リステDDこと、アニメ『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』が最終回を迎えた。テン年代のアニメの中でもひときわ輝く名作でったし、少なくともアイドルアニメとしては間違いなく最高の出来だったと言える。
リステというコンテンツ、そしてこのリステアニメのテーマは「再起」と「夢」だ。リステアニメの何が素晴らしかったかといえば、ひとつはこのテーマにどこまでも寄り添った作劇、さらに外せないことは「ステージ」と「曲」「音楽」を用いて(「曲」には「歌詞」も含まれる)言葉よりも雄弁にそれを「見せた」ことだと思う。
「再起」と「夢」つまり「Re:」と「ドリーム」である。
もう一度、何度でも。その通りに、アニメでは印象的なシーンや印象的な場所が何度も登場する。それは単なる巻き戻しと再生ではない。それらはその場面その場面でそれぞれに意味を持ち、そしてそれは次につながっている。一番は高尾校内で彼女たちが何度もライブを行った「記念の碑」だろう。最初は舞菜と紗由のライブが行われ、それはかえを、香澄を、そしてみいを謡舞踊部に呼び込んだ。次には紗由の母親に夢を認めさせた。そして11話では部長も同じ制服で6人で『OvertuRe:』を歌い、決勝へ臨む。それらはすべて同じステージで行われたが、すべて違う意味を持つ。
こうした構成上の効果的なリフレインは、各キャラクターの持つ「再起」というバックボーンを美しく響かせる。「Re:スタート」を切るKiRaReの6人を描くにあたって、ひたすらに真摯にこうした作劇を用いたことの効用は計り知れない。単なる繰り返しではなく(それは再度の挫折を意味してしまう)それぞれの「再演」がそれぞれに意味を持っていることが大切なのだ。リステアニメの場合、「みんなと一緒」ということがそれに当たる。「同じ空を見上げてる 君と同じ夢目指してる」なんだよな。つくづく曲作りと使い方が上手い。
そこで「夢」の話に移りたいのだが、一般的なことを言えば夢に挫折はつきものである。挫折を乗り越えて夢を叶えた人、あるいは夢を諦めた人。いずれにしても、夢を叶えるまでに挫折を一切経験しない人間はおそらくいないだろう。ここに「夢」と「再起」は切っても切れない関係になる。夢を諦めないでというメッセージは巷に溢れており、それはプレッシャーにもなるし、すでに諦めてしまった人に対して抜けることのない棘となる。しかしリステが投げかけるメッセージは「もう一度」である。つまずくこともある、諦めてしまったこともあるだろう。それでも何度でもスタートラインに立ち直せばいいんだというこの作品が伝えていることは、どんな言葉よりも優しいと私は思う。
「乗り遅れたあの夢も 間に合うよもう一度 次のバスが来なくても ひとりひとつ違う時刻表 だから何度も何度も何度も思い出して」
この歌詞の「思い出して」は『リメンバーズ!』のサビの歌詞「思い出して胸の奥に忘れた 君の大好きは どんな夢を見たの? どんな夢を見ても…!」を受けていると勝手に思っている。ちなみに『リメンバーズ!』は間奏で各キャラクターが好きなものを言うパートがあり、アニメのCM「さーてお待ちかねのCMタイムやー!」の元ネタでもある。私がリステ曲で一番好きな曲の一つだ。
(これは余談だが、『リメンバーズ!』の作詞を担当された仰木日向さんの楽曲は4曲あり、いずれもアニメには使用されなかった。1stアルバムの中では作詞した曲数がいちばん多かったが、最近の曲では作詞に名前を見ることはなく、おそらくそういう関係もあってアニメでは使われなかったのだろうと思われる。個人的には仰木さんの詩は好きだったのでまた聴きたいと思っているのだが……)
さて、ここまで一応リステアニメがすごかったよということを言ったところで(もっとちゃんとした文章はいろんな方が書かれていることだろう)、あとは自分の感情について書けるだけのことをここで書いておきたいと思う。
自分がリステと出会ったのは『宣誓センセーション』からだった。一聴してなんじゃこのゴキゲンなナンバーはと思ったことを覚えている。それから他の曲も聴いていき、その打率と長打力の高さに舌を巻いた。だいたいのオタクはそうなのかもしれないが、特に『キライキライCRY』と『ク・ルリラビー』は何度も聴いた。アルバムではその2曲の間に『君に贈るAngel Yell』があるため必然的にそれもよく聴いた。ステラマリスでは『Secret Dream』が初期曲の中では抜群に好きになった。
ともあれ、こんな素晴らしい楽曲が生で聞けるライブがあると知り、チケットを手に入れた。2ndライブである。個人的にはアイドルコネクトで自分が好きな曲をライブで聴くことができることの喜びと聴くことのできない悲しみを体に刻み付けられたので(リステに出会ったのはあのリリイベの数ヶ月後だった)、こういう機会は逃すまいという気持ちが強かったのを覚えている。
ライブはとにかく楽しかった。好きな曲、聴きたい曲をすべて聴くことができた(全曲やったのだから当たり前だが)わけで、こんなに幸せなことはないと涙を流した。
アニメ化が発表されたのはこのライブの中での出来事だった。キャストの6人はもちろん、椿本Pも泣いていた。正直に言えば自分は全然ピンときていなかった。嬉しいという感情でもなかった。自分はリステを物語としてではなく、楽曲としてしか見ていなかったからなのだろう。今思えば不誠実なオタクだと思う。覚えていることといえば、アニメ化決定が発表されてそのまま歌われた『367Days』の最後の歌詞で「スタートライン」という言葉が入っていて「お前もか!!!」と思ったことである(アイコネの最後にリリースされた曲である全体曲のタイトルが『Star*Trine』だったことから「スタートライン」という言葉自体に過剰に反応するオタクになっていたのだ)。
で、である。そんな過度に期待することのなかったリステアニメだが、やはりなんだかんだ言って放送が近づけば気になってくる。本当の最初はショートアニメかとも思っていた(ドリームデイズ♪ってところからなんとなくそれっぽく思えたのだ)が、ちゃんと30分アニメと知り、まあそれでも期待半分不安半分といったところだった。間違いないこととして、アニメ化に際して新曲が聴けるということは心から楽しみにしていた。しかし、放送前のPVを見て一転、自分はリステに全ベットを決めた。
ミライkeyノートを踊る舞菜紗由のアニメーションが良かったのももちろんあったが、決め手となったのはPVのこのカットである。
言葉で説明するのは難しいが、何はともあれこのカットを見た瞬間リステアニメに対する気持ちは期待と信頼100%になったのである。
アニメが始まってからはもう周知のとおりである。正直ここまで素晴らしいアニメになるとは思っていなかったし、何より嬉しいのはこの素晴らしいアニメがたくさんの人に見られて評価されたということだ。こういう言い方は陳腐なのかもしれないが、これだけのアニメという作品をもって「報われた」ことが本当に嬉しい。
というところで最初に散々言っていた「再起」と「夢」の話に戻りたい。
リステのアニメ化。その発表のときKiRaReのキャストのみなさんは全員泣いていた。声優という職業は彼女たちにとって「夢」であっただろうし、そのうえでアニメで主演を張るということもまた「夢」だっただろう。でも、その「夢」にたどり着くまでにはおそらくいろんなことがあったのだろうと思う。6人のうち、鬼頭さんと田澤さん以外は主演はおろかほとんどアニメ出演すらないような方である。アニメ発表時でリステプロジェクトが始まって丸3年が経っているわけで、失礼を承知で言えば売れない声優(もちろんアニメ出演は声優の仕事のひとつでしかないが)を3年やるということがどういうことかである。
それでも彼女たちは「夢」の一つを叶えることができたのだ。諦めてしまっても、もう一度、何度でも。今後、彼女たち(それはキャラクターたちも同じである)が壁にぶつかっても、このリステというコンテンツがあったということが、素晴らしいアニメが作られたということが、彼女たちの人生にとってどれだけ意味があるかということなのである。そして、このメッセージはたくさんの曲として今後も残っていくのである。Re:ステージ!という物語はこの展開そのものをもって初めて完成するのかもしれない。つくづくコンテンツは生き物だと思う。クリエイターがいて、表現者がいて、そしてファンがいて、それはぐるぐると回っているかのようだ。
一介のオタクが想いを馳せるには少し書きすぎたかもしれない。それでも、リステというコンテンツにはそれだけの力がある、いやむしろこれだけのアニメが作られて、その力がないなんてウソだと思う。
最終話が終わり、2ndライブの円盤を流しながら言いたいこともまとまらないままに書いてしまったのがこの文章である。私はリステのオタクとしては大したことはないし(ずっと読んでいなかったリステップのストーリーをやっと読むことができるので読みます)、コンテンツを語るなんておこがましいのだけれど、ともかくアニメのオタクとして、まがりなりにも追っているコンテンツからこれだけの出来のアニメを見せられて嬉しいという気持ちで筆をとった次第である。
「輝け私たち いつまででも どこまででも」