tipToe. 5th ONEMAN LIVE『before the last dawn』──いつか遠い思い出になるこの今を──

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2024年3月22日。場所はVeats Shibuya。アイドルグループtipToe.の5度目のワンマンライブが行われた。

 

前回のワンマンは12月、バンドセットだった。その日は12月とは思えない暖かさだったが、今日は3月も下旬とは思えないほどまだ寒い日だった。まるで季節が先に進むのを拒んでいるかのようで、それは彼女たちにいずれ会えなくなる寂しさを、ほんの少し和らげようとしてくれていたのかもしれない。

 

だがしかし、この日彼女たちははっきりと示した。そう、最後の日をはっきりと示したのだ。『before the last dawn』終わりに向かうこの日のライブで彼女たちに迷いや憂いはなかった。ただ前を見て、今このステージを全力でやり切った。ものすごいライブだった。これまでもtipのライブで衝撃を受けたことは何度もあったけど、今日この日のライブはあまりにも強烈だった。このライブを見ずに終わる人生は、今の自分には考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

tipToe.はいわゆる地下アイドルグループである。現在のメンバーは未波あいり、宮園ゆうか、柚月りん、藍田あらん、小宵めみの5人。メンバーは3年間の所属年限が決まっており、現在のメンバーはtipToe.2期。加入タイミングにバラつきはあるが、今年の6月を目途に全員がtipToe.としての活動を終了する。

 

tipToe.の一番の魅力はなんであろうか。私は「本気」であることだと思う。メンバーはもちろん、運営も、クリエイターも、フロアも、ここまで「本気」の純度が高い空間はそうはないんじゃないか。そしてなぜそこまで本気になれるのかと言えば、理由はいろいろあるだろうが、やはり活動期間が、「終わり」が決まっているからなのだと思う。実際自分も、終わりがあることが初めからわかっているから本気になれた部分がある。多分他のオタクも、そしてメンバーも多かれ少なかれそういうところはあるんじゃないだろうか。

 

今日、家を出る前、テレビでセンバツ高校野球の試合を見ていた。報徳学園愛工大名電。両チームランナーは出しながらもここぞというところで両投手が踏ん張るロースコアの接戦。1-1のまま延長タイブレークに突入。10回の表、犠牲フライの1点にとどまった愛工大名電に対し、その裏報徳学園は押し出しとセンター前のサヨナラタイムリーで2点を奪いサヨナラ勝ち。彼らの試合では、当然彼らの本気がぶつかっていた。彼らが高校球児でいられる期間は約2年半。それが彼らの過ごせる青春の期間だ。

 

 

言うまでもなくtipが定めている3年という年限は学生の3年間を強く意識している。衣装も制服風だ。例えば部活に打ち込むように、例えば友達と何気ない放課後を過ごすように、彼女たちはtipとしての期間を過ごしている。大人になってから我々は3年というスパンで何かをすることがあっただろうか。大人は死にさえしなければ、意外と時の流れにとらわれないで何かをすることはできるように感じている。だが学生にとって「学生でいられる3年間」という期間はあまりにも強固で、泣いても笑っても基本的には動かすことのできないものだ。彼女たちメンバーにとってもそれはたぶんそうで、(しかも彼女たちは高校生を経験しているからなおさら)3年間という期間について、その中で自分ができることについて、そしてステージでのパフォーマンスとして、本気で考えて本気で取り組んでいる、取り組めているのではないかと思う。

 

 

今のtipは、はっきり言って絶頂期だと思う。ステージ、フロア、スタッフ、全てがバッチリと噛み合っていて、ライブでは毎回これ以上ないくらい満足させてくれる。tipに通っていると勘違いしてしまいそうになるが、これは全然当たり前のことではない。毎週どころか週に2回も3回も浴びていいようなレベルではないのだ。実際対バンなどでも、見知らぬオタクがtip楽しかった、良かったと言っているのを聞いたのは一度や二度ではない。でも彼らは往々にしてtipはもう終わってしまうから、とも言っている。それは正直もったいないと思う。このライブを良いと思える素敵な感性があるのなら、その良いライブをこれからも何度も浴びて欲しいし、tipの活動は終わってしまうからといってそこにかけた情熱が無駄になるようなものでは絶対にない。例えば学生時代の思い出がその後の人生でもずっと残っているように、部活の友人との付き合いが大人になってからも続くように、「一緒に青春」をする時間があれば、きっとその青春はこれからの人生をも彩ってくれる。自分はtipに本格的に通うようになってまだ半年しか経っていないが、たぶんこの半年は人生で一番濃い時間だったと思うし、この半年の間の思い出がきっとこれからの人生で死ぬまでずっと宝物になるんだろうなと思う。だからやっぱり、tipに深く入らない理由が「終わってしまうから」なのだとしたら、それはもったいないことだと感じるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日のライブが始まる前、なんだかすごくソワソワドキドキしていた。多分自分以外のオタクもそうで、今日ここで何かものすごいことが起こるんじゃないか、そんな期待と畏れの入り混じったような雰囲気が漂っていたように感じた。

 

 

果たして、今日のライブを浴びた自分は、何か使命感のようなものをもって今この文章を書いている。こんなにもすごいグループだから、自分のように何かを受け取ることができる人はきっとたくさんいるはずで、ずっと三次元のアイドルに興味がなかった自分が今こうなっているように、アイドルオタクという文脈の外からでもこのtipToe.というグループは見て欲しい。そういう勧誘としての文章でもありつつ、でもやはり、今日自分がステージを見て感じたものがあまりにも大きすぎて、文章にしたい、しなければという自分の中の感情が止められないという方が大きい。

 

 

 

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今日のライブのセットリストは上の通り。シャッターチャンスまではアゲアゲ、レゾンデートルからMy Long Prologueの時点でもうだいぶ大変なことになっていた。Cider Aquarium、Letter、そして新曲のblue eyes trip。カッコ良かった。そしてその次の茜からがすごすぎて、本当に動けなかった。ただただ彼女たちの歌を聴いて、ダンスを、表情を見て、そして涙を流すことしかできなかった。アンコールはひたすら楽しいが詰め込まれていた。オタクもメンバーもみんなすごく笑顔で、幸せだった。とても幸せだった。

 

 

今日のライブでは、3月頭から活動を休止していたりんちゃんが一部の曲で参加した。(といっても参加しなかった曲の方が少なかったが) ここ2週間、tipは4人で活動していた。それは決して物足りないステージではなかったが、今日5人のパフォーマンスを見て、りんちゃんのパフォーマンス自体の凄みもそうだが、5人が揃っていることで全員が120%、150%の力を出せているんだなと感じた。今日の曲で言えばやはりレゾンデートルや勿忘草と花雨など、りんちゃんの歌唱──というよりも魂の叫びと言った方がいいだろう──を食らったときは、もう何か言いようがないのだけど心が震わされてしまった。当たり前すぎる当たり前だけど、今の5人のtipToe.は、5人いないとダメなんだと思った。

 

 

あいりは1期からの"tipToe.のオタク"だ。今日のあいりからは、そんな自分が大好きなグループでワンマンライブをやれること、その中で自分がステージに立ってパフォーマンスをできることの喜びみたいなものがすごく伝わってきた。5人の中で最年少でありながらグループの中では一番先輩で、引っ張っていくとか自分が前に出るとかというタイプではないけれど、自分がこのグループのことを一番愛しているのだという揺らがない自信がある。ともすればどこかへ飛んで行ってしまいそうな危うさをはらむこのグループのなかで、あいりがいつもここにいてくれることは、きっとものすごくtipToe.の支えになっているのだろうなと思う。今日、僕らの青のときの照明がとてもきれいで、そこで照らされたあいりが(いつもかわいいのだけど)とても美人で、すごく印象的だった。

 

 

ゆうかはすごく考えてパフォーマンスをするタイプだと思っているけれど、今日は何かすごく良い意味で力が抜けて気持ち良く歌えていたように感じた。それでいて茜などではものすごく気持ちが入っていて、届けたいという気持ちはいつも以上にこちらに伝わってきた。ライブ中のゆうかは自分のオタクへのレスを欠かさなくて、そのときにほんとに全員に配ろうとしているのが自分のライブ中のゆうかの好きなところなんだけど、今日はそういうのに加えて、シンプルにゆうか本人がいつになくライブを楽しんでるなというのがすごく伝わってきて、それがとてもうれしかった。それは表情とか、ライブ中のちょっとした動きとかから伝わってくるんだけど、例えばシャッターチャンスの途中手遊びが入るパートで前の方のオタクともうめちゃくちゃわちゃわちゃしてたのが本当に良かった。ゆうかの楽しいが溢れてよくわからなくなってる姿が本当に愛おしい。

 

 

めみもとにかく今日は気持ちよさそうに歌っていて良かった。やらなきゃが強く出る人だから、今日はりんちゃんがいて5人そろって安心できた面はあると思う。そして何よりアンコール後のめみがずっとニッコニコで、めちゃくちゃ楽しそうでめちゃくちゃかわいかった。シンガーソングトラベラーの2サビ前も久しぶりに「いいだろぉ!」とぶっとい声でやってくれたのもうれしかった。今日みたいな日が彼女の自信になって、いつか揺るぎのない人生の柱になればいいなと思う。

 

 

ただなんといっても今日はあらんちゃんの歌が本当に良かった。My Long Prologueの2Aパートあたりであらんちゃんいつも以上に声出てるなと気付いたけれど、その後もずっと全部良くて、正直今日はかなりあらんちゃんを目で追っていた。それぐらい今日のあらんちゃんは仕上がっていた。先日初披露の新曲スターゲイザーでは2Bがあらんちゃんパートだったのだが、正直なところそこは本来りんちゃんパートなんじゃないかなと思っていた。(初披露から5人でやるのは今日が初めて) でも今日もあらんちゃんがここを歌っていて、そこのあらんちゃんがすごく好きだから、それはなんだかうれしかった。今日ライブが終わった後何人かのオタクに、今日のあらんちゃん歌エグかったと言ったらみんな激しく同意してくれて、そういうのが伝わっているのが本当に良いなと思ったりした。

 

 

 

 

 

このセットリストでいうところのChapter3、茜から始まるところ、そこが自分にとっては本当にものすごかった。たぶん今日、初めて茜でちゃんと泣けたと思う。自分はtipの1期はまったく通っていないし、2期の文脈に乗ってからも日が浅い。茜は良い曲だと思いながらも、「そういう曲」としてどこか少し自分から遠いところにずっとあったような気がする。それが今日は、どういうわけだか真っすぐに刺さってきて、涙が止まらなくなってしまった。それは自分がtipToe.に前よりもどっぷりつかったからだというのもあるだろうし、セトリの流れということもあるだろうし、何よりも彼女たち自身が自分たちの曲としてこの茜を歌っていたから、そしてそれを自分が真っすぐ受け止められたからなんだと思う。茜に刺された、茜で刺されることができたということは、多分自分にとって大きな意味があるんだと思う。

 

アフターグロウ。今日のライブの前、オタクが夕陽の写真をツイッターに上げていた。それを見て、自分は渋谷に向かう電車のなかで、席を立って窓際に立ち、スカイツリーに沈んでいく車窓の夕陽を撮っていた。そしてそのときアフターグロウを聴いていた。ステージはオレンジ色の照明に照らされていた。暖かい色だった。優しい歌声だった。

1番のサビ、『君がくれるその優しさも 心の中にただ焼き付けて』の歌詞。ちょうどそこでゆうかが自分のすぐ前の立ち位置で、この歌詞を聴きながらゆうかがよく自分のことを優しいと言ってくれることを思い返していた。そうしたら『心の中にただ焼き付けて』で大切そうに胸にしまうゆうかの手がとても愛おしく思えて、たまらなくなった。多分この日、自分にとって一番忘れられないのはここになるんだろうな。

 

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Letter、大好きな曲で、どうやら今年に入ってからシンガーソングトラベラーの次に聴いている曲らしい。正直ライブで聴く機会は多くないので、今日この日のセットリストで聴けたのはものすごくうれしかった。前リンワンとの対バンのときに勿忘草と花雨の後にLetterをやり、そのつなぎが自分はすごくしっくりきた。ラスサビの『またいつか会えたとき 君の出した答え聞かせてよ』が大好きで、別れのその後を感じさせるように自分は聴いている。今日は最後の日の発表があったり、セットリスト的にも別れを強く意識させるものだったからこそ、Letterが入っていることに救われているところも自分はあるのだろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日、ついにラストライブのアナウンスがあった。6月24日(月)@Zepp Shinjuku、そして7/21(日)@中野ZEROホールである。6/24は前々からライブの予定だけはスケジュールに入っており、おそらくこの日がラストなんだろうとみんな思っていたと思う。ただ、最後は土日でできるだけ多くの人に来て欲しい、ということもあったらしく、7/21が決まったようだ。思っていたより期間が伸びることは、自分は単純にうれしい。少しでも長い時間を彼女たちと一緒に過ごしたい。それに、そうやって少しでも多くの人に見てもらいたいと運営側も考えて、そうやって動いてくれていることも自分はうれしい。特にここ最近のtipを見ていたら、こんなに素晴らしいグループは絶対に一人でも多くの人に見てもらいたい、一人でも多くの人に届けたいと思うに違いないからだ。

 

 

 

私はtipToe.のファンになってまだ1年も経っていないが、このグループに出会えたことを心から誇りに思うし、一生この時間を大切な思い出として抱えながら生きていくんだろうなと思う。こんなにも自分の人生を豊かにしてくれたものはそうそうないし、今後もそう簡単に出会えるものではないだろう。

自分のようにこのグループからたくさんの幸せを、たくさんの思い出をもらえるはずの人がこの世界にはきっとたくさんいて、その人にtipToe.が届いてほしい、受け取ってほしいと最近は特に強く感じている。残り4ヶ月、もう少ないと感じるかもしれない。でも単純な話現場は毎週あって、何も遅すぎることはない。それにいつであろうと、出会えたときがそのタイミングなのだから、そこから始めることはその人だけの物語になるんだと胸を張ってほしい。自分は去年の今頃TLのフォロワーがいつの間にかアイドル(小宵めみ)にドハマりしているのを見て興味を持ち、そこからtipに入っていった。そうしたら今こんなに幸せな時間を過ごせていて、そのフォロワーにはすごく感謝しているし、多分一生感謝し続けると思う。なぜならtipと過ごした思い出は、一生の宝箱にしまわれるものだから。感謝されたいわけではもちろんないけれど、自分がオタクをやっているのを見て興味を持ってくれたものに自分のフォロワーが自分と同じくらいドハマりしてくれたら、多分自分がめちゃくちゃ気持ちいいと思うんだよな。そんな気持ちになりたいという不純な動機も添えて、この文章を読んだあなたにtipToe.を見て欲しい。

 

 

 

 

 

「みんなで青春しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

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