ガールズ ラジオ デイズ 2ndシーズン決定に寄せて

オタクの人生には、ときどき全身全霊をかけて楽しむことができるコンテンツが現れる。
それはいつ、どこで現れるかわからない。出会いは必ずしもドラマチックではなく、そもそも出会わないまま人生とコンテンツが過ぎ去っていくことだってある。

でも、それでも、それはたしかにある。そして我々は、それを知っている。



私にとってそれはアイドルコネクトだ。そしてガールズ ラジオ デイズもまたそうであることに、今回のニコニコ超会議を通して気付いた。





2019年4月27日。いわゆる大型連休、それも少し特別な大型連休の初日。「平成最後」も大詰めとなったこの日、平成最後のニコニコ超会議が開幕した。

私はニコニコ超会議に足を運んだのは今回が初めてである。というよりもまさか、自分がニコ超に足を運ぶことになるとは思っていなかった。もちろん目当てはガルラジのブースとガルラジステージである。
会場は幕張メッセ。私の家からは比較的近く、8時過ぎに家を出て9時ごろには待機列に並んでいた。周りを見ると、やはり若い人が目立ったように思う。コスプレした人が列に混じっていたり、壁に貼ってあるブース紹介のポスターが手作り感にあふれていたり、流れる雰囲気は思っていたより苦手ではなかった。30ページほど読み残していた小説を読みながら開場を待ち、ちょうど読み終えたあたりで会場入りすることができた。

まずは目当てのガルラジステージ観覧整理券だ。整理券がなくなることはないだろうと思いながらも少し不安だったが、いってみると列もできておらず、ひょいと渡された。ついでにガルラジステージの前にあるぼく勉ステージの整理券もとった。エロマンガ先生の整理券はすでに配布終了になっていた。


そしてガルラジのブースへ。キャラ13人のパネルがある。グッズが展示されている。物販列に並び、ガルラジのグッズのところに購入個数を書く。並んでいるときに不意にガルラジのテーマ曲が近くのスピーカーから流れた。どうやらブース中央にあるスクリーンにPVが流れているらしい。目頭が熱くなった。ガルラジは確かに存在していた。


私はクリアファイル2種類を1つずつ、そして缶バッジとアクリルキーホルダーを5つずつ購入した。自分はとにかくチーム双葉を揃えたいと思っていたが、最初に引いた時点で花菜が2つ、彩美を1つ引き、最終的には交換で玉笹三姉妹を揃えることができた。缶バッジの方は彩美の缶バッジの入手が叶わなかったものの、花菜と彩乃は2つずつ入手した。

ガルラジのグッズが販売されたことで、会場にわずかな人数ではあるが(私も含め)ガルラジグッズをカバンにつけたりしているオタクが姿を現わすことになった。それが自分はすごくうれしくて、ニコ超というカオス空間の中に、たしかに自分と同じコンテンツを愛する人間がいることを感じられた。
また、イベントが始まるまでの時間に何度もガルラジのパネルのところを歩いてみたが、けっこうガルラジを知らないであろう人が足を止めて写真を撮っているのを目にした。かわいいねーなどと言いながら、もしかするとそのままその写真はメモリに眠るままなのかもしれないけれど、ガルラジが閉じたものではなく、今よりももっと多くの人に聴いてもらえる未来を思ったりした。






元々この日は予定が入っていた。リステの対バンツアー、その千秋楽が新宿で昼夜行われ、そちらに行くつもりだったのである。しかしこの日ニコ超にてガルラジのステージイベントがあることが発表され、さらにそこで重大発表も……?というではないか。リステの昼公演は諦め、夜公演も大幅な遅刻覚悟で自分はガルラジステージを何があっても見届けることを選んだ。自分の好きなコンテンツがやるイベントは、いつそれが最後となるかもしれない。この選択それ自体によって、ガルラジが自分にとってどれだけ全身全霊をかけて楽しみたいものなのかということに気付いた。






16時半、朝からそれなりの時間を過ごし、ガルラジのステージはついに始まった。

登壇者は二兎春花役本渡楓さん、玉笹彩美役柴田芽衣さん、玉笹彩乃役篠原侑さん、玉笹花菜役赤尾ひかるさんの4人。主人公の春花とたまささsisters揃い踏みという布陣だ。

まずは自己紹介とガルラジというコンテンツの紹介、そして各チームの紹介があった。
こういった紹介が演者からなされるのを直接現地で聞くというのはなんだか新鮮だった。このステージを見ている人たちの中にはもちろんガルラジを知っている人が多数ではあるけれども、ガルラジを知らないという人もたしかにいた。そういった人たちが少しでも興味を持ってくれたらうれしいと思いながら聞いていた。


こういったイベントごとについて、自分のようなオタクはどうしても「追ってきたファンへのご褒美」と考えてしまうフシがある。だが、特に今回のようないろんな人間が集まる中での一つのステージイベントであれば、コンテンツの宣伝、そして新規ファンの獲得が大きな目的の一つとなる。本渡さんはステージの序盤で会場の人たちの拍手とかの盛り上がり、そしてニコ生のコメントが大事だと言っていた。実際偉い人はそういうところを見ているらしい。自分は精一杯感情を表に出して盛り上がった。振り返ってみれば、終始めちゃくちゃにニヤケ顔が顔に張り付いていたように思う。それほどまでに、自分はあの場にいられたこと、あの場があったことがうれしかった。


そうこうしているうちにチーム紹介も終わると、まさかのアレが始まった。ガルラジ公開録音(?)である。考えてみればこの場でそういうことをするのは当然予想できたはずだが、どうも誰もそれを口にしていなかった気がする。ステージ開始前、オタクたちは申し合わせたかのように口々に「緊張してきた……」とつぶやいていたが、実際この公開録音のときが一番緊張したのは間違いない。

内容としてはチーム双葉のところに春花が一緒になって、4人でわちゃわちゃ10分ほどしゃべるというもの。「へいせい」の四文字でガルラジの魅力を伝えるあいうえお作文をつくるというコーナーもあった。
当然ながら、キャラとしてラジオをする。そしてそれをステージ上という場で見られながらするのである。ラジオという「素」に近い状態でやるものに「演技」を入れるということの特殊な難しさは演者の方々も言っていた。
ただ、始まってみるとそこにはたしかに二兎春花と玉笹三姉妹がいた。ステージ上には4人の演者、そしてふと横のモニターを見ると(ニコ生の画面と同じもの)そこにはラジオをする4人のキャラのイラスト。そのイラストを見ていると、間違いなく玉笹彩美が自分の目の前にいるんだと感じられた。玉笹彩美が二兎春花に絡んでいた。先ほどまでの柴田芽衣さんがんばれという気持ちから、玉笹彩美ーっ!という気持ちに変わっていた。これは間違いなく、すごい体験であった。余談だが、へいせいの「い」で4人が声を揃えて「いー!」というときに花菜だけ少しズレていたのに対し、篠原さんが赤尾さんの方をじーっと見つめていたのが良かった。


そして、ステージはエンディングを迎える。会場からは「えぇーっ!」の声。ステージ上では柴田さんが「私もえぇーっ!て言いたい」と言い、もう一度みんなで一緒に「えぇーっ!」

たしか本渡さんが言っていた。ガルラジはNEXCO中日本にとってもドワンゴにとっても新しい挑戦で、相当に試行錯誤しながら考えて作り上げてきた。今日会場にはいろんなブースがあるなかで、こういう場に来てくれている人たちは朝から整理券を取るために並んだりしてくれて、あるいは立ち見の人でも1時間近くずっと立ちっぱなしでも見てくれて、そしてニコ生の人もいっぱいコメントくれたりして。ガルラジがこれだけの人に届いているんだって知れたのがうれしい、と。



ラジオとは孤独である。基本的にはパーソナリティーとリスナーとの一対一だ。パーソナリティーはどんな人が聴いているかわからないし、リスナーも自分以外にどれだけの人が聴いているかわからない。だからこそお便りという存在はラジオにとって重要で、パーソナリティーはリスナーの存在を確かに感じられるし、リスナーも自分以外のリスナーの存在を知ることができる。先日行ったフレッシュたかまつ(高田憂希さんと松田颯水さんによるラジオ番組)のイベントでも、ラジオの収録ブースにはパーソナリティーの二人と数人のスタッフしかいないからときどき不安になる、だからこういうイベントのとき、こんなにも多くの人に聴いてもらっているんだということがわかってうれしいんだというコメントがあった。こういう思いは、おそらく全てのラジオの制作側が共通して持っているものなのだろう。自分も先月からラジオをやってみて(ツイッターの固定ツイート参照)、本当に聴いてもらえているのか不安な気持ちはたしかにあるし、やはりやっていく以上は聴いてほしいし反応もほしい。オタクと会ったときに、たまにラジオ聴いてますよと言われると飛び上がるほどうれしくなるのだ。だから本渡さんのコメントはよくわかったし、感じ入るものがあった。


最後の発表の時間。ステージ横の画面にPVが流れる。何度も何度も聴いたガルラジのテーマ曲。キャラ紹介に1stシーズンのみんなの自己紹介が乗る。そして明らかにどこかで見たことのあるコメントが画面を流れる。不思議な感覚だった。そして「1stシーズン、応援ありがとうございました」、続いて7月から2ndシーズン開始の文字。うれしかった。ただうれしかった。本当にうれしかった。

この場で2ndシーズンが発表されるであろうことは、おそらくあの場にいたほとんど全員がわかっていただろう。自分もそれは当然予想していた。だからこの発表それ自体は驚きというよりも安堵である。しかし、それは単なる安堵ではなく、感動だった。





先に言っておくと、このPVで使われているコメントはおそらく全て、ツイッター上のつぶやきをひろってきたものである。それゆえ、普通のコメントからオタク120%みたいなコメントまで自重せず使われている。ちなみに私が特にめちゃくちゃ好きなのは、
「年魚市すずアホほど好き 天才はこいつなんだよな」
「俺は手取川海瑠に"一生"ついていくぜ」
「チーム御在所わかってきた」

の3つである。
公式のPVにこんなオタクしか書けないような文章がバンバン出てくる衝撃は、そうそう味わえるものではない。


ただ、である。単にオタクの発言をPVに取り入れるということが危ういという感覚もある。それも、""こんな""コメントをひろって果たして大丈夫なのか、と。

しかし私は、これこそがガルラジとしての正解だと思った。なぜならば、上で述べたようにラジオにとってお便りは重要なものだからだ。つまりどういうことかといえば、ラジオ内で読まれたお便りのうち、少なくない数のお便りが物語の都合上、あるいは収録と放送との時間のズレのために、台本によって用意されたお便りだったガルラジにとって、ファンによる(ここでは「オタク」ではなく「ファン」と呼ばせてほしい)ツイッター上でのコメントこそが、制作側にとってもリスナー側にとっても「ガルラジリスナー」の存在を確実に感じられるものだったからなのだ。

ガルラジがマイク一つを通すだけであれだけ見事に現実と虚構の境界線が曖昧になったように、われわれもPCあるいはスマホの画面を通すだけで、簡単に現実から虚構へと存在を委ねることができる。その交わりこそがファンによるコメントであり、2ndシーズン決定のPVなのだと思う。我々は手取川海瑠に会うことはできないけれど、手取川海瑠の声を聴くことはできるし、白山市に赴いて手取川海瑠の質感を得ることができる。そうであるならば、手取川海瑠が番組に寄せられたお便りはもちろんのこと、ツイッターでの我々のコメントを読むことができないと考えるのは早計にすぎるのではないだろうか。我々にとって「音」あるいは「声」が現実と虚構をつなぐものであるならば、ガルラジ世界のみんなにとって「文字」あるいは「言葉」こそが虚構と現実をつなぐものなのではないか、そんな風に考えるのである。




最後の挨拶が終わり、ニコ生が終了した後、ステージ上には4人がまだ残っていた。そして本渡さんがこのステージに直接足を運んでくれた人にあらためてお礼が言いたいと言ってくれた。さらに本渡さんはおもむろに客席の向こう、道行く人々に向かって「ガルラジをよろしくお願いしまーす!」と叫んでいた。なるほど、本渡楓さん。初めて生で拝見したが、本当にすごい人だと思うしかなかった。そんな彼女がガルラジに、そしてアイコネにもいることに、自分は何かを感じずにはいられないのである。


そういえばPVに対して本渡さんが「こうやってみなさんのコメントを組み込むことができてよかった」というようなことをコメントしていた。このとき、自分たちが毎日毎日ガルラジについて騒ぎ倒していたことについて、ようやく自分の中であれでよかったのかもしれないという気持ちになることができた。もちろん、ああやって騒ぎ倒すことはとても楽しく、それ自体を否定する気持ちは元からないが、今回のPVと本渡さんのコメントによって、それが肯定されたように感じられて、気持ちが少し軽くなったように思えたのだ。
内容はともあれ、自分たちを含むガルラジリスナーたちが騒いでいなければガルラジに2ndシーズンは訪れなかったかもしれない。人の想いの力は意外と侮れないな、そんな風に感じることが最近は増えた。





「平成」も「令和」もなく、ガルラジが背負うのは「2019年」である。平成は明日で最後だが、2019年はまだ1/3も終わっていない。当然ガルラジも、2019年を通してもっと盛り上がっていくことだろう。


私は、コンテンツにとって「現在の享楽」「未来の展望」そして「過去の肯定」の3つが重要なものだと考えていたりする。
あの2ndシーズンPVには、「未来の展望」と「過去の肯定」があった。そして「現在の享楽」は今後のつぶやき再開、そして7月からのラジオ放送で間違いなく得ることができる。ガルラジはまだまだもっと多くの人に聴いてもらえると思うし、そうなってほしい。2ndシーズンも決定してこれからどんどん勢いを増していくガルラジを追うなら今なんだよな。