劇場版ハイスクール・フリート、全部詰め欲張り感想

 

 

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劇場版ハイスクール・フリートを観た。2016年のTVシリーズ、2017年のOVAを経て2018年4月に発表された劇場版。そこから2年、TVシリーズから4年、パーフェクトにはいふりな劇場版が航海をはじめた。

 

初見時の感想は、「ああ、俺はこの日のために生きてきたんだ、俺のインターネットはこの日のためにあったんだ」というものだった。大げさすぎるかもしれないが、でも確かにそう思ってしまったので仕方がない。

この映画にははいふりの全てがあり、逆にはいふり以外のものは一切ない。俺たちが4年近くにわたってかかずらかってきた「はいふり」が、パーフェクトに「はいふり」だとしか言えない劇場版を出してくれたことにうれしさが溢れている。とにかく良かったところが数えきれないほどたくさんあるので、とりとめもなくそれらを書き連ねていこうと思う。

 

ところではいふりという作品は、はいふりを知っていれば知っているほど面白いし楽しく、知れば知るほど好きになれてしまう。そのためのツールはいろんなものがあり、主なものとして

はいふりカメラ、漫画版はいふり(阿部かなり先生)、アニメ『ハイスクール・フリート』、「はいふり言えるかな」(ファンの非公式ページ)、「ローレライの乙女たち」(槌井先生によるドイツ艦艇組のスピンオフ漫画)、「ハイスクール・フリート いんたーばるっ」(姫ノ木あく先生による小説版はいふり)、そして脈絡なく乱発される現実世界でのコラボイベント、ツイッターのオタクたちの反応など……

それらすべてが「はいふり」のためにあるといっても過言ではない。我々もまた、はいふりの一部なのだ。

 

 

 

以下、内容にがっつり触れつつ感想を記していきたい。「それそれ!」と思っていただいたり、次に観るときに注目していただいたり、あるいは「俺はここが良かった!」というところを教えていただいたりするとうれしい。

 

 

 

 

 

晴風のみんなが活躍していてハッピー!

船は艦長だけでは動かせない。各場所に配置されたそれぞれのスペシャリストがいるから動くことができるし活躍することができる。序盤の陸上赤道祭(歓迎祭のことです)や競闘遊戯会、終盤の晴風が要塞に侵入してからの戦闘シーンなど、すべてのキャラクターに見せ場があった。

砲雷科の焼き鳥?屋台。三角巾をしている小笠原、武田、日置がかわいい。テントにぶらさがっているメニューに「ジビエ」とあったと思うが、小笠原の好きな食べ物が馬肉、武田の好きな食べ物がイノシシ肉、日置の好きな食べ物がシカ肉であることを踏まえている。この屋台の横で砲術長の立石と水雷長の西崎がコントやるの、"正解"なんだよなあ~。

とんかつ方丈のシーン。マッチの映画を観に行く等松を送り出すときにくるくる回るみなみさんがかわいい。

「仁義ある晴風」上映シーン。売り子をやる内田かわいすぎる。マッチの活躍シーン、俺たちには映してくれなかったね……

青木が描いた晴風メンバーたちのえっちな本読みたすぎる。

風呂といえば機関科。伊勢の入浴シーンでガッツポーズしちゃった。

障害物レースでちゃんと航海科が乗ってたのが当たり前だけど良かった。考えごとをして魚雷を見落としたましろをフォローする山下と勝田のところ好き。キリッとした顔で操舵する知床も。

なんか頭に風船つけてチャンバラするやつ始まってガッツポーズせんオタクおるか?マッチと万里小路に枚数費やしまくってるの単純にうれしい~ってなる。「じゃあこれもありってことね!」とチャンバラ捨てて相手を海に放り投げる黒木むちゃくちゃすぎて爆笑した。これは絶対にあのステージと水着のせいなんだけどどことなく競女!!!!!!!!を思い出してしまった。あと一番好きなのはマッチと万里小路がなんか謎の必殺技っぽいのを繰り出したときに「あ、あれは!」という反応をする内田と解説をはじめる山下。山下の目が見開いて赤い瞳が見えるのが最高すぎる。ましろの「は?」もめちゃくちゃ良い。

図上演習で「口八丁手八丁だね……」とあまりにも的外れなことを言い出す駿河のシーンが好きすぎる。逆にどうしたらあそこで口八丁手八丁と言わせることを思いつくのか。駿河留奈最大の見せ場と言っていい。ダウジングする八木も良かった。

 

出航シーンはやはり上手くなった万里小路のラッパだろう。

新料理の開発に余念がなかったあっちゃんが「肉巻きミルフィーユカツおにぎり」なるかなり美味しそうなものを作っていたのが良かった。食べたいもんな。

黒木がましろに食事を持っていくシーンで「悩んでるなら私に相談して」って耳打ちするシーン笑顔になってしまう。蚊帳の外の黒木ちょっとかわいそうだけど、黒木には柳原がいるから……

八木が不審なノイズをキャッチするやつもおっ、となったが、結果としてあまり情報が活かされなかった感があるのは少し残念。

染色弾の水しぶきに飛び込むシーンで「弾着が近すぎます!」と叫ぶ野間がかなり好き。突入のときに見張り室を失ったりけっこう散々な目にあってるんだよな。

爆雷で砲台を黙らせるシーンめちゃくちゃ好き。これ系の作戦で和住と青木が駆り出されるの本当に好きなんだよな。和住と青木が「まだー!?」と言ってるのに対して等松がタイミング図ってカウントダウンしてるのが良くて、和住は数学が苦手なんだけど等松は主計長なだけあって数学がめちゃくちゃ得意で、計算は等松がやったんだろうなと想像がつく。TV版で弾を弾で撃ったタマちゃんなら爆雷を完璧なタイミングで撃って目標まで飛ばすのもできるだろうなというのがある。ところでこれ砲台無視してまっすぐ次に進んじゃダメだったんですか?

左右砲台を撃つために常人離れした聴覚を発揮する万里小路。「砲台さん」って言ってほしかった気持ちもある。

ついに魚雷が撃ててゴキゲンの西崎。明乃の静かな「発砲を許可します」のやつも良かった。明乃、けっこうガンガン撃たせるんだよな。

ラジコンで動く魚雷を操作してハイになる知床、萌えだな……。このとき代わりに勝田が操舵してるのがめっちゃ良くて、勝田の号令聴けたのがうれしかった。ところであれってあんなに威力あるんですか?

ラストの脱出シーンはまた後述するが、エアバッグに包まれたましろをキャッチするのがTVシリーズ「機雷でピンチ!」の回でエアバッグの中助けを待っていた姫路と松永だったのマジで良かった。黒木、不憫。「私が行きます!」って言った1秒後にスキッパーになんかドラム缶(爆雷?)載せて突っ込んでるましろ、あまりにも速すぎて笑ってしまう。

 

 

新キャラがわからなくてピンチ!

TVシリーズから新たに加わった新キャラとして、スーの他に大和艦長:宮里十海、大和副長:能村進愛信濃艦長:阿部亜澄信濃副長:河野燕紀伊艦長:千葉沙千帆紀伊副長:野際啓子、そしてアプリから加わった時津風艦長:榊原つむぎ時津風副長:永澤君江天津風艦長:高橋千華天津風副長:山辺あゆみといった面々が登場する。

そして彼女たちはもちろん、スーを除いて特に劇中でキャラ説明もなくちょこっとしゃべるくらいしか出番がない。一回観ただけでは名前を覚えることすら不可能だろう。だがしかしこれは、TVシリーズを観ていたときに感じた「キャラの名前全然覚えられないんだが……」という感覚と同じなのである。大和型各艦の艦長と副長ははいふり手帳からプロフィールが見られ、名前はもちろんあだ名、身長や血液型、好きな言葉に至るまで当然すべて晴風メンバーと同じように載っている。つまり、キャラを覚えてからもう一度観れば、あのはいふりが「理解った」ときの感覚をもう一度味わうことができるのだ。時津風天津風の面々は艦隊バトルでピンチ!の方をやっていくことで覚えられるだろう。もちろんアプリの方の公式ページにプロフィールもある。

新キャラたちの中だと私は「のむさん」こと能村進愛と「サニー」こと千葉沙千帆が好きだ。能村はクールそうな見た目とやたらかっこいい服装からバリバリの三河弁がめちゃくちゃ萌え。千葉はポジティブで明るいところが好き。「あず社長」こと阿部亜澄は働きたがり、働かせたがりなところがNGだが、「あず社長」というニックネームがかわいすぎるので名前を呼びたくなる度はナンバーワンである。ちなみに3000円の方のパンフレットについてくるドラマCDで6人ともたくさんしゃべっているので聴かれたし。

 

 

美しい画でハッピー!

作画のことが言われる劇場版ハイスクール・フリートだが、たしかに終盤の作画には劇場版の水準に達していないものが多々見受けられるものの、全編を通して決めるべきカットに繰り出される美しい画は非常に良かった。

例えば光ったのは口元に寄せたカットで使われた、唇に薄いピンク色を乗せるもの。目元を映さないことも合わさって、キャラの感情に想像の幅を生む良いカットだと思う。

他には図上演習決勝戦で明乃とましろが向かい合うシーン。明るい光が二人を映し出すのが美しく、観客はたくさんいるけれど、あそこがあの二人だけの空間なんだと印象づける。

一番好きなのはラストシーンだ。朝の陽を背に立つましろがあまりに美しくかっこよく、この映画はやはり宗谷ましろの物語だったんだなと納得させられるだけのものがある。半泣きの黒木のカットから朝陽を背に微笑むましろのカットに移るので、あまりにましろがかっこよくて笑ってしまう。そこからのましろと明乃の会話もまた、二人だけの空間という感じがあり非常に良い。

 

こういった美しい「絵画のような」画は例えばTVシリーズでは明乃がヴィルヘルミーナを助けるシーンなんかで見ることができる。はいふりを観賞するにあたって、この美しい画というものに関してはぜひとも注目して観てほしいと思う。

 

 

えっちなシーンでピンチ!

序盤の入浴シーン、女湯ののれんが映ったくらいまでは「おっ、しょっぱなから来ましたね~」くらいの気持ちだったんだけど、明乃とましろの風呂場でのシーンを観ていたらさすがにえっちすぎて困惑してしまった。これが、これが劇場版になるということか……と得心したのが印象に残っている。上でも書いたが、入浴シーンに機関科がちゃんといたのは安心した。伊勢のおっぱいもうちょっと見たかった。

 

あと、競闘遊戯会で水着に上のジャージだけ羽織るやつがめちゃくちゃえっちで最高だった。勝田とか山下とかあんまりそういうえっちな格好するイメージないような気がするけど、そういうキャラが当たり前の顔して(実際劇中では普通のことなんだけど)ああいう格好をしているとこう、うれしくなってしまうな……。あとたしか内田だけ障害物レースのときジャージの前を全開にしてて、内田、お前は……という気持ちになった。

 

関係ないかもしれないが宗谷真冬が潜入するシーンで「お前そんなミニのタイトスカートで潜入するの!?」と思ったらマジであの格好のまま海賊たちをボコボコにしていて笑ってしまった。キック系の技が多くてタイツがちょっとえっちだったね……。

 

 

海の仲間は家族でハッピー!

「海の仲間は家族」最初はなんじゃそりゃと思ったものだが、それこそがはいふりという物語の軸であり柱だった。特にこの劇場版ではそのテーマが色濃く出ていた。

艦長として「船のお父さん」を目指した明乃。そしてそれを支える副長であるましろは「お母さん」である。そのことはテントで野宿するシーンでスーがましろに「ママ……」と寝ぼけるシーンで明示的に示唆される。ここではスーを娘とした疑似家族(最小単位としての家族)の様子が展開されているのだが、さらにこのシーンではましろの回想が挿入され、ましろもまた幼い子供であったことが示されている。ここはいろいろな読み方ができると思うのだが、わたしはこれを「家族と未来」のシーンと読みたい。父と母がいるから子供が生まれ(実際は子供が生まれるから父と母になるとも言えるが)、その子供がまた成長して父や母となる。冒頭、歓迎祭にはしゃぐ子供を見て昔を懐かしむ明乃ともえかのシーンがあったが、それもまた未来への展望を感じさせるものである。「子供=未来」とそれを守る存在としての「父親・母親=ブルーマーメイド」という図式を立てるのは、多少乱暴だがそう外れてもいないと思う。

このあたりはまだ整理できていないところだが、このテーマにおいて見るべきは、一族でブルーマーメイドである宗谷家のライン、そして海難事故で親を失った明乃、もえかのライン(真霜ともえかが伝説のブルーマーメイドであったもえかの母親について話すシーンはかなり印象的である)があり、そして父親が行方不明、母親が病気で単身日本に乗り込んできたスーが劇場版ではこれを束ねる。

スーが「一緒に寝て一緒にご飯を食べたのならファミリー」だとましろに言うシーンがあるが、まさに「同じ釜の飯を食う」関係ということである。そういう意味においてスーが競闘遊戯会のお昼休みに晴風メンバーと一緒にご飯を食べたことは、のちにスーが晴風に乗ることの条件を満たす意味もあった。また作戦前に晴風メンバーが食堂であっちゃんの作った肉巻きミルフィーユカツおにぎりを食べていて、それと同じ物をスーも乗船時に食べたことはとても重要な描写だったことがわかる。

 

書き始めてなんなんだが、ここのところに関してはまだ自分の中でもうまく整理、言語化できていない。ただ、この映画が「家族」と「未来」をテーマとして据えていることは間違いないはずだ。

「海の仲間は家族」については以下の記事が非常に良い記事なので、お読みいただくことをおススメする。

 

maisankawaii.hatenablog.com

 

 

はいふり」らしさでハッピー!

最後に以下、「うお~っ!これがはいふりなんだよな~~~!!!」とうれしくなったシーンについて書いていきたい。

 

・タイトルがドーンと出た後、若狭と駿河の会話シーンから始まるところ

いきなりこの二人の会話で始まるのうれしくなっちゃった。広田が画面下からヌッとインしてくるところで「俺たちのはいふりだ!!!!」と絶叫してた。心の中でね。

・青木のえっちな本を読んで顔が崩れるましろ

いや~~~、これなんだよな。明乃も「しろちゃん、これ何してるの?」ではない。

海上無差別格闘(風船チャンバラ)で野間と万里小路の無双を見て「ヒュー」と口笛を吹く宮里

ここだけ西部劇。みやさん強キャラ感出してるし実際強いんだろうけど特に活躍のシーンがなくて不憫だ。

・けっこう長いスーと海賊の英語でのやり取りのシーン

大空直美利根健太朗が英語でやり取りしてるの、うれしい~!「a peace of cake」と「花火を見せてやるんだ(うろ覚え)」で回想終わるやつがゴキゲンすぎる。こういうの好きそうだもんな、はいふり

・ほぼ無傷のスー

さすがはいふり

・ガヤ「ナイスー!」

TVシリーズからすればガヤはかなりまともになっていたと思うが、ましろが図上演習で大和艦長の宮里に勝ったときのガヤはかなり味わい深かったので、ぜひ注目してほしい。

晴風からスーへの発光信号、納沙とヴィルヘルミーナが読唇術でお互い何言ってるかわかるやつ

感動で泣いてしまう。

・クソデカ魚雷を積むシーン、杉本珊瑚の発言で青木のベレー帽が宙でぶるぶる動くやつ

ここ紛うかたなきギャグアニメの演出でめっちゃ好き。

・めちゃくちゃ丁寧に尺取ってやったブルーマーメイドのプラント潜入、制圧シーン

びっくりするくらい丁寧に時間かけてやってたわりに真冬が突入してから真冬のめちゃくちゃな戦闘力だけで全員なぎ倒していったのも含めてめちゃくちゃはいふりだな~!となった。身体能力どうなってるんだ。エレベーターでボコられた海賊たちに手を合わせるブルーマーメイドの子が好き。あと潜入時の劇判はかなり好き。

・海図上の「HIGH SCHOOL FLEET」

フォロイーのツイートで気づき、次の観賞で確認。マジでめちゃくちゃアツいぜ。

 ・もえかの「撃ち↑ーかたはじめ!」

かわいい。

・大和型交互打ち方でテンションが上がり、誰も聞いていないのに早口で説明をする納沙

これこれこれこれ!!!!! 

・とにかく砲弾を叩きこむ大和型

これってもしホワイトドルフィン艦艇に着弾したらどうなるんですか?

・「キツツキ作戦、開始!」

海のガルパンきたな……。

・染色弾で道案内

いや~この意味不明さがはいふりの真骨頂なんだよな。このシーンから加速していくけど、現実では絶対にあり得ないような作戦がポンポン出てきてそれが全部決まってしまうのがはいふりの海戦の楽しいところである。明乃ともえかが信頼しあっているのが抜群に良い。

・「ドンピシャー!!!」

最高。

爆雷を打ち上げてそれを機銃で撃って砲台のところまで飛ばして爆発させるやつ

ましろの「敵は潜水艦ではありません!」という正論のツッコミが良い。むちゃくちゃだけど決まるからむちゃくちゃ気持ちいい。あとこのシーンの劇判も非常に好き。もう一度言うけどこれって砲台無視して真っ直ぐ抜けちゃダメだったんですか?

・クソデカ魚雷を発射するシーン、カウントダウンの残り3秒くらいで「取り舵いっぱーい!」って言うやつ

タイミングが気持ちいい。この後の「衝撃に備えて!」でましろがスーに覆いかぶさるようにしてるのも「お母さんだ!」となって非常に良い。

・ラジコン魚雷

「リンちゃんにも撃て撃て魂が!」と喜ぶ西崎がめちゃくちゃ良い。成功したあとハイタッチして喜ぶ知床、納沙、西崎、立石(たしかこの4人)の作画がかなり崩れて、めちゃくちゃ幼くてかわいい感じになっているのがあまりに印象的。円盤で作画修正が入ったとしてもここはこのまま残してほしい気持ちがある。

ましろがスキッパーで特攻、「High Free Spirits」発動

全ハイスクール・フリーターが人生で一番燃えたシーン。まずもちろん、TVシリーズではスキッパーで無茶をするのは艦長の明乃だった。それをおかしいと否定し続けていたましろが劇場版のこのクライマックスでスキッパーに飛び乗ったところでもう涙腺崩壊である。ましろが明乃の無茶をやったということは、ましろの艦長としての目指す在り方は岬明乃であるということの表れでもある。そして完璧な、本当にパーフェクトに完璧なタイミングでの「High Free Spirits」のイントロで絶叫である。このシーンばかりは劇場であることが残念で、奇声を上げながらぶっ壊れるまで机をバンバン叩かないと気が済まないくらいの興奮であった。どう考えても無茶で、どう考えても死ぬし、いったいどうやって晴風に回収されるつもりだったのか。ありえない、ありえないけどここではいふり魂が流れるならここからの流れはすべて必然、それくらいの力がこのシーンには込められていた。また、これはましろ晴風のみんなを心から信じていたということでもある。晴風、本当に良い船になったんだよな……。

・夕焼けの出航、夜間の戦闘、要塞への突入を経て朝の光に迎えられて脱出

・明乃とましろが抱き合うシーンでそれを見ている黒木の表情

黒木、お前には柳原がいるんだぞ……。

・「Free Turn」がかかってからの各科の集合一枚絵

これ、TVシリーズのOPサビ前でやってたやつと同じノリなんだよな。砲雷科、甲板に寝転がってピースする小笠原マジでかわいい。航海科、勝田のあざといポーズで絶叫。機関科、みんなで同じ方向向いてるのかっこいい。主計科は、……パッと出てこないので次観たときに目に焼き付けたい。

 

 

 

最後に、宗谷ましろについて。まず、ましろTVシリーズでは自分の不運を嘆くばかりで、自分の今の境遇を不運のせいにしていた。正直に言ってそれが自分はあまり好きではなかった。しかし、劇場版の彼女は図上演習でのテアのセリフで言われるように、不運も含めて自分だと飲み込むことで、それを踏まえて自らの求めるものをつかみとるために自分はどうするかという考えを明確に獲得していて、それが本当に良かったし、宗谷ましろというキャラクターがすごく好きになった。

ましろに突き付けられた比叡の艦長という選択肢について、ましろは悩む。スーはましろに問うた。「シロは何しにここに来た?」艦長は、ましろにとっての目標でもあった。出航のとき、ましろはひとりごちる。「決めなければならない」

結果としてましろ晴風に残ることを選んだが、将来的には艦長になるという宣言もした。晴風に残るのは「いろんな経験ができるから」、すなわち艦長となるための経験のためという理由をつけるが、しかしましろ晴風のみんなが好きで信頼しているということは、その前のスキッパーのシーンで伝えてもいる。ストーリー上の落としどころとしてはうまいところ、という感じではあるが、ましろがこの選択に至るまでのこれまでの全て、すなわち幼少時の思い、入学時の失敗、晴風クラスでの衝突、晴風での経験、今回の作戦、それら全てを考えるとやはり、この決断は非常に真摯であったと思う。

 

 

はいふりの劇場版。正直、まさかこんなにも素晴らしい作品になるとは思っていなかった。もちろん粗と言えるものはいくらでも指摘することはできるが、それをはるかに凌駕する良さ、好きポイントがこの映画には詰まっている。

「まさか」でも、これは現実だ。まるでお祭りのような、この劇場版ハイスクール・フリートのある日々を楽しんで、2020年に確かな記憶を残していきたい。そしてわたしは「はいふり」という数奇な運命を辿る「船」の行く末をこれからも見守っていきたい。はいふり1話放送の100年後である2116年4月10日午前0時、みんなで未来と過去が交差する百年目の歌を歌うのが俺の夢なんだ。