2016年テレビアニメ、話数単位で選ぶマイベストテン(20本ノミネート連続視聴方式) ―第10位~第6位―

 

さて、2016年が暮れてしまう。というわけで、興味はあったがこれまで自分ではやったことのなかった、「話数単位で選ぶ今年のテレビアニメ10本」というやつをやってみようと思う。

しかし、ただ記憶を呼び起こして10本選んでちょちょいと感想めいたことを書いて終わり、ではせっかくの年末、いささか面白みに欠ける。そこで、以下のようなレギュレーションを考えてやってみた。

 

「今年の10本」に選びたい話数を20本選び、これをノミネート作品とする。

同タイトルからは2本までとする。ただしできるだけバラけるのが望ましい。

20本の試聴順をなんらかのランダム方式で決定する。(私はあみだくじを利用した)

試聴順に沿って20本をできるだけ一気に視聴。

改めて見直した感想、そして初見時の記憶などをもとにノミネート20作品の中から上位10本を選ぶ。上位10本については順位をつける。(なお、ノミネート作品の中に同タイトルから2本選んでいた場合、その2タイトルを両方とも選出することは構わないが、できるだけバラけるのが望ましい)

 

このテのものでは10本選出したあとに順位をつけることは一般的でないように思える。しかし、そもそも10本選出している時点で10位と11位以下との間に順位、優劣をつけているのは明確なのであるから、それならばいっそ選出された10本の間に順位をつけてもよかろう、いやむしろせっかく20本見返すのだからとことんまでつけてやるぞという気持ちで順位をつけることに決めた。

まず、選ぶだけでなく見返そうと思ったのは、やはり秋クールのアニメに比べれば冬クールのアニメは記憶もだいぶ薄れ、感想を書くことはおろか自信を持って選出することすらままならないと考えたからである。また20本選んだのはパッと思い返しただけでも「今年の10本」に選びたい作品はゆうに10を超え、記憶のあやふやなまま10本選んでも納得のいくものにはならないだろうという考えのもとである。もちろん20本でも収まりきらないのだが、一気に見返すことを考えれば1日の試聴数としては20本が妥当なところだと思い、20本とした。もちろん時間がなければ15本でもいいし、アニメ視聴体力に自信があれば30本ノミネートしてもいい。

そして試聴順をランダムで決定。こういう主観たっぷりで選ぶようなものは(吹奏楽コンクールなんかを考えるとよいかもしれない)、順番によって左右されるところがどうしてもある。終盤に見たものの方が印象に残りやすかったり、いいものの前後は印象が薄くなったり、などということである。最初に見たものを基準にしたりすることもよくあることだろう。初めは時系列順、逆時系列順、はたまたサブタイトルの五十音順なんかも考えたが、やはりランダムで決定した方が運の要素も絡まっていっそう面白くなるのではないかと考え、このようにした。結果から言えばこれがよかった。試聴順を眺めているだけでなんだかウキウキしてくるし、自分で恣意的に選んでいてはこうはならないだろうという順番になって楽しい。

20本一気見(途中ご飯を食べに外出し、帰ってから数時間寝たので一気見ではないが)はやはり想像していた通り大変楽しかった。2016年を振り返っているなという実感もあった。

 

ちなみに20本のノミネート作品の選び方であるが、私は記憶を頼りにしつつ、自分のTwilogを漁って大雑把に選び、その中から少しずつ選別していった。これを選ぶのも大変ではあったが、「20本にかかるかかからないかの作品が10本に入ることはそんなにないだろう」と考えるとわりあい気持ちは楽に選ぶことができた。それはそれとして見返したい話は20本以外にもたくさんあったわけだが……

 

 

御託が過ぎた。悪い癖である。それでは以下、10位からの発表である。

 

 

 

 

 

 

 

第10位:『競女!!!!!!!!』第9話「ジャングルジムの覇者!!!!」(秋)

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 唯一無二の"尻"作こと『競女!!!!!!!!』より、東西戦第1戦目の回。

元柔道日本代表宮田さやかと彼女の競女挑戦を許そうとしない父との和解を熱いバトルといつもの競女テイストに組み込みながら描いた屈指の名回なのであるが、やはりこの回は井口裕香演じる七瀬奈美が名脇役として一際光っている。

さやかに対し柔道から「逃げた」とこれでもかというほどに何度も劇中で言い放ち、私はあなたと違って一途に競女に向き合ってきたと言う七瀬は、他のスポーツに対して心のどこかで劣等感を覚えているように感じられてならない。「元柔道日本代表」というどこに出しても恥ずかしくない肩書きを持った宮田さやかに対しては、おそらく心のどこかで激しいコンプレックスを感じていたに違いない。競女が柔道から「逃げた」先だと言うことは、無意識のうちに競女が柔道より下であると認めているようなものだ。そしてそんな七瀬に対し「私がここにいるのは、競女が好きだからよ!!!」と言い放つさやかが最っ高にカッコいい。「好きだから」やっぱりこういう言葉には弱い。好きであることが何より大切だ。

またさやかの父も、競女を下にみていた気持ちは同じだろう。おそらく父は競女を品のないスポーツだと、いやそもそもスポーツだとも認めたくなかったかもしれない。そんな父が、娘の頑張る姿を目の当たりにし、会場全体が娘を応援している中にあり、そして最後勝った後に見せた娘の顔を見て、グッと親指を立てるシーンは最高だ。

そしてなによりも、柔道とさやかと競女がつながった最後の「乳首一本背負い」のシーン。「柔道はお尻を使うんだ」と指導する父との回想シーンも挟まって、宮田さやかにしかできない技、宮田さやかにしかできないシーンである。これだけいい文脈を持たせておきながら、あの画を出してくるのは反則だろう。泣き笑いで顔がグチャグチャになってしまう。

そして忘れてはならないのがさやか母である。子どものころのさやかが競女場に行った回想でさやかを連れてきていたのは、誰あろうこの母であった。おそらく母は競女が好きなのだろう。さやかが瀬戸内競女養成所に入るにあたっては母が味方になってくれたんだろうなあと考えるとまた一段といい文脈になる。それはそうとさやかが勝ったときにさやか母が見せた、親指人差し指中指での三本指ピースがめちゃくちゃかわいい。

ただワードと絵面のパワーに圧倒されるだけではもったいない、見事見事な一本であった。

 

 

第9位:『ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション』第12話「境界を超えるRPG」(冬)

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 サブタイトル「境界を超えるRPG」が秀逸な、このアニメの最終話に相応しい回。

PSO2アニメは、ゲーム原作アニメなら当然ゲームの中の世界を舞台にするだろうという先入観をぶち壊し、徹頭徹尾現実世界とゲーム世界の地続き性というものを描いたアニメであったわけだが、上に挙げた屋上のシーンでのリナ会長のセリフはまさしくそのテーマを端的に表すセリフであり、お気に入りのセリフだ。

リナ会長がダークファルスに囚われているシーンでは、まさかの全裸レイプ目触手拘束。あまりに私を狙い撃ちにしている。まあそれはそれとして、イツキがリナ会長を助け出そうとするときの「生徒会長…!先輩……!…………、リナあああああああああああああああああああ!!!!!」の三段活用が最高すぎる。ここもお気に入りのシーンだ。

その間、現実世界でも変わらずに文化祭が賑やかに行われている描写をしっかり入れてくれるのもこのアニメらしさが出ていて本当に良い。イツキたちはこの世界を守るために戦っているんだということを、静かに強く伝えてくれている。まあもちろんリナ会長を助けたいという思いが強いわけではあるが。

後夜祭挨拶でのリナ会長の「エブリバディー、イェーイ!」は言わずもがなだが最高にかわいい。このアニメを見て諏訪彩花さんがグンと好きになった。

最後の卒業式後のシーンは、これまでの話の中でイツキとリナ会長が話をするときに印象的な舞台として登場してきた屋上を別れのシーンに設定するのがニクい。いや、別れのシーンではない。オンラインゲームがあれば、いつでも、どこにいても会うことができるのだということをリナ会長が、そしてアイカが教えてくれる。完全に100点満点の最終話であった。

余談だが、本編後に流れる「君は見てるだけで、満足なのか!?」のCMは、本編の完成度が高すぎたために本当に見てるだけで満足になってしまったことでCMとしての力を失ってしまった稀有な例である。

 

 

第8位:『タイムトラベル少女 ~マリ・ワカと8人の科学者たち~』第3話「反骨のフランクリン」(夏)

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 教育アニメという面を持ちながら、近未来科学SFエンターテインメントとしても高い完成度を見せてくれた本作からこの一本。

本作はマリ、ワカたちの他に、個性豊かな科学者たちもキャラクターとして大きな魅力である。個人的には科学者たちのなかでは4話に登場するボルタが一番好きだったりするのだが、この3話に登場するのはベンジャミン・フランクリンである。

このアニメ、ドアサアニメらしく(?)メインターゲットたる小学校高学年から中学生あたりにとって大切で身近な「勉強」の描写を惜しまない。さすがアニメーション制作が教育事業を中心とするワオ・コーポレーションの系列なだけはあり、その描写はリアルだ。

さてこの回は英語の補習のシーンから始まる。「なぜ勉強なんかしなきゃいけないのか」 これは誰もが一度は思ったことではないだろうか。この補習のシーンで出てくるのが今回の科学者フランクリンの言葉「Well done is better than well said.」である。

補習から帰ったマリはワカと旬兄と共に研究所の地下室を見つけ、過去にタイムスリップする。そのマリが向こうで最初に出会ったのはそう、黒人奴隷のジャンであった。翌日朝から洗濯をするジャンを見てマリは一言「ジャンは学校に行かないの?」ジャンが奴隷であり奴隷は学校に行ったりしないことを聞かされるマリ。この話の最後に現代に戻ったマリは言う。「勉強できるのが普通じゃない時代があったんだ」

こんなものは大人による論理のすり替えでしかないと思うかもしれない。確かにそうだ。「なぜ勉強なんかしなきゃいけないのか」という問いの答えにはなんらなっていない。いやでもしかし、女子中学生たるマリはこの経験を通して素直に勉強してみるかという気持ちになっているのであり、そのこと自体が重要なのではないか。英語、歴史、そして科学。三教科を巧みに組み合わせて「勉強」への向き合い方を考えさせるこの構成は、ため息が漏れるほどに美しい。

また、全編に通ずる点でもあるが、この回で見逃せない点がもう一つある。それが教会の描写だ。

科学の発展を軸に据えたこのアニメでは、教会は事あるごとに科学の「敵」として描かれる。なかでもこの回は特にその色が強い。避雷針設置を認めないばかりか、神の怒りを鎮めて雷を止めるためとして、けが人にも休まず祈ることを強要する神父に対し21世紀人のマリが憤りを露わにするシーンは、屈指の名シーンだと思っている。それは前近代において高い社会的地位にあった「無知蒙昧」な宗教者に対する、科学社会の21世紀生まれ、社会的地位は何もないただの中学生による「啓蒙」の試みのシーンといえる。「タイムトラベル」によってこそ、このクロスした状況が出来上がる。設定を死なせず、活かす。これができるアニメはつよい。

実験のシーンでは「絶対にマネしないでください」との注意テロップ。こういうところで、ああこのアニメはやっぱり低年齢層が見るように作っているアニメなんだよな、と再確認できてよい。低年齢層向けであることが作り手側と視聴側との共通理解としてあるからこそ、わかりやすく、直球な演出を素直に受け止め、素直に称賛できるのだ。

 

 

第7位:『ViVid Strike!』第4話「リンネ・ベルリネッタ」(秋)

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 今年最大の「暴力」アニメ『ViVid Strike!』より最高の「暴力」回を一つ。

対戦相手を病院送りにしても表情一つ変えない、そんなヒールとして描かれてきたリンネの過去回である。

これはもう見たときの、やるせなさと爽快感と喪失感と高揚感のグチャグチャに入り混じったあの感情が恐ろしいほど魅力的、そう感じてしまった。あの、普段ならばどうやっても倫理観が邪魔して気持ちよくは思えない下駄箱前での暴力シーンを描くにあたり、その倫理観を取っ払うためにただただ目を背けたくなるようないじめのシーンを描いた。そうしたことで最後の暴力シーンに倫理観ストッパーを働かせなくさせ、あの高揚感とも爽快感とも言いたくなるようなドス黒い感情を湧き出させることに成功してしまった。

最後のシーンはSEもいい仕事をしている。明らかにヤバい音、美少女アニメには似つかわしくないあの音を惜しげもなく聞かせてくる。しかもそれは、誰あろう孤児院時代あんなに無垢な笑顔を見せていたリンネ・ベルリネッタその子によって出された音であるのだ。

また、最後のシーンで下駄箱に蹴りつけるところで右手で腕を折った子を持って引きずっているのが本当に最高。さらにその子の顔を迷いなく踏みつけるところは、あのトイレでスマホが踏まれたシーンを思えば納得の一撃。こんな風に、絶対に許されるはずのない暴力に「納得感」を与え、あまつさえ上記のような「爽快感」「高揚感」を与えてしまったところが、この回のヤバいところなのである。

 

 

第6位:『アンジュ・ヴィエルジュ』第9話「誰よりも速く」(夏)

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「それぞれが呼び合って目覚め出す……」『アンジュ・ヴィエルジュ』から、白の世界 -システムホワイトエグマ- の決着回。 

白の世界は数式の世界。というわけで(?)この回では作品中でも屈指のパワーワードがガンガン登場してくる。これが一つ大きな魅力である。

「無限大の半分の距離」「無限大の距離でも、速度が無限大になれば約分されて到達できる(!!!)」「よって無限に加速が可能」「重力スリップストリーム!?」

こんなことを大真面目に語られてしまう。特に「速度が無限大になれば約分されて到達できる」は最高。そんなの聞いたことないけど、妙な説得力があるのがこのアニメのすごいところだ。

他にこのアニメらしい愛おしさが出ているところは、ステラが発進するときのなんだかショボいF1のスタート信号機のようなディスプレイ、まさにF1そのもののエンジン音、そしてなぜか荒いドットで描かれるハートとワクチンだ。なんでああなったのかわからないが、抜群にこのアニメらしさが出ているし、抜群に面白い。

以上のことはそれとして、やはり紗夜がステラをビンタするシーンは何度見ても泣いてしまう。寿美菜子さんの演技、そして涙で崩れた紗夜の顔の作画が素晴らしい。道具だと思ってたら腹を立てたりなんかしない。そう言う紗夜の顔は、紗夜の声は、本当に悲しそうなのだ。

……なんか足りないなーと思いながらEDへ。Cパートは待ってましたいつものアレ。裸エプロンで爆発オチ(ハート雲)には脱帽しかない。

 

  

このまま第1位まで行きたいところだったが、調子良く書いていたらあまりに字数が多くなりそうなので、第6位まででいったん切ることにして、第5位から第1位は後編として分けることにする。少々お待ちいただきたい。

 

 

2016年12月31日19時47分、後半書けました

 

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