ガルラジの文章を書きたいがとりあえず近畿圏出身の自分の「地元への感情」「東京への感情」を書き連ねる、手取川海瑠と玉笹彩美についても少し書く

 

「ガールズ ラジオ デイズ」略してガルラジ。今自分がハマっているコンテンツである。このガルラジというコンテンツについての文章は、インターネットのごく狭い範囲ではあるがすでに多数書かれている。それらはそれぞれの視座から優れた考察を与えてくれるが、言いたいこととしては概ね「このガルラジにリアルタイムで触れるとめちゃくちゃ面白いので一刻も早くアーカイブ聴いて追いついてくれ」ということになる。(勝手にまとめてしまいすみません)

 

livedoor.hatenadiary.com

 

ガルラジについての紹介は上に引用させてもらった記事を参照いただけるとわかりやすい。ごく簡単に説明すると、実在する5つのサービスエリア(愛知県岡崎、静岡県富士川山梨県双葉、石川県徳光、三重県御在所)を拠点とする5つのチーム、13人のキャラクターが”キャラクターとして”放送するラジオ番組を中心としたコンテンツである。ラジオ以外にも公式アプリで見ることのできるキャラクターのつぶやきやアフターレポート、そしてキャラクターを演じる声優さんによるアフタートークなども魅力であり、中でもキャラクターによる「つぶやき」はガルラジというコンテンツを語る上で避けて通ることはできない。1stシーズンは全6回であり、現段階で5チーム中2チームは第5回まで、その他3チームは第4回まで放送が終わっている。

 

 

タイトルの通り本記事ではガルラジについてではなく、個人的な「地元トーク」だったり「都会への憧れの形成」だったりの話をしたいと思っている。で、ガルラジとどう関係するんですかそれは?

それはひとえに、彼女らの舞台が「地方」であるということである。上で書いたように東海圏から3つ、そして山梨、北陸。その配置や選択は絶妙である。

中でも唯一の一人チームであるチーム徳光のキャラクター、手取川海瑠(てどりがわ みるう)は、地元や現状に漠然とした不満を抱えている思春期、中学二年女子である。彼女の田舎観、地元観、そして都会への憧れといったものの質感は、ガルラジを鑑賞する上で多くの人の心にひっかかるなにかがあるのではないかと思う。

 

note.mu

 

そんななかこの記事を読み、「やっぱり地元観とか都会への憧れとかって生まれ育った土地や周りの環境によって違ってて面白いな」と思ったのが本記事を書こうと思ったきっかけである。自分語りになってしまうが、しばしの間お付き合いいただければ幸いである。(上記事の方のほかのガルラジについての文章も読み応え十分なので、そちらもあわせてどうぞ)

 

 

 

  •  自分の地元について

わたしが生まれ育った市は、大阪へも神戸へも電車で30分という立地の、兵庫県の南東に位置するいわゆるベッドタウンである。人口はおよそ22,3万人。大きな商業施設や娯楽施設には乏しいが(駅前にあったROUND1は何年か前に潰れてしまったらしい)、歌劇が有名で、また手塚治虫氏の生誕の地ということも手伝って文化的にはなかなかのものがあると思う。

距離的には大阪も神戸もそれほど変わらないが、方言は大阪弁ではなく神戸弁を話していたし(同じ関西弁でも微妙に違う)、感覚的には神戸はホームグラウンドで大阪は「都会」といったところだと思う(京都はいけ好かない人間の多い土地)。

ちなみに兵庫県といっても広い上に文化的にそれぞれの地方で全然違うので、北の方や西の方、あと中央の方や淡路島の方はどんな感じかよく知らない。これは兵庫県民のおおよそ全員がそうであると思う。兵庫県の北の方は言葉もどちらかというと関西弁より標準語に近いアクセントだったりする。

 

  • 高校生までの環境

そんなところで育ったわたしは、東京への憧れなど微塵も感じることなく幼少期を過ごした。関西人にはよくあることだが、東京を含めた東日本への対抗心のようなものがあり、「なんだかんだ言っても」関西の方が良いのだという思いはずっと持っていた。実際電車で30分ほどで関西における最大級の都会に足を運ぶことができたし、地元においても家から徒歩圏内に本屋さんやゲーム屋さんなんかもあったので(ゲーム屋さんは今はないが)、高校時代までは地元に不満を抱くことも東京に憧れることもなく育った。もっとも、その頃までは家でゲームをしたりマンガを読んだりすること以上の楽しみを知らなかったが。

子どものころの記憶で印象に残っているものが一つある。小学生の自分がコロコロコミックを読んでいてキャラクターのセリフを読み上げたことがあった。すると父親に「東京弁なんかしゃべるな!」と叱られてしまったのだ。今考えてもよくわからないが、当時の自分としては、父親への反発というよりも「東京弁」(関西人はよく標準語のことを東京弁と揶揄する)への抵抗感が強く刻まれたことを覚えている。

小中と市内の公立校に通い、高校で私立に進んだわたしは電車で隣の西宮市まで通ったが、多少交友関係や移動範囲が広がったものの「地元」という枠が大きく広がることはなかった。ちなみに西宮市はガルラジのチーム御在所メンバー、徳ちゃんこと徳若実希の出身地でもある。彼女を演じる松田利冴さんが話すのは大阪弁だが、徳ちゃんが関西弁を話すのであれば神戸弁ということになる。さすがにそこまではやらないと思うが…… また、徳ちゃんは三重の大学に進学しているが、西宮と三重は全然つながりがないので(三重は天気予報のくくりなどでは近畿の中に入ってくるが、実際兵庫と三重は地理的にも文化的にも近いとは言えない)、三重の大学に進学した徳ちゃんはけっこう異端だと思われる。

 

  • 都会(東京)への憧れの芽生え

そんな自分が初めて東京に憧れを持ったのは大学に進学して、オタクコンテンツにどっぷりと浸かるようになってからだった。それまでもマンガやアニメ、インターネットなんかでオタクコンテンツについては軽く触れてはいたものの、一人暮らしを始めて深夜アニメをたくさん見るようになったこと、そして何より大学という混沌の中に放り込まれ、今までよりも圧倒的に幅広い属性を持った人間たちとの交流(それはSNSでの交流も含まれる)を通して知らなかった世界を知ったことで、どうやら東京に行けばさまざまなものにアクセスできるらしいということを知ったのだ。遅い。 

一番わかりやすかったのはオタクイベントである。大学時代それほど頻繁にイベントのために東京に足を運んだわけではないが、それでも東京に住んでさえいれば、これらのイベントにはチケット代だけで(往復夜行バスでも1万円近くする交通費を払わずに)参加できるのかと思うと、 関西にとどまる選択をした高校3年、あるいは浪人のときの自分を呪った。まあ上述したようにそれまでは関西が一番だと思っていたのであの時点で東京の大学に進学するという選択肢は取り得なかったのだが。

というわけで自分は大学に進んで初めて東京へのあこがれを獲得した。自分の場合は「ここではないどこかとしての東京」ではなく、オタクコンテンツの充実した場所としての東京を求めたのであり、その点で手取川とは根本的に考え方が違っている。

そうして就職を期に東京へ出て(今住んでいるのは千葉県だが)きたわけだが、今でも地元は好きである。ただ東京から遠いということが自分にとってのネックだったというだけで、良い街だと思うし住みやすい街だとも思う。自分はこの街の出身であることを今でも好ましく思っているということは付言しておきたい。(ただ大学時代を過ごした京都については、人も気候も文化も規模感も自分には合わず、学生でなくなった以上もう一生住みたくないと思う。また、自分にとって最も合わないと感じるのは無邪気にも「京都良いところだったしまた京都に戻りたいなー」などと口にする元京都の大学生たちなのであるが)

 

ここまで自分語りをした上で、最後にガルラジの中で「東京志向」がある二人のキャラクターについて「地元と東京」という観点から少しだけ考えてみたい。

 

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まずは手取川海瑠。彼女は地元、ひいては現状自体にに漠然とした不満を抱え、中二にして「ここではないどこかとしての東京」という概念に魅せられているといっていいだろう。自分が中二のときは東京への憧れなど持ち合わせていなかったので、この時点で東京に目を向けることができている手取川が個人的に羨ましいと感じてしまう。ただ一方で、地元北陸におびただしいほど存在する8番ラーメンについて、「東京にはないの!?」と驚いたり、北陸が誇る日本海の海鮮について少し誇らしげに話したりと、地元全般を否定しているわけでもない。

ここで、手取川の東京志向が「プッシュ要因」からくるものであることは指摘しておいていいだろう。地元への不満、地元から出たいという思いが先にあって、その不満の行き先として「なんでもある」東京が選ばれたに過ぎない(手取川にこういうことを言うと「そんなんじゃない!」と怒るだろうが)。手取川は第4回までのラジオを通して、「素の自分でラジオをやることの楽しさ」を明確に獲得したわけであるが、この後の展開として、「東京に行って何をしたいのか?」「東京でなければならない理由は何か?(例えば地元のラジオ局や、東京じゃなくても大阪ではいけないのか)」(石川は北陸新幹線が通った今でこそ東京との時間的距離は近くなったが、もともと交通的にも文化的にもどちらかといえば関西寄りである)ということに向き合っていかなければならないのではないかと考える。

 

わたしは「大小さまざまなオタクイベントが頻繁に行われるから」という理由で東京に憧れたのであり、例えば大阪に声優さんが集まり、大阪でのイベントがオタクコンテンツの中心になった世界があったとすれば、地元を離れて東京に出て行く必要はなくなる。なぜならわたしは地元自体に不満があるわけではないからである(ただ、実家暮らしはしたくないと思う)。わたしが東京に憧れたのはいわば「プル要因」からくるものであるからだ。

 

ここで玉笹彩美についても考えておきたい。彼女は3姉妹でチームを組むチーム双葉のキャラクターで、特筆事項としては「19歳、ニート、アイドル志望」である。

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職業:ニート

彼女を「東京志向」として手取川と同じ土俵に立たせることに、少なくない違和感が生じることはわかる。だがしかし彩美は彼女なりに本気でアイドルを志望しているのであり、アイドルになるためには東京進出を考えていることは間違いない。双葉第4回放送でも「東京に行っても花菜を連れて行くからね」という発言をしており、少なくとも山梨でアイドル活動をすることは考えていなさそうである。

では彩美が東京を目指すのはなぜか。言うまでもなくアイドルになりたいからであり、アイドルをやるためには東京しかないからである。つまり玉笹彩美は「プル要因」から東京を目指すのであり、ここが手取川海瑠と玉笹彩美の大きな違いとなる。いや、もちろんキャラからして全然違うわけだけど……(とはいえ手取川がミルミルというお姫様キャラを押し付けられて捨てた一方で彩美は毎回せっせとキャラ付けをやっているあたり、この二人のキャラクターの対称性はあながち的外れでもないのかもしれない)

その上で、彩美は地元に対する不満は特にないものと思われる。自分で「平成最後の山梨出身アイドル」を謳っていることからも、地元愛はむしろかなり強いのだろう。ラジオの中でも地元トークには花を咲かせている。また、山梨が東京に地理的にかなり近いということも、彼女にとっては大きいと考えられる。彩美にとって東京は「地元を捨てて行くところ」ではなく、「地元からそう離れていない自分の夢をかなえるための場所」である。実際、玉笹3姉妹はラジオ第1回放送前に新宿まで買い物に出かけている。しかし逆にいえば、山梨でアイドルができるなら東京にこだわる必要がないとも考えられ、玉笹彩美の物語としては東京に出ずに山梨でご当地アイドルになるというゴールも考えられる。このあたり、彩美の物語も一本道ではないのではないだろうか。ただ個人的には彩美には東京でアイドルデビューしたのち夢破れてそのまま東京で派遣社員をやって、ときどき遊びに来る彩乃と花菜と一緒に酒を飲んでクダを巻いてほしい。*1

 

 

 

以上、自分語りと手取川、玉笹彩美について。というわけで、自分の地元観や東京への憧れは手取川よりもむしろ玉笹彩美に近いことがわかった。みなさんはどちらだろうか?あるいはどっちでもないということも大いにあるだろう。玉笹彩美についての文章を書きたい気持ちがあるが、今回の自分語りと彩美への文章を通して玉笹彩美について書きたいことの3割くらいは書いてしまった気がする。残り7割は、玉笹彩美が好きなんだよな……ということなのだが、そのあたりを綴った「ガルラジ怪文書」についてはまた機会があれば。

 

 

 

2019年はガルラジ!

 

 

*1:玉笹家はお酒が強い家系であることが双葉第4回にて明らかになった