帰宅部活動記録第7話 ―通称しりとり回― の魅力

 

現在、『帰宅部活動記録』7話~12話がニコニコチャンネルで無料配信中です。先週の6話までの無料配信も好評だったようで、6話の再生数は5万を超え、3話はニコニコ動画のトップページにオススメとして登場していたこともあり、8万を超える再生数となりました。

4話以降の再生数はほぼ変わらずであり、このことは「4話まで見た人はみなこの作品にハマった」ことを意味していると言えます。これは大変うれしいことです。

 

さて、後半の無料配信が始まったということで(もうすでに数日経ってしまいましたが)、私が最も好きな第7話の魅力について少し書いてみようと思います。

 

この7話、帰宅部活動記録がお好きなみなさまはご存じでしょうが、ファンの間でも人気の高いエピソードとなっています。シリーズ構成の雑破業氏も、BDの特典のスタッフインタビューの中で「しりとり回は原作でも人気の高いエピソード」と語っており、中盤のヤマとしてしりとり回は7話に配置されたようです。

 

ちなみにネタバレを多分に含んでいるので(放映終了して2年以上が経っていてネタバレも何もという感じもありますが)、できれば未視聴の方は一度7話を見てからこれを読んでいただければと思います。

 

内容に関して、まずはなんといっても「原作でも人気の高いエピソード」たる、記録の二十一「封じられた言葉!!」と記録の二十二「激闘の果て!!」について言及せねばなりません。

 

思いがけず部室に二人きりになった桜先輩と夏希は「タブーカードしりとり」をすることになります。

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「タブーカード」ルールが加わったものの、たかがしりとり…と思っていた夏希(と視聴者)とは裏腹に、なにやら真剣な雰囲気の画面と桜先輩。そしてしりとりが始まると…

 

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突然の「初手崩し」とやたらとカッコいい実況(CV:島﨑信長)に一気に引きこまれます。

この、「たかがしりとりでしょ?」からの「そうだった…これは『帰宅部活動記録』だった…!」という流れがまず素晴らしい。

さらに出てくるしりとりワード「る責め」

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「初手崩し」のときの「しりとりは[ぱ]から」という格言や「初手崩し」この「る責め」、後に出る「対抗手段 -カウンターワード-」など、子どものころにしりとりをしていた人(つまりすべての人)ならみな一度は考えたであろうようなことを、一つ一つ「用語」にして出していくところもこの回のおもしろいところの一つであると思います。

 

そうして始まった「タブーカードしりとり」、続いては二人の女子高生離れした語彙力に脱帽です。おそらく事前に考えていたであろう桜先輩はまだしも、突然勝負をしかけられてここまで「る」で始まる単語を出し続けられる夏希はすごい。

ただ二人が単語を言い合うだけの退屈になりそうな画面を、なんとか工夫して単調にならないようにしているのもポイントです。

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夏希のID、アホ毛って……

 

「カウンター」を仕掛けようとするも「ルール」を封じられていることに気付く夏希、このときの夏希の「るあ…るい…るう…るえ… 頭の中で辞書をめくれ!!!」というセリフは、自分もしりとりでつまったときによくやっていたことそのままであったので、初見時(まあ今でもですが)めちゃくちゃ笑ってしまいました。

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そしてたどり着く「ルール」以外の「対抗手段 -カウンターワード-」、「ルーブル」ですが、実は……

 

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ばっちりホワイトボードに書かれています。夏希ー!右!右!

誰が書いたんだろう…

 

CM(2分の帰宅部)をはさみBパート。終始圧倒していた桜先輩の顔がくもり始め、逆に「う責め」を始めた夏希は「恐竜」「牛乳」と力強く返していきます。完全にAパートとは攻守逆転といった感じが気持ちいい。

 

そしてついに決着のとき。Aパートで、夏希はタブーカードに書かれている言葉が「る」で始まる単語であることを感じたとき「さっきは安易に答えてしまったけれど、なるべくマイナーな単語を選択した方がいいかも…」と考えていました。それとまったく同じに、桜先輩も「う責め」によりタブーカードに書かれている言葉が「う」で始まる単語であることを感じます。

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そして同じように「なるべくマイナーな単語を選択した方がいいか」と考える桜先輩。Aパートの夏希と鏡のようになっていますが、これが勝負を決します。

「マイナーな単語」を選んだ結果夏希のタブーカード「うみぼうず」で返してしまった桜先輩。うーんこれぞ勝負のアヤといった感じ。

 

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最後は桜先輩の髪留めをつけ(させられ)たかわいい夏希でしっかりオチもつきます。

 

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…とまあここまでは「しりとり回」のわかりやすい、おもしろいところです。

 

 

アニメ『帰宅部活動記録』の作品としての魅力のうちの一つは、「ネタ振りが画面の至るところに散りばめられ、それがすぐにあるいは回をまたいで回収されることによって得られるカタルシス」だと思っています。例えば先ほどの「ルーブル」もそうでした。

 

他にも、唐突なようにも思える「うみぼうず」ですが、しっかりネタ振りがなされています。

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これは第4話 記録の十四「テコ入れの原理」冒頭です。一瞬ですが海坊主が映っています。この一瞬のネタ振りを2話空けてから大一番のオチとして回収…これがこのアニメの醍醐味なんです!

 

そして、7話のアバンも、ただのサービスカット…

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というだけでなく、しっかりネタ振りになっています。

 

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そう、7月4日は…安藤夏希ちゃんの誕生日なんです!

原作の作中では誕生日がいつかは言及されているので、原作を読んだ人ならこのシーンで今回は何をやるかわかったはず…果たして、この第7話の記録の二十三「サプライズ・パーティー」で夏希の誕生日をお祝いしています。

 

そしてこの「サプライズ・パーティー」、これも含めて、「しりとり回」なんです!

というのも、次のキャプ画を見てください。

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おわかりいただけますでしょうか、うみぼうずの「ず」からのしりとりになっているのです。そしていろはの「は」に続いて…

 

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「ハッピーバースデイ夏希」!さらにさらに…

 

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Cパートでの、シリトリル(←おそらくしりとり+デュエル)を戦った2人以外の3人でのしりとりシーン。「ハッピーバースデイ夏希」の「き」から始まり、「きつね」「ねこ」「こおり」「りぼん」

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これが「しりとり回」「しりとり回」たる所以なのです。

エピソードをまたがって、そしてEDをはさんでもひたすらにひとつのテーマ「しりとり」をやりつづける美しい回。これが僕が『帰宅部活動記録』の一番好きな回として第7話、通称「しりとり回」を挙げる理由です。

 

この回で行われたしりとりをまとめると、

「しりとり」→「リスザル」「ルーレット」「トンネル」「ルーズソックス」「ストール」「ルイベ」「ベール」「ルーチンワーク」「クロール」「類義語」「ゴール」ルクセンブルク「クリアファイル」「ルアー」「アーガイル」「ルイ国王」「ウール」「ルーキー」「キーホール」ルーマニア「アルミホイル」ルワンダダートトライアル「ルージュ」ジュブナイル「ルーペ」「ペアレンタルコントロール」ルーズベルト大統領」ウェディングベル」「流刑」イーゼル「累乗」「海蛍」ルネサンス「スマイル」「ループタイ」「イニシャル」ルーブルルノワールルイジアナ州」「ウミガメ」「メイフラワー号」宇治金時「恐竜」「うさぎ」「牛乳」「うるう年」「書道」「うみぼうず」「図工」「打ち上げ花火」ビフテキ「キウイ」「いちごケーキ」「期待」「いろは」「ハッピーバースデイ夏希」「きつね」「ねこ」「こおり」「リボン」

 

となります。

 

余談ですが、7話のこのアイキャッチが僕は大好きです。

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 ところで、この回に関してはもう一つ言っておきたいことがあります。

ここまでの、全パートにわたってしりとりが繰り広げられている、ということはみなさんも気付いていたことではあると思います。

僕がこの回を大変評価しているのにはもう一つあって、それは原作からのエピソードのチョイスと改変ということについてです。

 

もともと「封じられた言葉!!」「激闘の果て!!」は原作では第15話16話のエピソードであり、「サプライズ・パーティー」は第37話のエピソードです。つまり、これらは元々特に関係のないエピソードなのです。そして原作ではもちろん「サプライズ・パーティー」の中でしりとりは繰り広げられておらず、大筋は同じですが「図工」や「ビフテキ」などの言葉は原作では一切登場していません。

さらに言えば、アバンとCパートは完全にアニメオリジナルになっています。

このように、「封じられた言葉!!」「激闘の果て!!」という原作の人気エピソードをやる、というだけでなく、そこでのネタを最大限膨らませて、原作では直接関係のなかったエピソードをもってきて少し改変を加え、またアバンとCパートにはアニメオリジナルのパートを加えることで、帰宅部活動記録第7話」として一つの完成された回に仕上げたこと、これもまた、この回の本当に素晴らしい点であると感じています。

 

おそらく「封じられた言葉!!」と「激闘の果て!!」をやるだけでもその回は神回などと言われたでしょう。それら自体がおもしろいのですから。

しかし、それだけではなく、30分の一本のアニメとしての完成度を高めるこの構成は本当にお見事と言えるものです。もちろん、このようにただ原作の順番通りにするのではなく、30分の、そして1クール12話のアニメとしてどうやったら一番おもしろくなるか、ということを考えながらの構成というのはこのアニメ全編にわたってなされており、それらはすべて見事な仕事です。

 

このあり方は、基本一話完結のギャグマンガを30分×12話のテレビアニメ化するにあたって理想的なものだと思います。そしてそれをサボることなく丁寧に、本気でやり遂げた『帰宅部活動記録』こそは、空前絶後のギャグアニメとして今後も私の心の中に、そしてみなさんの心の中に、さらには深夜アニメ史に残ると信じています。

 

 

最後はかなり信者チックな締め方になってしまいましたが、このアニメは本当におもしろいということが、一人でも多くの人に伝わればいいなあと思います。

そして、今の無料配信というまたとない機会に、より多くの、一人でも多くの人にこのアニメを見てもらい、そして一人でも多くの人がこのアニメを好きになってくれたら本当の本当にうれしい、そう心の底から思っています。

 

 

 

そしてあなたもあるときふとこの作品を思い出して、「ぬるま湯のようなしりとり」ではなく、「相手を潰すしりとり」をやってみる日が来たりするかもしれません…