの付き合いにまなは苦言を呈するが、みつりは私に負けたのを認めたくないんでしょ!と叫ぶ。しろうは間違ってみつりにラブレターを送ったが、みつりもまたしろうだから付き合ったのではなく、まなに勝ちたかったからOKしたに過ぎなかったのだ。ならばみつりのタイムが早くなったのも、あまそぎの力を借りたのではないか、そんな風な予想が立つ。果たしてみつりはあまそぎを所持していた。

しかし予想は裏切られる。みつり→まなの感情以上に、まな→みつりの感情は大きく、そして歪んでいた。みつりがまなに憧れる以前に、まながみつりに憧れていたのだ。みつりとの友情を続けるため、そしてみつりから愛情を獲得するため、まなはみつりの目標となる存在であり続けることを求めた。あまそぎの力を使ってでも。自らを高めるのではなく、相手を自分より小さな存在のままに閉じ込めるという方法も、歪んでしまった愛の形だ。ここのミスリードがやはり視聴感として気持ちいい。

高架下でのかずやとまなのバトル。まなを止めたのはみつりのそう、キスだった。このキスはつまり、愛の証明に他ならない。ひどいことをされても、裏切られても、みつりはまなを嫌わない。なぜなら、まながみつりに憧れて今があるように、みつりもまなに憧れて今があるのだから。これもまた対称性の話だ。私は対称性の話が好きすぎるのかもしれない……。

このシーン、初見時はまあ抱き着いてビンタくるか!? と思いながら見ていたのだが、一発でキスに行って押し倒しは予想の斜め上で、思わずガッツポーズをしてしまった。さらにこの贅沢なパンチラ。ハイライトとなるシーンに全部突っ込んでいく姿勢は好きだ。ここでみつりは「そういう趣味」はないとはっきり言っている。……が、そのツンデレムーブは萌えが過ぎますよ。

あまそぎを消したことでまなにはすそ返しが発生し、脚が動かなくなってしまう。そしてみつりはあまそぎが消えたことで、今まで抑えられていた分一気に体が成長する(もちろん胸も)。そして巨乳派のしろうは再びみつりに告白するが、当然断られるというオチ。だってもうみつりには、まなに勝たなければいけない理由がないのだから。

まなが最後車椅子になったことで、あるいはみつりの成長が回復したことで、自然みつりとまなの構図は逆転する。しかし二人の間には愛だけがあり、それがしろうの空気の読めない告白によって再確認されるという締めがやはり美しい。まあしろうの在り方が良いとはとても言えない(し劇中でも散々こき下ろされている)のだが、彼の良くも悪くも「変わらなさ」というものを対置することで、まなとみつりの感情の不安定さ、そして再びの友情はビビッドになる。思春期の女の子の感情を、つぐもも"らしい"演出でしっかりと味付けした継つぐもも3話。個人的にもお気に入りの好エピソードだ。

 

 

 

 

 

 

例年通り長くなりそうなので(書き上げるのにもう少し時間がかかりそうなので)、本記事では10位から6位まで。ここまででもなかなかのラインナップだと自負している。

 

 

1月中には5位から1位を書きます……。